高齢女性を狙う「特殊詐欺」メールが地獄の入り口に、数千万円を奪う“騙しのテクニック”

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2025年07月27日 07:00  週刊女性PRIME

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週刊女性PRIME

※画像はイメージです

 警視庁新宿警察署の代表番号と同じ電話番号から、犯罪との関連が疑われる不審な電話が相次いでいるという。

「電話に出ると、警察官を装った相手が『あなたに犯罪の容疑がかかっている』『資金洗浄事件に関与している疑いがある』などと言って、不安をあおる手口です」

 そう話すのは「鳥海翔の騙されない金融学」をYouTubeで配信、投資詐欺などに詳しい鳥海翔さん。

スマホやパソコンを入り口にした投資詐欺も急増

「これまでの偽装電話は番号の前に“+”と“国番号”が表示されることが多く、偽の電話と見抜く手がかりがありました。しかし最近はこうした特徴がなく、着信画面を見ただけでは詐欺の電話と見破ることができない。技術の進歩により、詐欺師たちは本物の警察署の番号を完全に偽装することが可能になったのです」(鳥海さん、以下同)

 警察庁が発表した「令和6年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値版)」によると、中高年女性の被害者が多い。

高齢女性は一般的に投資経験が少なく、金融知識に不安を感じている人が多い。また、家族に相談せずに一人で判断してしまうケースが多く、詐欺師にとって狙いやすい対象となっています。さらに、有名人の名前や『安心・安全』といった言葉に信頼を寄せやすい傾向もあります」

 60代では年金や退職金などまとまった資産を持っていることも多く、「老後の資産を増やしたい」という心理につけ込まれやすいという。

「特に一人暮らしの高齢女性は、家族のチェックが入りにくく、詐欺師は時間をかけて信頼関係を築いてから大金を騙し取るのです」

 電話による特殊詐欺は相変わらず多いが、スマホやパソコンを入り口にした投資詐欺も急増。

「手元のスマホにダイレクトにやってくるSNSや、有名人が登場するインチキHPでの勧誘などもあり、まだ認知が進んでいないのが現状です」

見分け方のポイント

 騙しの手口は電話以外に、HP、SNS、メールの形態が主である。

まず著名な投資家や金融専門家、投資に強い芸能人の名前を騙るニセHPを制作する手口。実在する人物の写真や経歴を無断使用し、あたかもその人が投資をすすめているかのように装います。ネットユーザーが興味を持ってリンクをクリックすると、LINEに誘導され、さらに1対1でのトークやグループトークに誘い込み、高額投資を持ちかけます」

 鳥海さんの画像を悪用したフェイク広告「鳥海翔の株式クラブ」というものがあったそう。

「所在地を港区東新橋の汐留ビルディングにしておきながら、郵便番号は334―1217になっています。そこまで気づくことは難しいかもしれませんが、やはり偽サイトには何かおかしい点があります」 

 見分け方のポイントとして、「HP内の日本語が不自然な場合が多い」

「日本人だったらまずしない言い回しの場合はよくあり、“です”“である”が混在する文章などが典型例。少しわかりづらい例では、助詞などが不自然で“あなたの口座は利用停止がされました”といった表現です。本来であれば“あなたの口座は利用停止されました”と記載すると考えられます」

 SNSなどから誘導される投資詐欺も問題となっている。

“この情報を知っている人だけが儲かります!”“元本は保証します”などの甘い言葉で、広告によってアプローチすることから始まります。SNSの広告でも、著名人や有名な会社を偽っていることも多い。信じてしまったユーザーは数万円から10万円程度の少額投資を持ちかけられることから始まりますが、これが巧妙な罠の第一段階。詐欺師たちは約束の配当を数回支払って信じ込ませ、その後で“このとおり安心ですから、もっと投資してみませんか?”と誘いかけてきます。そのころにはユーザーはすっかりと信じ込み、数百万円、数千万円とお金をつぎ込んでしまうんです

 SNSでは出会い系のロマンス詐欺も流行りの手口。相手がお金の話をしてきたら、まずは疑ってかかろう。 

大事なのは“普段からの意識”

 メールを見分けるための最も重要なポイントは、メールの冒頭に書かれた宛名をチェックする。

「詐欺でない本物のメール、つまり登録した銀行や証券会社からのメールなら、フルネームで宛名が書いてあるのが普通。姓だけ、あるいは名前だけの場合は詐欺メールを疑ったほうがよいでしょう。自身の名前をアドレスにしていた場合、そこから推測した可能性もあります」

 こうしたメールが届いたら、張られたリンクはクリックしないほうが無難。

「詐欺師たちは入会や情報更新などの名目で、氏名や年齢、IDなどの入力を求めてきます。そのデータを使い、後日、宛名をフルネームにした上で、“パスワードが盗まれました。このHPで至急変更してください”と連絡をしてくる。古いパスワードと新しいパスワードを入力させたら、盗んだ古い(正しい)パスワードで銀行や証券会社のHPにログイン。お金を盗み取ってしまうんです」

 少しでも不審な点があれば、メールそのものを削除してしまうのが正解。

「どの手口も少額から始め、大口の金額を振り込ませたらその時点で姿をくらます。見ていたHPやLINEアカウントは削除され、以降は電話しても一切つながらない。典型的なポンジスキーム(運用実態のない詐欺的な投資手口)です」

 HPやSNS、メールにしても、「私は大丈夫」と思っている人は多い。しかし、引っかかるときは誰しも冷静さを失っている。

「騙された人の話を伺うと、普段ならば騙されそうもない人が、イレギュラーが重なったせいで騙されたというケースがとても多い。例えば、日頃からある証券会社で取引していて、お金を動かしたその直後に、たまたまその証券会社を騙る詐欺メールが到着。何か不具合があったのかとパニックを起こし、引っかかってしまうといったケースです」

 そうした状況は起こりうることではあるが、普段からの意識で対応が違ってくる。

「詐欺師たちの手口もレベルアップしており、例えば詐欺HP中の日本語についてもごく自然な言葉づかいや文章になり、洗練されてきています。騙されないようにするためには、どんな手口があるのかを知っておくのはもちろん、金融や経済に関する知識や判断力を養っておくことも必要な時代。普段から金融関連のニュースに触れているだけでも騙しの餌食になる可能性は下がるはずです

取材・文/千羽ひとみ

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