日本はパスポート保有率わずか17.5%…「若者の海外旅行離れ」3つの理由とは

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2025年07月24日 09:20  女子SPA!

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 パスポート保有率わずか17.5%の日本。若者の海外旅行離れって本当?

 新卒から18年半、テレビ朝日のアナウンサーとして、報道、スポーツ、バラエティなど多岐にわたる番組を担当してきた大木優紀さん(44歳)。

 40歳を超えてから、スタートアップ企業である「令和トラベル」に転職。現在は、令和トラベルが運営する旅行アプリ「NEWT」(ニュート)の広報、まさに「会社の顔」として活躍中です。

 第7回となる今回は、旅行会社で働く大木さんに、若者の“海外旅行離れ”について、自身の視点から語っていただきました。

◆若者の海外旅行離れってホント?

「最近、若者が海外旅行に行かなくなった」

 そんな声を耳にしたことはありませんか? 実際、データもその傾向を裏付けています。

 2024年の日本人のパスポート保有率はわずか17.5%。これは韓国(約40%)、台湾(約60%)、アメリカ(約50%)と比較しても、際立って低い数字です。

 さらに、少し古いデータではあるんですが、2010年には20代の海外旅行未経験率が41.7%だったのに対し、2016年には51.8%に上昇。半数以上の若者が一度も海外に出たことがない、という現実があります。

 では、日本の若者は「海外に行きたくない」のでしょうか? それとも、「行きたくても行けない」のが実情なのでしょうか?

 今回は、この「海外旅行離れ」の背景にある本当の理由について、考えてみたいと思います。

*参考:若者のアウトバウンド活性化に関する検討会「若者のアウトバウンド活性化に関する最終とりまとめ〜次代を担う若者への『海外体験』のススメ〜」(2016年7月/国土交通省観光庁HPより)

◆「行きたい派」と「行きたくない派」海外旅行の二極化

 私の勤めている会社が運営する旅行アプリ「NEWT」では、2025年6月、全国の18〜29歳の若者4,127名を対象に、海外旅行に対する意識調査を行いました。

 その結果、今の若者は海外旅行に「行きたい派」と「行きたくない派」に二極化していることがわかりました。

 そこで、さらに詳しくその違いを探るため、行きたい派550名・行きたくない派550名、合計1100名に対して追加調査を実施。すると、両者の間には可処分所得、つまり自由に使えるお金に明確な差があることも見えてきました。

「行きたい派」は、経済的に恵まれていることが多く、たとえば都会で実家暮らしをしているケースが目立ちます。自由に使えるお金は月に5万円程度という人も少なくありません。

 一方で「行きたくない派」は、都心で一人暮らしをしている人が多く、自由に使えるお金は月1万円以下という層が多いという結果に。つまり、「行きたくない」というより、「行きたくても行けない」。そんな現実があることが見えてきました。

 さらにもうひとつ、興味深いデータがあります。それは、SNSの利用傾向も「行きたい派」と「行きたくない派」で明確に分かれていたという点です。

「行きたい派」は日常的にSNSを活用し、行きたい場所の情報を集めたり、旅先のイメージを膨らませたりしています。

 一方で、「行きたくない派」はSNSの利用頻度が低かったり、そもそもSNSに否定的な印象を持っていたりするケースが多く、海外のリアルな情報に触れる機会自体が少ない傾向にありました。

 このことから、情報へのアクセスや感度の差も、旅への意欲に影響していると考えられます。経済格差とともに、情報格差が“海外旅行の距離感”を生んでいるのかもしれません。

◆若者が海外旅行に興味を持たなくなった3つの理由

 データを見ていて感じるのは、そもそも「海外旅行にあまり興味がない層」そのものが増えてきているということです。そしてその理由には、大きく3つの要素があるのではないかと思います。

1つ目は、世界情勢。

 特にコロナ禍の影響は大きかったと思います。数年間、物理的に海外との接点が閉ざされたことで、「海外=遠いもの・怖いもの」というイメージを持ってしまった人も少なくないのではないでしょうか。

 かつては「いつか行ってみたい」と思えていた場所が、どこか不安やリスクと結びついてしまった。そんな感覚が残っている人も多いように感じます。

2つ目は、経済状況。

 これは前述のデータからも明らかですが、「海外旅行は高いもの」という認識が以前よりも強くなっている印象があります。円安の進行に加えて、現地の物価高(インフレ)も影響し、費用はさらにかさみます。

 さらに、国内の生活費の上昇、奨学金返済など、日々の暮らしそのものが厳しい中で、「海外に行く余裕なんてないよ」という声が本当に多く聞かれます。

3つ目は、スマホテクノロジーの進化。

 特にSNSの発展により、海外の情報が“行かなくても手に入る時代”になったことも影響していると思います。InstagramやYouTubeを通じて、タイの屋台も、パリのカフェも、NYの街並みも、手のひらの中で見られる。便利な反面、「行かなくても行った気になってしまう」のが今の時代です。

 リアルな体験への渇きが薄れつつある今、海外旅行そのものが「非日常」ではなくなっているのかもしれません。

◆ニューヨークで知った、自分の変化

 とまあ、確かにデータを見てみると、「最近の若者は海外に行かなくなっている」という傾向は、はっきりと表れているように思います。でも、私はそんな「内向き」ともいえる方向性に、やっぱり寂しいなと思っている派でもあります。

 というのも、私自身にとっての「海外旅行」は、単純に「旅行=娯楽」を超える意味のある体験だと思っているからです。

 私自身の体験でいうと、ニューヨークという街がものすごく好きで、ここはもう、私にとっては人生の節目節目で何度もリピートしている場所でもあります。

 私が初めてニューヨークに行ったのは、18歳のとき。大学生だった私は、ニューヨークに滞在している友人を訪ねて、初めてひとりで海を渡りました。

 そのときは、英語もまともに話せなくて、正直、ニューヨークという街に完全に打ちのめされました。マンハッタンの目的地にたどり着くまで、気の遠くなるような時間がかかってしまいました。

 ニューヨークって、誰にでも平等に冷たい街なんですよね。多民族都市なので英語が話せない人って多いんですが、そこを優しくサポートするようなカルチャーはなく、少しでもモタモタしていようものなら、「NEXT!」ってバッサリ。

 でもその潔さ、スピード感、緊張感のある空気が、私は好きで、東京ではマジョリティの中でなんとなく生きていた自分が、まったく通用しない環境に投げ込まれたことで、視野がガラリと変わった気がしました。

 それ以来、私は何度もニューヨークに通うようになり、ブロードウェイのエンタメを味わい、ショッピングを楽しみ、さまざまな表情のNYに出会ってきました。

◆私が信じる“旅の価値”

 そしておととし。

 私ひとりで、子どもふたりを連れて、再びニューヨークに降り立ちました。タイムズスクエアの雑踏の中で、ぎゅっと子どもたちの手を握った瞬間、ふと感じたんです。

「ああ、自分の立ち位置が変わったな」って。

 ニューヨークのエネルギーに圧倒されていればよかった18の頃、働き始めてとにかく買い物が楽しかった20代、そして、絶対に守らなければならないものを両手に引き連れた緊張感。同じ場所に立っていても、自分の感じ方や役割がこんなにも変わっているんだと、強く実感しました。

 だから私は思うんです。

 旅というのは、その土地の温度や空気感、人の優しさや厳しさに触れることで、「自分自身を見直すきっかけ」を与えてくれるものなんじゃないかと。そしてそれが、また日々を頑張る原動力にもなる。

 それこそが、私が信じている「旅の価値」です。

◆若者がもっと自由に、海外へ行ける未来をつくりたい

 今、日本は国際的に存在感が薄れてきているように感じます。国内でも、焦燥感や閉塞感、そしてどこか海外に対する劣等感のようなものが漂っているのかもしれない。

 このような状況の中で、このまま日本人がますます内向きになり、パスポートの保有率も上がらないような状況が続くとしたら……。私はそれを、あまり良いことだとは思っていません。

 だからこそ、若い世代がもっと気軽に、もっと自由に、海外へ飛び出していけるような環境を作りたい。最初の一歩は、きっと「海外旅行」でいいんです。難しいことじゃなくて、ただ行ってみる。それだけでいい。

 私自身は、その「はじめの一歩」を後押しできる存在でありたいと思っています。

 だから、デジタルの力を使って、海外旅行のハードルを下げていきたい。アプリ一つで、まるでECサイトで、水を買うみたいな感覚でチケットを手配できて、パスポートさえあればすぐに飛び立てる。

 そんな世界を作っていきたいなと思いながら、仕事をしています。

 今回のテーマ、「若者の海外旅行離れって本当ですか?」という問いに対しては、残念ながら「本当」なのかなと思います。

 でも、私はそれを変えたいと思っているというお話でした。

 皆さんはどう思いますか?「若者の海外旅行離れ」について、ぜひコメント欄で教えてください。
<文/大木優紀>

【大木優紀】
1980年生まれ。2003年にテレビ朝日に入社し、アナウンサーとして報道情報、スポーツ、バラエティーと幅広く担当。21年末に退社し、令和トラベルに転職。旅行アプリ『NEWT(ニュート)』のPRに奮闘中。2児の母

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  • 日本が途上国になったからでしょう?
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