《顎の骨が砕けた人も》インプラント治療トラブルが急増中…危ないクリニックの「共通点」

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2025年07月25日 11:10  web女性自身

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“天然歯に近い見た目と、かみ心地”から第二の永久歯と呼ばれる「インプラント」。ほかの歯に負担をかけないので、歯の寿命を延ばすと期待されるが、治療や費用をめぐるトラブルが相次いでいる。



■記憶に新しいインプラント詐欺事件



今年6月中旬、千葉では前代未聞の詐欺事件が世間を騒がせた。



逮捕された歯科医院の元院長(58)は、インプラント治療を申し込んだ女性患者(50代)に対して、「(女性の)症例を講演会の資料として、インプラントメーカーに提供すれば、後日400万円返金される」などと、虚偽の説明をして、現金200万円を支払わせた。



ところが、手術が繰り返し延期になったため、女性が返金を求めると、元院長は一向に応じなかったため警察に被害届を提出。



元院長に対する相談や被害届はこの女性のほかにも十数人の患者から出ていて、被害総額はなんと1億円以上にもなった。あまりにも悪徳すぎる。



「同じ医師として情けない……」



そう憤るのは、幸町歯科口腔外科医院の宮本日出院長。「高額な費用を提示する、あるいはろくに説明をしないで手術を勧めるような歯科医には注意が必要です」と警鐘を鳴らす。



宮本院長のもとには、ほかの歯科医院からインプラント治療を受けた人が転院してくるケースも少なくないという。



「治療のリスクや費用など十分な説明をされないまま、すぐに手術を決めて受けてしまうと、後からトラブルに発展しやすいのです。



特にインプラント治療は自由診療のため高額なのと、アゴの骨を削るので、高齢になるほど骨への負担や後遺症などのリスクが伴います」(宮本院長、以下同)



インプラント治療とは、アゴの骨にチタン製の人工歯根を埋めて土台を作り、セラミックなどの人工の歯をかぶせる治療法。健康保険の適用外なので、全額自己負担になる。



消費者庁と国民生活センターが連携している「事故情報データバンクシステム」には、2009年から命・身体にかかわる消費上の事故が集約されている。「インプラント」によるトラブルは7月9日時点で、1千159件も寄せられている。



■インプラント治療を普通にやったら儲からない



目立つトラブルは、費用面と手術後の不具合に関するものだ。



「インプラント治療は、クリニックによって金額にばらつきがありますが、手術代込みで1本40万〜50万円が相場。私のクリニックでは、ドイツ製のインプラントを使っているので30%が材料費、手術後に十分なメンテナンスを行うので60%が人件費等で、利益は10%ぐらいしか出ないのが現状です。



摘発されたクリニックのように高額な費用を提示するのも要注意ですが、反対に安さを売りにしている医院は材料費や人件費をカットしている可能性が考えられます。最も大切なのはメンテナンスで、手術後、定期的に通い、かみ合わせなどをチェックして調整するので、アフターケアがしっかり行われているのか確認しましょう」



広告などで、たくさんの手術実績をうたっている場合があるが、メンテナンスもしっかり行われているかどうかは診療台の数が一つの目安になる。



「メンテナンスを担当するのは主に歯科衛生士で、一般的に1台の診察台につき1人の配置が基本です。数多くの実績をうたいインプラント治療を積極的に行っているのであれば、メンテナンスのために7台ぐらいは診察台が設置されているはずです」





■手術前の説明・検査が十分になされているか



実は記者にも心当たりが。数年前にインプラント治療を受けようと都内のクリニックを受診したときのこと。歯のレントゲンを撮ってから、派手なネイルの女医が登場。いきなり手術の手順と金額の説明をし始めて、手術日の予約をすぐ決めるように促したのだ。「いったん、考える」と言ってクリニックから出てきたが、このように手術をせかすクリニックは多い。



■術後の検診でアゴの骨が腐食し、砕け始めていた!



国民生活センターに寄せられた埼玉県に住む80歳・女性の例は、事前検査を怠った典型例だ。



この女性によると、数年前に歯科医師の勧めで、健康な歯をすべて抜いてインプラントにした。治療後の定期検査を受けたときに、レントゲン画像を見た医師から「何か薬を飲んでいるのか」と聞かれたので「骨粗しょう症の薬を飲んでいる」と答えたところ、「自分の手には負えないので大学病院に行くように」と紹介された病院に行くと、「アゴの骨が腐食し、砕け始めている」と知らされた。



「事前検査が不足していた典型例です。検査では問診や歯のレントゲンだけでなく、血液、唾液の検査、さらにCTで骨量・骨質を調べます。なぜかというと中高年以降の女性は更年期を迎えると、骨の質がガクンと変わってくるため。アゴの骨に土台を作るので、骨質が悪いと手術ができないのです。



■マニュアル化した説明で、見逃されることも!



インプラント治療の説明は医師ではなく、歯科衛生士も行っていいことになっているので、マニュアル化してしまい、個々の体調などを見落とす恐れもあります。



骨粗しょう症のほかにも、糖尿病患者は歯周病になりやすく耐用年数が短くなる恐れがあります。ほかにも、心疾患、肝疾患のある人はリスクが高くなるので、持病の有無、常用薬は必ず聞きます」



■術後のトラブルは中高年女性に集中



また、痛みや手術後に物がかめないという苦情も多数、国民生活センターに寄せられている。



「インプラントの治療後、歯茎が腫れている」(50代・性別不明)
「手術後、のどの痛みやアゴの腫れがあり入院した」(50代・女性)
「インプラントの治療後、蓄膿症になり、セカンドオピニオンを求めたら『鼻の空洞にインプラントが刺さったため蓄膿症になっている。早くやり直さないと骨がダメになる』と言われた」(50代・女性)



「私のところにはセカンドオピニオンを求めて『食べ物がかめない』『蓄膿症になった』『アゴや頭が痛い』といった症状を訴える人が来院されます。かみにくいと感じたり、痛みが出たりするのは、土台の埋め込みが不適切だったことなどが考えられます。事前にCT検査などが徹底されなかったので、不具合が生じた可能性があります。



大事なのは歯科医師の専門性や経験、患者とのコミュニケーションです。インプラント治療の場合は、メンテナンスを含めて長い付き合いになるので、医師と患者の相性や信頼関係がとても重要となってきます」



トラブルに遭わないためには、インターネットなどで安直に選ばず、歯のかかりつけ医で紹介してもらうのも手だ。高い治療費なのだから、クリニック選びは慎重に。

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