
急転直下で日米間の合意が発表されたトランプ関税。自動車に関しては、4月から27.5%の関税がかかっていましたが、今回、15%に引き下げられました。
そして、原則すべての輸出品に一律にかかる「相互関税」も、8月1日以降は25%にすると通告されていましたが、これも15%で合意したのです。
これまで交渉が妥結した国は、アジアでは日本のほかにベトナム、インドネシア、フィリピンの3カ国。それぞれの関税が引き下げられましたが、それでも20%ほどで、日本が比較的低く抑えられていることが分かります。
そして、自動車をめぐってアメリカ市場で日本と競合するEUや韓国は、それぞれ30%と25%を突きつけられ、交渉を急いでいます。
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では、15%という関税率を引き出すにあたって、日本は、代わりに何を差し出したのでしょうか。
トランプ政権が発表した「ファクトシート」というリストには、輸出拡大と投資の9つの分野で日本側に約束させたとする内容が書かれています。
例えば、アメリカ‧ボーイング社の航空機100機の購入。しかしいつ誰が買うのかなどは分かりません。
農産物については大豆やトウモロコシなどをおよそ1.2兆円分購入することになっています。2024年のアメリカからの農産物の輸入額は1.9兆円ですが、この1.2兆円分をいつまでに買うのかなどは明記されていません。
「トランプ氏が勝ち取ったように見えるようアレンジした」そして、直ちに輸入量を75%増やすと書かれたのがコメ。日本側は、すでに毎年77万トンずつ輸入しているミニマムアクセス米の範囲内で、アメリカ産を増やすと説明。
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今後は年間60万トンほどを輸入することになりそうですが、小泉進次郎農水大臣は「主食用米が増えることはない」としているので、飼料用や加工用に回すコメが念頭にあるとみられます。
一方、「防衛装備品」については、年間数十億ドル追加購入すると書かれていますが、日本政府は、3年前に策定した計画でもともと購入すると決めていたものを、トランプ氏に示したものと説明しています。
このほか、アメリカ車の輸入をめぐっては、日本の基準に合わせた安全試験を行わないことなどを受け入れました。
そして、目を引くのが5500億ドル(約80兆円)にのぼる日本からアメリカへの投資。
トランプ大統領は「その利益の9割をアメリカが得る」とアピールしていますが、トランプ政権の内情に詳しい明海大学・小谷哲男教授は「具体的な部分は棚上げしたまま、数字の大きさでトランプ支持者にアピールしやすくしたもの」と解説。
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農産物や防衛装備品、アメリカ車の規制緩和についても「日本側は実質的にはそれほど負担を増やさないまま、トランプ氏が勝ち取ったように見えるようアレンジした」と評価しています。
ようやく落としどころにたどり着いた日米交渉。一方で、今のところ日米の合意文書は作られていないようで、合意内容のあいまいな部分が火種になるかもしれません。
ベッセント財務⻑官は「合意の実施状況を四半期ごとに評価する。トランプ大統領に不満があれば関税は25%に戻る」と発言しています。
今後もトランプ関税に振り回されないという保証はありません。