“最大9割の売上”を過大計上──「AI GIJIROKU」のオルツ、循環取引発覚 売上高119億円、広告宣伝費115億円を虚偽申告

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2025年07月28日 12:40  ITmedia NEWS

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 議事録ソフト「AI GIJIROKU」などを提供するAIスタートアップ企業のオルツ(東京都港区)は7月28日、同社製品の売り上げについて過大計上していた事実を確認したとして、第三者委員会の報告書を公開した。2021年6月〜24年12月の間、売上高119億900万円、広告宣伝費115億5700万円、研究開発費13億1300万円を過大計上していた。同社は4月に過大計上の可能性を発表。開催予定のイベントなどを中止して調査していた。


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 オルツは、AI GIJIROKUの販売パートナーから受注した売り上げのほとんどを循環取引していた。広告会社に広告宣伝費、研究開発事業者に研究開発費の名目でそれぞれ資金を支出。その後、広告会社を経由する形で一部の販売パートナーにこの資金を支払っており、最終的には販売パートナーがオルツにその資金を支払うことで、売上代金を回収。これにより、売上高などを過大計上していた。


 オルツがこのような循環取引を始めたのは、AI GIJIROKUの提供開始直後である20年4月ごろ。元代表取締役の米倉千貴氏の指示により、AI GIJIROKUのライセンス販売先に、ライセンスの購入費などに相当する金額以上の資金を、営業支援金などの名目で提供する取引を検討したのがきっかけだった。


 21年6月以降には、米倉氏が資金移動やその事務手続きの方法を記載した資料を作成。広告宣伝費として支出した資金を原資として、販売パートナーへの売掛金を回収していくようになり、関与する販売パートナーや広告会社の数が増えていった。その後、広告宣伝費の支出先は1社に1本化し、広告宣伝費の増大を抑えつつ売上を増やす目的で、研究開発費の名目で資金を循環させる対応などを25年まで行っていた。


 循環取引について調査した第三者委員会は、今回の事案が起きた原因について「売上の拡大及び上場を強く志向していたこと」「経営トップに求められる誠実性が欠如していたこと」「実効性のある内部統制・ガバナンスが構築されなかったこと」「会計監査人らに対するオルツの説明・対応が不適切であったこと」などを挙げている。


 なお、28日付で米倉氏は代表取締役社長を辞任。取締役CFOを務めている日置友輔氏が新たに代表取締役社長に就いた。米倉氏は「決算の内容を大幅に修正せざるを得ない状況に至ったことを踏まえ、株主、市場関係者、従業員および取引先の皆さまなどに対し多大な混乱と不安をお掛けしたことの責任の重大性に思いを致し、当社の経営の最高責任者としての責任を明確にするため、辞任すべきと判断した」と述べている。


 なお、第三者委員会は日置氏の関与も指摘している。オルツは「(日置氏)自らの進退を含めて当社の抜本的な組織改革を進めるため、まずは早急に臨時株主総会を開催するなど、代表取締役としての責務を果たすことが必要であると判断し、代表取締役に就任することになった」と説明している。



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