文章は“AIと共に”執筆する時代に――「Claude 4」を活用することで変わりつつある執筆術

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2025年07月22日 17:40  ITmedia PC USER

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Claude 4を使って何が変わった?(画像は無償版)

 たくさんのアイデアが浮かび、ありとあらゆる“形”を試してみたいのに、文章出力の効率が悪すぎてトライ&エラーがやりにくい――長文を書く仕事をしている人なら、誰もが感じるはずのジレンマだ。結局のところ、「質を追求する」か「効率的に文章を量産する」の二択を迫られることが多い。


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 筆者は「生成AIを活用すればもっと効率的に、しかし質は落とさずに文章を書ける」と期待して試行を繰り返してきた。しかし、その結果に何となく納得できず、出来上がった文章に違和感を覚えて、結局は自ら書き直すということを何度も繰り返してきた。


 しかし先般、Anthropicの生成AI「Claude 4」と出会い、ついにAIと“共に執筆する”ための道筋を見つけたかもしれない。Claude 4による文章生成は、AIを単なる「情報整理の時短ツール」から「創造的パートナー」に変えたといえる。


 この記事では、筆者がどのようにClaude 4を活用して成果を上げているかを紹介した上で、いまだ残る課題について記していきたい。


●使って感じたClaude 4の「3つの進化」


 Claude 4を使ってまず驚いたのは、コード生成能力の飛躍的向上だ。


 筆者はコードを書かなくなって、何十年も経過している。そのこともあって、前世代の「Claude 3.7 Sonnet」では、生成されたコードをきちんと動くものにするまで一苦労だったし、それをモディファイ(修正)するのも難しかった。


 しかし、Claude 4では最初から実際に動作するコードを生成し、Web上でシミュレーションしてくれる。その上、指示に対して“じっくりと考えさせる”ことで、推論しながら必要な機能(コード)を補完し、エラーハンドリングまで考慮して「使える」コードを生成するようになった。モディファイの指示も的確に反映可能だ。


 本格的な開発(プログラミング)で使うには、より多くのトークンを利用できる有料プランを契約しないといけないだろう。Claude 4の有料プランは米ドル建てで、個人向けのProプランが月額17ドル(年間契約)、Maxプランが月額100ドルから(月単位契約)となるが、ヘビーに使う人ならMaxプランを契約しても損はないと思えるほどに、コード生成能力は向上している。


 しかし、筆者がClaude 4の進化でより優れていると感じたのは「生成文章の質」と、ニュアンスなどの「文章の調整を指示した際の感度の良さ」だ。単に情報をまとめるだけでなく、深い洞察や新たな視点も提示してくれる。


 生成AIによる洞察や視点の提示というと、全く無関係な情報を結び付けて、まるで事実のように語る「ハルシネーション」を想起する人もいるかもしれないが、Claude 4のそれはそういうものとは異なる。あくまでも“事実”を出発点にした思考の旅の方向性を示してくれる。まるで優秀な編集者と議論し、記事の内容を煮詰めているような感覚だ。


 特に、久しぶりに刷新された「Opus 4モデル」を使うと、時に筆者自身が気付かなかった論点に言及してくることさえある。


 そして最も印象的なのが、会話を重ねるごとに専門性が高まっていく適応能力だ。同じスレッド内での対話を全てコンテキストとして記憶し、まるで専門の研究者のように振る舞い始める。


 これは単なる学習ではなく、Claude 4がユーザーとの対話を通じて得られた情報やユーザーの応答を“背景”として次々に取り込んでいくことで起きる現象だ。日に日に“成長”していく様は、見ていて楽しかったりする。


●任せ切れない点はあるが、相談相手には十分


 Claude 4はとても優秀だが、“人間の感情”を理解しているわけではない。そのため、生成する文章には一定の違和感は残る。端的にいうと、生成された文章に「魂」がないのだ。「魂」はちょっと言い過ぎかもしれないが、「より確からしい単語の羅列」をしているだけなので、当たらずとも遠からずといったところだろう。


 出てくる文章は、事実関係を明確にしてくれる上に、構成も論理的で文章も流暢だ。しかし、何かが足りない。それは「書き手の意図」あるいは「読者に何を伝えたいかという意思の欠如」だろう。


 実用上の話をすると、トークンの制限という壁もある。加えて、契約プランごとにセッション(1セッション=5時間)の処理上限量も決まっており、そのため長時間の対話を続けると制限に引っかかりやすくなる。


 筆者は年間契約のProプランを使っているが、それでも深い議論をしていると上限量に引っかかってしまい「また5時間待ちか……」となることがある。月額100ドルからのMaxプランを契約した場合でも、制限は緩和されるだけでゼロにはならない。


 Claude 4の出来の良さに対して、GoogleやOpenAIなど競合他社も黙ってはいない。「Google I/O 2025」での発表された「Gemini」のアップデートは印象的だったし、Claude 4が優位性をどこまで保てるかは分からない。


 しかし、Claudeを「3」の時代から使っている筆者としては、AnthropicがClaudeで目指しているのはより自然な対話を生み出す文章力と、明確に「人間と共に思考するAI」だと思っている。コンテンツ生成ではなく、人間の創造性を増幅させるパートナーとしてのAIだ。


●筆者のClaude 4の使い方を紹介


 では、ここからは筆者がどのようにClaude 4を使っているのか、現時点における実例を交えて紹介しよう。


Googleの「NotebookLM」で情報の収集/整理を実施


 まず、情報収集と整理にはGoogleの「NotebookLM」を使っている。取材で録音した音声はもちろん、配布された資料、関連するリンク(URL)など、あらゆる情報源を放り込み、相関関係を含めて整理してもらう用途に使っている。「Google Workspace」を契約している場合は、追加の「Pro機能」を利用可能だ。


 実は、NotebookLMと似た機能はClaude 4にも存在する。事前に資料を与えて、その情報を元に会話できる「Project機能」がそれなのだが、記憶できる資料の容量が少ないという問題がある。NotebookLMなら、200MBまでの資料を最大300個(無料版は50個まで)登録でき、YouTube動画へのリンクを音声データとして扱うことも可能だ。


 NotebookLMは与えた資料の整理はする一方で、ネット上の情報を検索しないようになっている。加えて、基本的には事前学習した情報への“結び付け”も希薄だ。仮に事前学習した知識を解答に盛り込む場合も、その根拠や参照先について言及してくれる。つまり、ハルシネーションが起こりづらいのだ。


 こうした特徴は、取材成果や取材先から得た資料、インタビューなどをまとめる際にとても有益だ。ゆえに、まず第一段階でNotebookLMを使って情報を整理するようにしている。


 実際の事例として、2025年初頭にデジタル庁が実施した記者会見での音声や配布資料を基に、「マイナンバーカード」関連の情報を整理して出力してもらう。資料のPDFファイル(10個)あらかじめアップロードした上で、「デジタル庁はマイナンバーカードをk塩にどのようなサービスを展開していくのか?」と指示を行った。


 結果が下の画像で、情報を整理したレポートした文書としては分かりやすい。しかし、さすがにそのままでは記事にはできない。


Claude 4で文章を整理


 そこで、NotebookLMにまとめてもらった「レポート」をもとに、Claude 4を使って更なる事前処理を行ってみる。今回はプロンプトの前方に記事のコンセプト(構成)を指示した文章を連ねて、その後にNotebookLMが出力した文章をペーストしている。記事のコンセプトは以下の通りだ。


#記事のコンセプト30代以上のテクノロジーに興味のある男性女性。両方に知的好奇心を持ってもらうための新しい技術や商品の紹介記事。日本語の常体で記述。ファクト情報を重視しながら、未来への可能性を示唆するコラムとする。 #記事全体の流れ ・テーマ設定と結論の示唆・新しい技術の紹介と、それに対する疑問、あるいは懸念


・疑問や懸念に対して、開発者やメーカー、発信する組織がどのように考えているか、その考えに対して消費者目線で見たときに、筆者自身がどう受け止めるか?・開発者やメーカー、発信する組織の主張に対して、自分自身の目線からの意見を加えて、納得できる落としどころに関して言及する・開発者やメーカー、発信する組織が示唆する将来像に対して、自分自身がどのように未来を見通せるようになったのか、取材を通じた変化や未来に対する期待を表明する・まとめとして取材した新しい技術や商品に振り返り、その評価を下して、さらなる発展を期待して終わる記事を書く上でのポイント・与えた資料による事実、情報に関して重要なものとして扱う・事前学習による知識を披露する場合には、与えられた資料では無いことを明確にすること・類似する情報は、重複感がないようまとめて言及する・一方で、情報量は減らすことなく、長文になったとしても、複数のセクションに分割して深く考察する


 少し長いが、このように最初に記事の“構造”に関する指示を与えることで、トークンを節約しつつ、最短距離で一貫性のある長文を生成できるのだ。


 実際のプロンプトと出力結果は、以下のURLに保存してある。気になる人は参照してみてほしい。


●AIとの協働は「使いこなし」の時代へ


 生成AIへの感度の高い読者なら、今回紹介したようなことを既に実践しているかもしれない。AIとの協働は、もはや「できたら便利」ではなく「できなければ不利」な時代に差し掛かっている。


 例えば、英語の技術資料を読み込ませて日本語の記事を書く際に、中国語圏の評判などのレポートも盛り込み、ドイツでの展示会情報を加える――そんな多言語対応も、AIなら当たり前にこなせる。情報が雑多で整理されていなくても、意味のある構造化された情報にしてくれるのがAIのメリットである。要するに、文章を作成する上で最も「カロリー」の高い領域を肩代わりしてくれるのだ。


 しかし、最終的な文章の“価値”を決めるのは、依然として人間のセンスにかかっている。AIは効率を劇的に向上させるが、「何を書くのか」「なぜ書くのか」という根本的な問いには答えてくれない。


 生成AIでは、動画生成な“ド派手”な技術が注目を集めがちだ。しかし、文章生成AIはビジネスの現場において最も実用的かつ使いこなすべきツールだと考える。将来的に他のAIサービスに取って代わられる可能性もあるが、現時点ではClaude 4を使いこなすことはオフィスワーカーにとって大きな武器となるだろう。


 プログラマーが統合開発ツールのアシストなしにコーディングするのが考えられないように、文章を書く人がAIなしで仕事をすることもなくなるに違いない。近い将来「なぜそんな非効率なことを?」と言われる時代が来る。


 もちろん、あなたにとってのパートナーはClaude 4ではないかもしれない。しかし、手元で使い慣れている、あるいはアクセスできるAIサービスがあるなら、まずは使いこなしを見直してみてはいかがだろうか?



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