1962年に漫画家・吉田竜夫によって設立され、アニメーション制作会社として60年以上の歴史を誇るタツノコプロ。『マッハGoGoGo』『みなしごハッチ』『ハクション大魔王』「タイムボカン」シリーズなど、数々の名作を世に送り出してきた。とりわけ中年世代の胸には、子ども時代に夢中になった記憶が今も息づいていることだろう。
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そんなタツノコプロが新たに出版レーベル「TEEM BOOK(チーム ブック)」を立ち上げた。同社にとってもこれは異例の挑戦と言える。レーベル名には「Tatsunoko Entertains Everyone More」の頭文字が込められており、「より多くの人々にエンターテインメントを届けたい」という強い意志がにじむ。アニメーションで培った独自の企画力とIP創出のノウハウを活かし、新たな物語の創造に乗り出す試みだ。その第1弾作品として発表されたのが、漫画『サーバントヒーロー』である。
本作の舞台は、異能を持つ「変異者(ヴァリアンツ)」が国家によって厳しく管理・抑制される社会。能力者は首輪の装着を義務付けられ、その使用には許可が必要となっている。そうした世界で、変異者鎮圧部隊「VS(バーサス)隊」に所属する主人公・里見拳斗と、新人の華山院音磨呂の2人がバディを組み、変異者犯罪に立ち向かう。秩序の維持を任された公僕でありながら、彼ら自身もまた異能者であるというアイロニカルな構造が、物語に深い陰影を与えている。
設定はアメコミの名作「X-MEN」シリーズを思わせる。能力を持つ者が差別され、管理され、それでもなお社会の安全のために戦うという構図は、現実世界にも通じるテーマを内包する。また、国内作品では『僕のヒーローアカデミア』を想起させる面もある。能力者が公的な枠組みで正義を担うという点では類似しているが、『サーバントヒーロー』はよりダークで重々しい。
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特筆すべきは、この世界観がもたらす緊張感の描写である。異能を持ちながらも国家の命令で戦うVS隊の隊員たちは、自身の存在が例外的に容認されているという不安定な立場を自覚しており、その抑圧された空気が作品全体に張り詰めている。
さらに本作は能力者の扱いを通して、現代日本の社会的論点にまで踏み込んでいく展開が予想される。たとえば、先の参院選でも話題となった外国人規制問題――日本国内にも「ルールを守る外国人」がいる一方で、「ルールを逸脱する外国人」が社会問題化している。本作も同様に、「法を順守する異能者」と「法に抗い自由を求める異能者」という構図を通して、社会が“異質な存在”をどう取り扱うかという問いを投げかけていくのかもしれない。
こうしたテーマ設定は、実はタツノコプロがこれまでに手がけてきた作品群と共通項を持っている。『科学忍者隊ガッチャマン』では、特殊能力を持ったヒーローたちが巨大な悪と戦う一方で、任務の遂行によって自らの感情や日常を犠牲にせざるを得ないという葛藤が描かれた。また、『新造人間キャシャーン』では、人間の身を失って正義を貫くという重みのある設定があった。『サーバントヒーロー』が提示するヒーローが「公僕」であるという点も、タツノコヒーローの系譜を受け継ぐものと言えるだろう。
タツノコプロは新レーベルに「普遍性・時代性・独創性」という3本柱を掲げている。異質な存在が社会にどう受け入れられるか、あるいは排除されるのか。昭和の時代から続くこのテーマは、今なお有効であり、その延長線上に本作があるということこそ、タツノコらしい“普遍性”の証左にほかならない。
令和の時代にタツノコプロがどんな独創的な物語を届けてくれるのか――。『サーバントヒーロー』の続きに自然と期待が膨らむ。
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(文=蒼影コウ)
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