警視庁の事件対応を巡る訴訟で和解が成立し、記者会見する冨田真由さん=28日午後、東京都千代田区 東京都小金井市で2016年、音楽活動をしていた冨田真由さんがファンの男に刺され重傷を負った事件で、警視庁の対応に不備があったなどとして、冨田さんと母親が都などに損害賠償を求めた訴訟は28日、東京地裁(堀内元城裁判長)で和解が成立した。冨田さん側によると、都側が見舞金を支払い、再発防止に向けた対応を強化する内容。
冨田さんを襲った受刑者の男(36)=殺人未遂罪などで懲役14年6月が確定=に対する訴訟の判決も同日あり、堀内裁判長は請求通り計約7600万円の賠償を命じた。
訴訟で冨田さん側は「『殺されるかもしれない』と訴えていたのに必要な警備を怠った」と主張。都側は、具体的な危険が切迫している状況を事前に認識することはできなかったとしていた。
冨田さん側の代理人弁護士によると、和解条項には「警視庁は事案の危険性および切迫性の的確な判断と組織的対応の強化措置を講じるなど、時代の流れに即した対応に努める」と明記された。
事件は16年5月に発生。当時20歳だった冨田さんはライブ会場付近で男に首や胸などを刺され、一時意識不明の重体となった。男は17年に実刑が確定。冨田さんらが19年、男や都などに計約7600万円の賠償を求め提訴していた。
記者会見した冨田さんは「つらい、苦しい9年だった。和解の中で警視庁が被害者の声に真摯(しんし)に耳を傾けることを約束してほっとしている」とコメントした。
警視庁の話 事前に相談を受けながら被害防止できなかったことを重く受け止め、再発防止に向け取り組む。

東京地裁