
「うちの近所のスーパー、ドイツには珍しく鶏の砂肝を売ってるんですけど――」
ドイツ人の旦那さんと息子さんとともに、現在ドイツに住まれているむったーさん(@AkagoDeutsch)。日本との食文化の違いを感じさせる現地のエピソードをX(旧Twitter)に投稿。たくさんの人たちから驚きの声があがりました。
日本ではお酒のおつまみとして定番の“鳥の砂肝”。「砂嚢(さのう)」という胃の一部分のことを指し、“砂ずり”と呼ぶ地域もあります。コリコリとした食感が人気ですね。
日本では普通に売られている砂肝ですが、ドイツではあまりメジャーな食材ではない模様。購入する人がいても、それは自分が食べるため――という目的であるとは限らないようで…?
|
|
むったーさんに、投稿について詳しい話をおうかがいしました。
スーパーで砂肝の話で盛り上がったものの…使い道は?
ある日、旦那さんと一緒に近所のスーパーを訪れたむったーさん。会計をしようと商品をレジに持っていき、店員さんに対応してもらっていました。その時、店員さんはむったーさんが選んだ砂肝をレジに通しながら、話しかけてきたといいます。
「これ、私も時々買うのよ。どうやって料理してる?」
この人も砂肝好きなのかしら――と親近感を覚えたむったーさん。「私は炒めるだけー」と答えたところ、相手も「私も茹でるだけー」と返してきました。
「砂肝、ヘルシーだしいいよね」
|
|
と、お互い意気投合。話も盛り上がります。ところが――。
次にむったーさんが「味付けはどうしてる?」と訊ねたところ、店員さんはこのように答えました。
「…味付け?うちの犬はそのまま食べてる」
思いもよらない事実が発覚。なんと、その店員さんは砂肝を「犬の餌」にしていたのです。思わず絶句してしまったむったーさん。その後ろで、むったーさんの旦那さんが大笑いしながら言いました。
「うちは彼女がこれ食べるんですよ」
|
|
それを聞いた店員さんは、大慌てで「わ、私も食べるのよ!一口ぐらい、ね」と言ってきました。
(それ、犬にあげる前に茹で加減みてるだけだよね?)
しかし、むったーさんは、こう思わずにはいられなかったといいます――。
むったーさんの旦那さんも、砂肝は食感があまりなじめず苦手だそうです。食の好みが近しい現地の人をやっと見つけた――と思ったのに、その人も「自分ではなく犬に食べさせるために」砂肝を購入していた、という予想外のオチとなってしまいました。
日本と西洋との食材に対する認識の違いを感じさせられるエピソード。むったーさんのXのリプ欄にもたくさんのコメントが寄せられていました。
「カルチャーショック」
「めっちゃ美味しいのに」
「いいもん食ってんなぁ犬」
「フランスでもスーパーで牛すじ売ってますが、ばりばり犬の写真飾ってますね。完全にペットのご飯用wwww」
「アメリカのスーパーにある鶏レバーも、釣りで魚の餌にされてました」
国によって、食文化は異なります。
今回の砂肝然り、日本では動物の内臓は“ホルモン”とも呼ばれ、食材としてよく使用されます。しかし、海外に行くと、またその認識が違っていたりするのかもしれません。
しかし、むったーさんは投稿内で、近所のスーパーには鶏の砂肝以外にも、牛の胃などの内臓が売られているともコメントされています。ドイツでも、砂肝や内臓の部位は食材として認知されているのでしょうか…?
実際のところについて、むったーさんにおうかがいしました。
――ドイツでは基本的に砂肝は人は食べないのでしょうか?
むったーさん:今回のことがあって、周りのドイツ人に「砂肝を食べるか」聞いてみたんです。そしたら、「スーパーに砂肝なんて売ってる?」、「そもそも砂肝って何?」、「犬用でしょ?」などの声があった一方で、「私も好きで食べるよ」という人もいて、個人差がありました。
――その他、内臓系の部位が食事に出されることは?
むったーさん:牛の内臓は、ドイツ料理のお店でメニューに載っているのをみたことがあるので、食べる人は食べると思います。が、あまり一般的に食されるものではない印象です。
――他にも、食について、ドイツと日本とで違いを感じることは?
むったーさん:大きく違うのは「食への情熱」ですね。
夫も日本に住んでいた頃、TVのグルメ番組の多さに驚いていました。また、先日に家族で日本に一時帰国したのですが、「この値段でこれだけ美味しいものを食べさせてもらえるなんて!」と改めて感動しました。手軽においしいものが調達できるので、一時帰国のたびにスーパー丸ごと持って帰りたくなります。
逆に、ドイツは食への関心が日本ほど高くない印象です。お弁当としてパン屋さんの袋にプレッツェルをそのまま入れて持ってきている子供がいても誰も気にしない雰囲気ですし、パン屋さんの前で買ってきたパンを子供に配りながら「今日はこれで晩御飯おしまーい」と言っているお母さんを見たこともあります。
――お話を聞くと、ドイツの人たちの方が、食に対して大らかなように感じますね。
むったーさん:日本では、料理への取り組み方も主婦の評価の基準になりやすいですが、ドイツでは料理に時間や手間をかけることが「良い妻」、「良い母」の評価に直結せず、単に「料理が好きな人」というイメージになるので、その点は気楽に感じます。
――ドイツでの暮らしのなかで、他にも日本との違いを感じることはありますか?
むったーさん:私が母親だから、というのもあるかもしれませんが、日本は母親に求められるものが大きく、その期待値も高くて大変なんじゃないかなぁという気がします。日本では幼稚園や保育園でオムツ一枚一枚に記名が必要、という話もドイツでは驚かれます。ドイツはオムツのパッケージごと持っていってそのパッケージに名前を書くだけ、というところがほとんどなので。
◇ ◇
2019年より、ドイツに移住をされているむったーさん。ドイツでの暮らしについて、Xやブログを通じて発信されています。
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・竹中 友一(RinToris))