SNS時代、中高生にすすめたい「シンプル習慣」とは……東大合格者100名の聖光学院校長が語る

1

2025年07月27日 21:20  All About

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

All About

あなたのお子さんはスマホに夢中になっていませんか? 変化の激しい時代の中で人生の支えとなる豊かな内面を育むために、「ある習慣」が役立つかもしれません。※サムネイル画像:PIXTA
あなたのお子さんはスマホに夢中になっていませんか? 中高生時代にSNSを眺めてばかりいると、語彙力や思考力を育むことができません。

全国有数の進学校として知られる聖光学院の校長・工藤誠一先生は、著書『VUCA時代を生き抜く力も学力も身に付く 男子が中高6年間でやっておきたいこと』の中で、VUCA(ブーカ ※不確実な)時代に必要な真の教育について語っています。

今回は本書から一部抜粋し、子どもの思考力と人生の支えを育むための「ある体験」の重要性について紹介します。

中高時代にやっておいてほしい「体験」

内面が複雑になる中高時代には、文学作品に触れ、語彙力をとにかく高めてほしいと思っています。なぜなら、文学作品には人間のもっている美しさはもちろん、邪悪さも洗いざらい表現されているからです。

文学作品を読むことで、自分の中の負の感情にも居場所が与えられ、自分の感情の説明がつくようになるのです。

良い部分も悪い部分も両方抱えて生きていくのが人間らしさです。文学作品を読むことは、そのような自分の複雑さを受け入れるための、大きな助けになります。

幸福観や人生観などといった価値観は、言葉で規定されるものです。文学作品を読んで抽象的な語彙を豊かにすることは、価値観を豊かにすることにつながります。

そのため、中高生にはできるだけ明治の文豪や海外の近代文学などの作品を読んでほしいのですが、年齢的にも親から与えるのは非常に難しい時期です。

家庭でできる「きっかけ」づくり

家庭でできるのは、子どもが文学作品に自然と手を伸ばすきっかけをつくることです。それには、本の置き場所づくりがおすすめです。小さな本棚やテーブルなど、気軽に本を置けるスペースをつくり、ご自身の読んだ本を置いてはいかがでしょうか。

また、家族旅行に出かけた際に、作品の舞台になった場所や、その土地出身の作家の文学館などがあれば立ち寄ってみるのも良いでしょう。

私も、中1生との研修旅行で長崎に行った際には、長崎を舞台にした遠藤周作の小説『沈黙』の一節を紹介しました。私はこういうとき、200人いるうちの2、3人でも興味をもってくれたら良いという気持ちで話しています。

それぐらい、人に何かを薦めるのは難しいことです。

もし、子どもが自分から本を読み始めたら、無理に最後まで読ませようとしないでください。名作が万人に響くとは限りませんし、時間が経ってからもういちど読んでみて、こんなに素晴らしい内容だったのかと思い直すこともあります。

ダメなら次、ぐらいの気持ちで気軽にやっていきましょう。

SNSを眺めるばかりでは「単純化」してしまう

学業以外の時間には小説を読むよりもSNSを眺めるのが現代の風潮です。しかし、文学作品や芸術のもつ複雑性と比べると、SNSに流れる言葉は極めて単純なものが多く、白黒どちらかしかないことも多いのが現状です。

そうした単純な言葉に触れ続けることで思考もまた単純化、先鋭化し、周囲への影響を考えない短絡的な言動につながっていくことは、SNSを巡る社会問題からも明らかではないでしょうか?

子どもはもちろん、大人もスマートフォンを手から離して、リアルな体験のほうへ戻していくべきときに来ているのではないかと感じています。

長い年月を生き残ってきたクラシックな芸術や文学作品には、時代を超えた普遍的な価値があります。そうした価値に、多感な中高生のうちに触れる体験は、内面を豊かにするだけでなく、その子の人生を支えてくれるものになり得ます。

変化の激しい時代を生き抜く助けにもなる

自身を振り返っても、学生時代に上野でドラクロワの作品を見たことは、人生を支える一部になっています。描かれた人物の迫力が心に直接飛び込んでくるような感覚を、この年齢になってもしっかり覚えているのです。

こうした鮮烈な体験ができるのも、感性の豊かな中高生の時期ならでは。中2、3のあたりでうまく種蒔きをしておくことができれば、高校生にもなると、作品の世界をより深く掘り下げていくようになります。

人生につまずいたときにも、芸術は力になってくれます。

時代を超えて残る優れた芸術に触れたときに、人は、生の儚さに気づくものです。今抱えている悩みもやがては過ぎていくこと、短い人生だからこそ、自分が何を大切にするべきか考える必要があることを、芸術は教えてくれます。そんな体験が、あなたにもありませんか?

変化の激しい時代を生き抜くうえで、自分の人生を支えてくれる芸術の存在は、これからますます重要になるでしょう。

子どもたちにはぜひ、これからの時代を生きる糧として、芸術に触れる習慣を手渡してあげたいものです。

工藤誠一(くどう せいいち)プロフィール

1978年に母校の聖光学院中学校高等学校に奉職。事務長、教頭を経て2004年、校長就任、11年から理事長にも就任。さゆり幼稚園園長、静岡聖光学院理事長・校長を兼務。神奈川県私立中学高等学校協会、私学退職基金財団、神奈川県私立学校教育振興会、横浜YMCAの各理事長、日本私立中学高等学校連合会副会長などの要職を務める。2016年、藍綬褒章を受章。
(文:工藤 誠一(聖光学院校長))

    アクセス数ランキング

    一覧へ

    前日のランキングへ

    ニュース設定