
40代のAさんには、小学6年生になる子どもがいます。Aさんの子どもは、ある日「中学受験をしたい!」と言い出しました。どうやら仲のいい友達が受験すると知って言い出したようです。
経済的な余裕はあるため、金銭面では問題ありません。せっかく子どもが言うのだから応援したい気持ちもある一方、「今から受験勉強をしても間に合うのか?」「もし落ちてしまったときにメンタルがボロボロになるのでは?」と不安もあります。子どもの気持ちを尊重して、受験させるべきなのでしょうか。お笑い芸人から教師に転身し、現在はコーチングの専門家として活動する坂田聖一郎さんに話を聞きました。
受験するかどうかに絶対的な正解はない
ー子どもの気持ちを優先して、中学受験させたほうがいいのでしょうか
受験するかどうかに絶対的な正解はありません。どちらを選んでも得られる学びがあり、人生はさまざまな体験を積み重ねることで豊かになります。
|
|
これまで体験したことのない世界に一歩踏み出すことが、子どもにとって自己肯定感や達成感を育むチャンスになるのです。受験を体験として捉え、「まずはやってみよう」と背中を押してあげることで、子どもの視野はぐんと広がります。
ー小学6年生から受験対策をして間に合うのでしょうか
受験を早くから準備してきた子どももいれば、小学6年生になって初めて受験を意識する子どももいます。そのため早くから準備している子に追いつくために多くの勉強時間を確保できるのであれば、まだ間に合う可能性はあります。
また、受験をするというチャレンジを後押しする場合、ぜひ親として頭に留めておいていただきたいのは、受験というと「合格=成功」「不合格=失敗」という価値観で判断しがちですが、この捉え方は子どもの挑戦意欲をそいでしまう恐れがあるのです。
たとえ結果が不合格であっても、その過程で得られる学びや成長は計り知れません。むしろ、「合格・不合格という枠を超えて、自ら知らない世界に飛び込む勇気」を称賛してあげましょう。未知の領域に向かっていくチャレンジ精神こそが、その後の人生においても大きな糧になります。
|
|
ーもし中学受験をさせる場合、親はどうサポートしたらいいでしょうか?してはいけないことはありますか?
子どもの話にじっくり耳を傾け、どのような気持ちで受験を選んだのかを言葉にして、整理する手助けをすることが大切です。
合否の可能性に関わらず「あなたならできるよ」「挑戦を信じている」というメッセージを、日常の何気ない会話の中で繰り返し伝えてください。この信頼関係が、子どもに安心感をもたらし、失敗を恐れず挑戦し続ける力を育みます。
また、受験勉強を進める上で親がつい熱心になりすぎると、子どもは「親の期待に応えなければ」とプレッシャーを感じてしまいます。そのため、勉強の進捗を確認するときは「今日はどの問題に取り組んだの?」と軽い口調で尋ねる程度にとどめ、手伝いが必要な場面では「何か手伝えることがあったらいつでも言ってね」と声をかけるようにしましょう。
その他、親自身がイライラしてしまったときには素直に「ごめんね、つい強く言ってしまった」と謝ることも重要です。子どもがミスをしても責めるのではなく、失敗から学ぶ姿勢を一緒に育むことで、勉強だけでなく自己肯定感も高めることができます。
|
|
◆坂田聖一郎(さかた・せいいちろう)コーチング研修講師
愛知教育大学教育学部卒業後、お笑い芸人の道を歩むもコンビが解散。その後、愛知教育大学大学院に入学し大学院生の傍ら、定時制高校で非常勤講師として国語を教える。卒業後、愛知県豊田市の正規教員として小中学校に勤務。2020年7月には「株式会社ドラゴン教育革命」代表取締役に就任。2022年「ままためコーチング塾」をスタート。
▽公式ホームページ
https://dragonteacher.com/profile/
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)