
今回、調べてみて驚いたのが各メーカーから販売されている「うずまき」のパン。ユニークな形状と独特の食感の「うずまきパン」は知っていたのですが、1つのメーカーが販売しているものだと思っていたら、各社が似たようなパンを製造しているのでした。
沖縄独特のパン事情「なぜか各社が作っている?」
沖縄のパン市場を見ると、本土とは全く異なる光景が広がっています。山崎パンのような大手ブランドはほとんど見当たらず、代わりに「ぐしけんパン」「オキコパン」「第一パン」(ポケモンのパンを販売している本土の「第一屋製パン株式会社」とは異なる沖縄の企業)の3社がほぼ市場を独占しています。なお、本土の大手メーカー、敷島製パンの「超熟」は沖縄でも販売されていますが、実際にはオキコパンの工場でライセンス生産されています。沖縄の製パン業界がいかに地元企業によって支えられているかがよく分かります。
そんな独特なパン市場の中で、なぜか各社がそろって販売している不思議なパンがあります。それが「うずまきパン」です。
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各社がそれぞれ異なる商品名で販売しているにもかかわらず、形状も特徴もほぼ同じという、観光客にはやや分かりにくい状況になっています。
早速、各社の「うずまきパン」3種類を食べ比べてみようと思います。
1. ぐしけんパン「NEWうず巻サンド」
ぐしけんパンの「NEWうず巻サンド」(税込189円)は、パッケージに描かれた「ぐるぐると目を回す女の子」のイラストが目印。「特製クリームをうず巻状に包みました」というパンの特徴が印字されています。
パン生地は柔らかくて軽く、クリームの甘さもまろやかですが、ジャリジャリと砂糖の食感が特徴的です。カロリーは1個538kcalで、口あたりは軽いはずなのに結構ハイカロリーです。
2. オキコパン「うず巻パン」
県内最大手のオキコパンが製造するのが「うず巻パン」です。今回は期間限定の「黒糖うず巻パン」(税込189円)を見つけたので、限定版を購入してみました。
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黒糖の香りとジャリジャリの食感がいいアクセントになっています。こちらはしっかりと甘さを感じるので、牛乳やコーヒーと合わせるのがオススメです。1個あたりのカロリーは533kcalで、やはりハイカロリーです。
3. 第一パン「チョコうず巻き」
第一パンのうずまきパンは、「ベルギー産チョコ使用のペーストを折り込んだパンにジャリジャリクリームをサンドしました」という「チョコうず巻き」(税込216円)です。
パッケージには、ベルギー国旗の色やトラベルタグのようなイラストが描かれ、少々洋風の趣きがあります。
パンはとてもユニークで、チョコペーストが練り込んであるので、ゼブラ柄になっています。食べてみても、チョコペーストの香りと味わいのおかげで、他のパンよりもリッチに感じました。
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発見! 第一パン「大きなうず巻パン」
さらにスーパーマーケットで「大きなうず巻パン」という商品も見つけました。第一パンの商品で、税込745円でした。パンというよりはロールケーキのような形状です。「大きな」という名の通り、厚さは約20cmほどあり、重量も約840gとかなりのボリュームでした。
なんとなく想像できると思いますが、通常販売されている「うずまきパン」のカット前のパンだと思われます。
ちなみに、コストコではこの倍のサイズ(約40cm)のものが売られていたという情報もありましたので、コストコに行った際には確認してみようと思います。
共通する特徴からわかる「うずまきパン」の条件
各社の「うずまきパン」を比べてみると、それぞれにユニークな特徴がありつつも、共通する部分もありました。まずは、商品名の「うず巻(き)」の“巻”が漢字である点です。個人的な感覚だと「うずまき」とひらがなにした方が、かわいいのではないかと思いますし、差別化のためにもよさそうなのですが、どうなんでしょう。
続いて、パンがすべて右巻き(時計回り)を正面として、パッケージされているという点です。長年愛されている商品なので、うずまきパンが左巻きだと、違和感を覚える方もいらっしゃるのでしょうか。
そして食感です。どれも、クリームに含まれる砂糖の“ジャリジャリ感”があるのです。この独特の食感は、砂糖が完全に溶けきらずに残っているために生まれるもの。柔らかいパンとクリームの中で、ジャリジャリとした食感が心地よいアクセントになっています。
宮古島市 伊良部島の「まるそうパン」にルーツが
そもそも、なぜ沖縄のパンメーカーが同じような商品を作り、さらに各社に同じような特徴があるのでしょう? そのルーツを調べると、宮古島市の伊良部島にたどり着きました。うずまきパンの元祖は、「まるそうパン」が1967年頃に生み出した「うずまきサンド」なんだそうです。伊良部島で60年以上にわたり変わらぬ味を守り続けており、公式サイトでも「元祖!伊良部島のうずまきパン」とうたっています。
最初は伊良部島でしか手に入らなかったこのパンは、1987年頃に伊良部島と宮古島を結ぶフェリーターミナルの売店で販売されるようになったことをきっかけに、口コミで広まりました。
さらに地元メディアに取材・放送されたことで、注文が殺到。宮古島全体へとその人気が拡大し、今では沖縄本島の大手パンメーカーたちがこぞって製造するまでに至りました。
つまり、元祖が「うずまきサンド」という名前だったので、それと被らないように商品名の“巻”を漢字にするなどしつつも、商品の特徴であるジャリジャリ感や右巻きの特徴は踏襲したのではないか……と筆者は考えました。
沖縄らしい食文化の象徴
そもそも「うずまきパン」をはじめ、沖縄の菓子パンは甘く大きなものが多いのですが、それは夏の過酷な気候やサトウキビの生産など、沖縄の環境が要因となっていると考えられます。甘く高カロリーなパンは暑い中で活動するための栄養源になり、大きいサイズは家族や友人と分け合いやすく、サトウキビ生産もしているので砂糖も入手しやすいという背景があります。
そこに「うずまき」という見た目の特徴と、ジャリジャリとした食感の特徴が加わり、沖縄で長く愛されるパンになったのではないでしょうか。
沖縄を訪れることがあったら、ぜひコンビニやスーパー、空港の売店で「うずまきパン」を手に取ってみてください。その独特の「ジャリジャリ感」と甘味で、旅の疲れも癒やされるはずです。
<参考>
まるそうパン(公式サイト)
超熟ブランド商品の取り扱いについて - よくあるご質問(オキコ)
タカバシ ショウヘイプロフィール
2005年より生ビールブログを開始。2013年の沖縄移住後は地元密着型のランチブログを開始し、10年以上運営中。沖縄での暮らしの中で見つけた、食の楽しみと各地のグルメ情報などを発信している。All About ビールガイド。(文:タカバシ ショウヘイ(フードブロガー))