公正取引委員会は22日、クレジットカード国際ブランド「VISA(ビザ)」のシンガポール法人でアジア太平洋地域を統括する「ビザ・ワールドワイド・ピーティーイー・リミテッド」について、提携先との取引条件を巡り独占禁止法違反(不公正な取引方法)の疑いがあるとして、同法の行政処分「確約手続き」を適用した。公取委によると、業界最大手で国内でも最多のシェア(市場占有率)を誇るビザを含め、クレジットカード国際ブランドへの行政処分は初めて。
公取委は2024年7月、ビザの日本法人に独禁法違反の疑いで立ち入り検査を実施。米国本社など海外の関連先も調査していた。
確約手続きの前提となったのは、提携先で「VISAブランド」を利用できる店舗の開拓や管理を担う加盟店契約会社(アクワイアラー)に対し、ビザが提示した取引条件だった。
クレジットカード決済では加盟店契約会社が決済の可否などをカード発行会社(イシュアー)に問い合わせる信用照会が、専用のネットワークシステムを介して行われる。その際、インターチェンジフィーと呼ばれる手数料が加盟店契約会社からカード発行会社に支払われ、手数料率はビザなどの国際ブランド側が決定する仕組みとなっている。
ビザは21年11月以降、自社製の照会システムを利用した場合にのみ、手数料率を優遇する取引条件を加盟店契約会社に提示。一定の要件を満たせば優遇するとしていた条件を変更した。
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公取委は、手数料率の決定権限を有するなど、ビザが強い立場を背景に取引条件を変更し、独禁法が不公正な取引方法として禁じる「拘束条件付き取引」の疑いがあると判断した。実際、手数料率の優遇を受けようと、ビザと競合するNTTデータ製の照会システムからビザ製に乗り換えたケースもあったという。ビザにとっては、システム利用料の収入増やシェアの拡大につながる利点があったとみられる。
独禁法の確約手続きは、公取委と事業者との合意によって早期の問題解消を図る行政処分の一つ。ビザは今月、違法性が疑われる行為の解消や、その履行状況を第三者の監視下で5年間報告することなどを「確約」する自主改善計画を提出し、公取委が再発防止に実効性があると認定した。
これに伴い、公取委はビザの独禁法違反を認定せず、排除措置命令や課徴金納付命令といったより強制力のある行政処分を見送った。
クレジットカード取引を巡っては、公取委が22年に実態調査報告書を公表。政府がキャッシュレス決済の導入拡大を目指す中、小売店などから加盟店契約会社に支払われる高額な加盟店料が障壁になっており、インターチェンジフィーも影響していると指摘していた。【山田豊】
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