Nothingの4万円台スマホ「CMF Phone 2 Pro」は日本向けに“フルカスタマイズ” 楽天モバイルとの協業も加速

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2025年07月26日 06:11  ITmedia Mobile

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Nothingは、日本でCMF Phone 2 Proを発売した。カラーは3色展開となる

 英Nothing Technologyは、7月24日に「CMF Phone 2 Pro」を発売した。同機種はオープンマーケット(いわゆるSIMフリー版)で販売される他、4月発売の「Nothing Phone (3a)」に続いて楽天モバイルが採用。IIJmioなどのMVNOもオープンマーケット版を取り扱う。ミッドレンジモデルで価格は4万2800円から。高いコストパフォーマンスとデザイン性を両立させた端末だ。


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 「CMF」はNothingのサブブランド的な位置付けのシリーズで、Nothing Phoneよりもスペックや価格を抑えつつ、拡張性を持たせたデザインなどで差別化を図っている。日本では、先代モデルの「CMF Phone 1」が販売されていたが、スマホは今回で2機種目となる。ここでは、同機種を投入するNothingや、MNOで独占販売を続ける楽天モバイルの戦略に迫っていきたい。


●デザインの方向性が異なるCMFブランド、Phone (3a)との共通項も


 背面が透明でLEDの光を使って通知などの情報を伝える「Glyphインターフェイス」が特徴のNothing Phoneに対し、CMF Phoneはカスタマイズ性やクラフト感を全面に打ち出した端末。ミッドレンジからハイエンドまでのレンジに収まるNothing Phoneとは異なり、ミドルレンジ以下で価格も抑えめなのがCMF Phoneのシリーズを通した特徴だ。同社は、スマホだけでなく、イヤフォンやスマートウォッチもこの2ブランドを使い分けている。


 CMF Phone 2 Proは、“Pro”という名称の通り、CMF Phoneの中ではややスペックが高めの1台。プロセッサにはMediaTekの「Dimensity 7300 Pro 5G」を採用しており、ディスプレイのリフレッシュレートも120Hzに対応する。背面に搭載されたカメラは、メインの広角カメラと望遠カメラが5000万画素。光学2倍ズームも搭載しており、この価格帯では珍しいトリプルカメラモデルになる。


 一部の機能は4月に発売されたNothing Phone (3a)と共通性もある。例えば、ディスプレイサイズはどちらも6.77型で、バッテリー容量も5000mAhと同じだ。光学式手ブレ補正の有無といった違いはあるものの、メインカメラの画素数、センサーサイズ、レンズのF値まで2機種のスペックはピッタリ一致している。


 また、Nothing Phone (3a)で初めて採用された「Essential Space」も受け継いでいる。これは、スクリーンショットや写真、音声を保存しておくためのスペースで、AIが自動的に情報を整理してくれる機能。スクリーンショットや音声をワンタッチで保存するための専用ボタン「Essential Key」も搭載する。


 一方で、プロセッサはQualcomm製ではなく、先に挙げた通りMediaTek製。望遠カメラも、Nothing Phone (3a)は光学3倍だったのに対し、CMF Phone 2 Proでは2倍に抑えられている。デザインの方向性で違いを出しつつ、目立たないところでスペックダウンを図ってよりコストパフォーマンスの高さを強調したのが、CMF Phone 2 Proといえそうだ。


 初代モデルのCMF Phone 1ではネジを外して背面カバーを取り換えられたり、背面右下のダイヤル状のパーツを外してストラップやキックスタンドを取り付けられたりするカスタマイズ性を強く打ち出していたが、CMF Phone 2 Proでは、ややその主張が弱くなった。オプションパーツを取り付けられるパーツはそのままだが、背面のネジはあくまで飾りになり、カバーの変更はできない。


●ローカライズも完了し、CMFの本格展開がついにスタート


 シリーズ2機種目となるCMF Phone 2 Proだが、先代のCMF Phone 1はどちらかといえば、テストマーケティング的な意味合いもある日本投入だった。おサイフケータイはおろか、NFCも搭載しておらず、さらには主要キャリアのプラチナバンドにも非対応だったからだ。仕様的にはグローバル版をそのまま日本に持ってきた形で、周波数対応のローカライズすらされていなかった。


 それでもIIJmioなどが取り扱い話題にはなったが、Nothing Japanの代表であるマネージングディレクターの黒住吉郎氏は「反省点があった」と語る。おサイフケータイやNFCは使う人、使わない人が分かれるため、不要な人にとっては問題ないかもしれないが、プラチナバンド非対応だと最悪の場合、通信がつながらない地域や場所が出てきてしまう。日本市場で本格的に戦っていくには、かなり厳しいスペックだったといえる。


 その反省点を生かし、CMF Phone 2 Proには日本市場向けのフルカスタマイズを施している。プラチナバンド対応はもちろんのこと、NFCを搭載し、おサイフケータイにも対応。さらには、先代モデルで非対応だったeSIMもサポートしており、デュアルSIM/デュアルスタンバイで利用できるようになった。こうした機能への対応は、後述する楽天モバイルの採用にもつながっている。


 黒住氏は、「周波数サポートや日本で必要な機能を拡充するのが私のミッションだった」と語っていたが、CMF Phone 2 Proは、その成果が表れた1台だ。これは、Nothingが日本市場の攻略に手応えを感じ、さらにアクセルを踏んでいることの証左ともいえる。ローカライズを徹底したことで、日本のユーザーにとってより買いやすい端末になった点は高く評価できそうだ。黒住氏も、「自信を持って投入できるモデルに仕上がった」と胸を張る。


 一方で、日本向けのカスタマイズをしていることもあり、発売時期は海外に比べ、やや遅れている。同機種は、海外で4月に発表されており、欧州や米国では5月に発売済み。3カ月ほど、発売が後ろ倒しになっている。また、周波数もプラチナバンドはサポートしたものの、ドコモが使う5Gの「n79(4.5GHz帯)」には非対応。ドコモ回線やドコモ回線を借りるMVNOでは、5Gの実力を十分発揮できない恐れもある。


 大手メーカーだとこのタイムラグを縮めているところはあるが、Nothingはまだ規模も小さく、日本での検証に時間がかかる側面があるという。フラグシップモデルの「Nothing Phone (3)」が現時点で発売予告にとどまっているのも、同様の事情があると推察できる。この時間を縮め、海外での“熱”が冷めないうちに日本に展開していける体制を作れるかは、今後の課題といえる。


 また、対応バンドについては、「カスタマイズを(さらに)入れればできるが、われわれのためだけにやるとなるとコスト的なところが厳しい」(黒住氏)。プラチナバンドはMediaTek側のモデムが対応することでカバーできているが、n79のように日本の中でもさらに特殊な周波数になってくると、追加対応が必要になり、コストの上乗せが大きくなってしまう。


 特にCMF Phoneのようなコストパフォーマンスを売りにする端末では、価格転嫁は致命傷になりかねない。Pixelのようにドコモが一定数コミットしたり、海外でn79が必須になったりしてこない限り、対応は難しいのかもしれない。


●Nothingとの協業を深める楽天モバイル、端末購入プログラムは今後の課題か


 CMF Phone 2 Proに関するもう1つのトピックは、楽天モバイルが採用したことだ。同社は、Nothing Phone (3a)でNothing製品の取り扱いを開始し、実店舗にも専用コーナーを設けるなど、販売に力を注いでいる。スタートアップのNothingにとって、新規参入事業者の楽天モバイルは比較的付き合いやすいキャリアだ。“特別扱い”された成果は出ており、販売も好調だという。


 実際、楽天モバイルが製品販売サイト上で公開している6月の総合ランキングでは、Androidの中で4位につけており、2万円台でキャンペーンを利用すると1円になるエントリーモデルに十分対抗できている。6月9日には、販売店舗を家電量販店内の楽天モバイルショップにも拡大し、計128店舗での取り扱いになった。


 CMF Phone 2 Proでも、他社からの乗り換えで1万6000ポイントを還元するキャンペーンを実施しており、実質価格は3万1900円まで下がる。リーズナブルな端末を求めるユーザー層が厚い楽天モバイルとは相性のいい端末なだけに、Nothing Phone (3a)以上のヒットにつながることも期待できる。


 他社と比べ、Androidのラインアップが手薄だった楽天モバイルだが、2025年になって、そのバリエーションを急速に拡大している。先に挙げたように、4月にはNothing Phone (3a)の独占販売を開始。7月には、日本市場で特に人気の高いGoogleの「Pixel 9a」を導入した。NothingのCMF Phone 2 Proは、それに続く1台になる。一方で、Androidを販売していく上ではまだ課題もある。


 中でも大きいのが、端末購入プログラムだ。楽天モバイルは、iPhoneで「楽天モバイル買い替え超トクプログラム」を導入しており、Pixel 9aにもこれを拡大した。他社と同様、25カ月目以降の下取りを条件に残債を免除するという仕組みだ。機種によっては前半24回分の支払いを軽くして、毎月の負担額を下げる価格が設定されている。Nothing Phone (3a)やCMF Phone 2 Proには、このような販売方法が適用されない。


 Nothingは新規参入メーカーであるがゆえに端末のリセールバリューが低く、こうした販売手法を取りづらい側面もあるという。とはいえ、Nothingはキャリアへの販路を拡大したばかり。楽天モバイルで成果を出していけば、その他のキャリアに拡大していける可能性も出てくる。楽天モバイルにとっても手薄だったAndroidを広げるための武器になっているだけに、双方にとってメリットの大きい協業だったといえそうだ。



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