「寂しくないように」病室の母に贈ったくまのぬいぐるみ→晩年の友として心の支えに 2人は一緒に天に旅立った【漫画】

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2025年07月26日 09:10  まいどなニュース

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プレゼントしたぬいぐるみが急に喋り出し… (圷 見南子さんの提供)

長く愛着を持って接することで、命が宿るといわれている「ぬいぐるみ」。子どもはもちろん、大人になっても大切に扱っている人は少なくないでしょう。漫画家の圷 見南子(あくつ みなこ)さんによる『我が家にいたテツというぬいぐるみについて』は、作者の圷さんが自身の母親にプレゼントしたぬいぐるみについて描いた一作です。以前X(旧Twitter)に投稿されると、2000以上の「いいね」が寄せられていました。また同作をもとにした作品『ぷくちょらりファミリア』は、「月刊コミックビーム」(KADOKAWA)にて連載中です。

【漫画】『我が家にいたテツというぬいぐるみについて』(全編を読む)

急に喋り出したクマのぬいぐるみがずっと見守ってくれて…

ある日圷さんは、病によって入院している母親のためにぬいぐるみをプレゼントしようと決意します。どの子にするか悩みに悩んで手に取ったのは、くまのぬいぐるみでした。そして母の手術が終わった後、圷さんはぬいぐるみの入った袋をプレゼントして、その場を後にします。

その後、袋を開けて「わあっ ぬいぐるみじゃんっ!」と喜ぶ母が、圷さんにスマホでお礼のメッセージを送ろうとします。すると、突如としてぬいぐるみが「よう スマホ打つの手伝うぜ」と喋り出したのです。当然、母は「わっ 喋った!?」と驚いたものの、ぬいぐるみの手伝いもあって、圷さんにぬいぐるみの写真とともに「よう オレだぜ。今日はありがとうな。」というメッセージを送るのでした。

退院後、母はぬいぐるみに「テツ」と名前を付けて大切にします。そして母の自宅に迎えられたテツは、うさぎのぬいぐるみ「ケイ」と対面するのでした。テツに「初めましてだな新入り 俺が厳しくしてやる」と先輩風を吹かすケイでしたが、体格が勝っていたテツにやられっぱなしになるも、仲良く過ごします。

それから1、2年もの間、治療を続ける母のもとで暮らすテツ。そのなかでテツにとっての一番の思い出は、圷さんに自身の油絵を描いてもらったことでした。

しかしそんな楽しい日々は長く続かず、母は容体が悪くなり山の上の病院に入院することに。圷さんは残された父のために料理を始め、その様子を母にスマホで知らせたり、一時退院の時には圷さんの手料理を食べさせたりもしました。思い出を重ねるなか、テツは母が日に日に弱っていってしまう残酷な現実を目の当たりにします。

そしてある日、その時はやってくるのでした。母の容体が悪化しているなか、圷さんは居たたまれずに外の空気を吸いに病室から出ていきます。テツは「ママさんと一秒でも一緒にいてやれよっ」「『そういう時』なの気づけ!!」と叫ぶも、圷さんにその声は届きません。このやり取りを見ていた母は「なあ テツ」「ぜんぶリセットしたいなぁ」と心の声をもらすのでした。

その後、最後のお別れに間に合った圷さんは、テツを抱きしめると「お母さんと同じお棺に入ってくれや」とつぶやきます。そしてお葬式の日、テツは母とともに天に旅立ったのでした。母の横にはテツの遺影もあり、残された友達のケイは「お前さんはエラかった ママさんを一人ぼっちにさせんかった」と涙します。

また圷さんは、アニメ『PUI PUI モルカー』でモルカーの声を演じた「つむぎさん」の訃報を知り、「母とテツとつむぎさんと一緒に天国を目指してるといいなぁ」と思うのでした。

読者からは「テツの言葉ひとつひとつがとても良くて感動した」「お別れ直前のひと言は心に重くきた」など様々な反響が。そこで作者の圷さんに、同作を描いたきっかけについて話を聞きました。

テツとの思い出が連載作品に?

―同作を描いたきっかけを教えてください。

元々両親との生活のなかでエッセイ漫画を定期的に描いてSNSに載せており、それを昨年5月に同人誌としてまとめる機会がありました。その時期は母の逝去から半年ほど経った頃で、自分の気持ちに一区切りつける意味もこめて、描き下ろしとして収録するため制作しました。

―同作の中で、特にお気に入りの場面を理由と一緒にお聞かせください。

テツの肖像画を油絵で描く場面は、まだ母が病魔から遠かった平和な時間を思い出していたので、描きながら幸せでした。

―コミックビームにて連載されている『ぷくちょらりファミリア』の第1話は同作をもとに描かれたとのことですが、どのような経緯でそういった流れになったのでしょうか?

昨年4月ほどにぬいぐるみにまつわる連載企画を編集者さんと作っていたのですが、そのあと『我が家にいたテツというぬいぐるみについて』を発表して、編集さんに「企画にぬいぐるみを選んだのは、テツのことがあったからですか?」と聞かれ、自分の気持ちをそのとき初めて自覚しました。連載直前まで『ぷくちょらりファミリア』の第1話は違う話になる予定だったのですが、せっかくならテツの思い出を元にして第1話を作ろうと提案していただき、連載スタートになりました。

―読者にメッセージをお願いいたします。

現在、KADOKAWA「月刊コミックビーム」2025年3月号から、『ぷくちょらりファミリア』という漫画を連載しております。いろんな人々と、それぞれ異なったぬいぐるみを主役に、毎号オムニバス形式で連載中です。あのときテツが教えてくれた気持ちと、その恩を大事にして、今も描いています。ぜひ読んでください!

それと、『我が家にいたテツというぬいぐるみについて』が収録されている同人誌は、電子版をAmazon Kindleにてご購読できます。こちらもお気軽に読んでいただけたらうれしいです。これからも、読んでほっとする漫画を描いていけたらなと思っています。

(海川 まこと/漫画収集家)

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