初公判に臨む小島智信被告=1日、東京地裁(イラスト・日下部亜留斗氏) 「ルフィ」グループ幹部4人のうち初めて公判に臨んだ小島智信被告(47)。日本に強制送還された頃と比べてやせ細り、別人のような姿で法廷に現れた。起訴内容を認めて謝罪し、グループの成り立ちや役割分担を詳細に語った。
小島被告の説明などによると、特殊詐欺グループのリーダーだった渡辺優樹被告(41)は、フィリピンの高級ホテルのスイートルームに居住していた。組織の拠点にはほとんど顔を出さず、カジノで多額の金を稼いでいたといい、「プロギャンブラーのようだった」と振り返った。
小島被告は、当初はうその電話をかける「かけ子」だったが成果を出せず、渡辺被告の身の回りの世話をする「雑用のエース」に。約300万円の借金を肩代わりしてもらい、「何を頼まれても頑張ろうと思った」という。
その後、特殊詐欺の拠点の移転や、勧誘チームの立ち上げなどを任された。詐欺で得た現金回収の指示役や、メンバーの給料管理なども担うようになった。
2019年夏ごろ、渡辺被告は約60人のかけ子を住み込みで働かせるため、約12億円で7階建ての廃ホテルを購入。「ここに全員住まわせる。そうしたら誰も捕まらない」と豪語し、特殊詐欺による稼ぎが1カ月で2億円を超えたこともあった。しかし同11月、現地当局に摘発され、両被告は約1年半後に拘束された。組織は逃走した別の幹部らに乗っ取られたという。
「日本に帰るくらいなら死んだ方がましだ」と話していた渡辺被告は、強制送還を免れるため、現地の司法当局者らに計数億円の賄賂を支払った。架空の刑事事件の被告となって複数の施設を転々とし、21年11月、マニラ郊外の入管施設「ビクタン収容所」へ移された。
同収容所には今村磨人(41)、藤田聖也(41)両被告がいた。渡辺被告は施設からの釈放や、逃走に必要な資金集めのため、今村被告らと協力。今村被告は覚醒剤の密売のほか、22年3月ごろには「ルフィ」と名乗り、日本の実行役に強盗の指示を始めていた。
渡辺被告は今村被告から実行役の確保を求められ、小島被告に勧誘を指示。藤田被告を介して人材を紹介するようになり、遠隔で強盗を指示するスキーム(枠組み)が整った。奪った金は渡辺被告のカジノ口座に送金された。
小島被告は3件の強盗に関与したとされるが、被害者が激しい暴行を受けていたことなどから、実行役の紹介をやめたと主張。一連の強盗事件について、「完全に暴走していた」と振り返った。