國學院大が箱根駅伝初制覇へ向け地固め中 ホクレンDC出場の位置づけとエース・青木瑠郁が見せた意地

0

2025年07月28日 18:10  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

昨年度の3大学生駅伝では出雲駅伝、全日本大学駅伝とチーム史上初の2冠を達成した國學院大。今季は最大の目標である箱根駅伝初制覇に向け、シーズン前半は選手個々が競技会で研鑽を積んでいる。

毎年夏恒例のホクレンディスタンスチャレンジ(DC)は、國學院大が駅伝シーズンに弾みをつける位置づけで臨む記録会。日程や気候が例年とは異なるなか、エース青木瑠郁は6月、7月と課題を持って臨んだ。

前編:箱根駅伝初制覇へ向かう國學院大 中間報告 

【國學院にとって大きな意味を持つ網走でのふたつの大会】

 遡ること6月――北海道を舞台とした陸上競技・中長距離のシリーズ戦、ホクレン・ディスタンスチャレンジ(以下、ホクレンDC)の第1戦深川大会で、國學院大学の青木瑠郁(4年)、辻原輝(3年)が5000mで快走を見せた。

 同じレースには山本歩夢(現・旭化成)、中西大翔(現・旭化成)、伊地知賢造(現・ヤクルト)といった國學院大の歴代を彩ってきたランナーたちも出場。

「自分が在籍していたなかで、大翔さん、伊地知さん、歩夢さんは、5000mの記録を持つ尊敬する先輩。その先輩方と走るので、國學院記録はすごく意識していました。(記録更新が)先輩に対する恩返しなのかなと思いながら走りました」

"國學院同窓会"のようなレースで、こんな思いを持ってレースに臨んだ青木は、歴代のエースたちに先着し、見事に日本人トップの2着でフィニッシュ。自己記録を一気に14秒も更新し、山本が持っていた國學院記録をも塗り替えて、13分30秒42の新記録を打ち立てた。

 一方、辻原も終盤に粘りを見せて自己記録を8秒更新し、13分35秒30で組9着と好走した。

 この大会に出場した選手は、7月の日本選手権の申込資格記録(13分38秒)をターゲットとする者が多かった。青木と辻原も日本選手権の出場資格をクリアしたわけだが、彼らの視線の先にあったのは、その日本一を決める舞台ではなかった。

「一番は、来月の網走の10000mがターゲットになる。13分38秒を切るのは最低限で、10000mにつながる走りができればいいなと思って走りました」

 青木はレース後にこんなことを話していた。7月上旬の日本選手権5000mとホクレンDC第5戦網走大会の10000mとの両方に出場することももちろん可能だったが、青木が重きを置いていたのは後者のほうだった。

「去年しかり一昨年しかり、平林さん(清澄、現・ロジスティード)が網走で27分台を出して、チームの雰囲気がすごく上向きになった」

 青木がこう話すように、ホクレンDC網走大会では、一昨年に平林が27分55秒15の國學院記録を打ち立て、山本が5000mで当時の國學院記録(13分34秒85)をマーク。そして昨年も、平林が自身2度目の27分台で走った。網走でのエースの活躍がその後、一気にチームを勢いに乗せた(出雲駅伝、全日本大学駅伝2冠)。

「今年は自分が網走で27分台を出して、國學院記録を更新したい。監督との相談になると思うんですけど、自分としては(日本選手権ではなく)網走に合わせたいと思います」

 青木はこのように意気込んでいた。

 また、同地で開催される関東学生網走夏季記録挑戦競技会にも國學院からは例年多くの選手が出場している。ここで新戦力の台頭や故障明けの選手の復活があり、前半戦の終わりにチームとして存在感を示していた。

「僕は10000mのタイム(好記録)を持っていないので、そこで1回出しておきたい。毎年結構いいタイムが出ているので、僕はそこで27分台を狙いたいなと思っています」

 そう語る辻原も、網走でまた一段強くなった姿を見せつけるつもりだった。

 ホクレンDCも関東学生網走夏季記録挑戦競技会も、いち記録会にすぎないかもしれないが、國學院大にとっては、チームが勢いづくために、絶対に欠かすことのできない大会だった。

【北海道らしからぬ過酷な環境下で】

 北海道の東部に位置する網走は、同市のホームページによると7月の平均気温が18.9度で、平均最高気温でも22.9度となっており、7月でも猛暑の関東地方と違って過ごしやすい。例年好記録が生まれるのも頷ける。

 ところが、今年は暖かく乾いた空気が流れ込む「フェーン現象」が発生し、ふたつの競技会が行なわれた7月19日と20日は、北海道らしからぬ異常な蒸し暑さに見舞われた。

 両日とも日中は30度を超え、過酷な条件のもと選手たちはレースに臨まなければならなかった。

 7月19日、國學院大から青木と野中恒亨(3年)が出場した、ホクレンDC網走大会の10000m最終組は19時30分にスタートした。時折雨が落ち、気温は24度と日中に比べればだいぶ下がったが、それでも蒸し暑さは残り、多少マシになった程度だった。

「明日も同じような気候のなかここで記録会が行なわれ、(國學院から)タイムを狙いにいく選手が多く出場します。僕がここで27分台を出せば、チームメイトに安心感を与えられる。"自分も記録を出せる"と思ってもらえるんじゃないか。自分がタイムを出すことはすごく重要なことだと思っていました」

 求めていた涼には恵まれなかったものの、青木はこのような使命感を持ってレースに臨んでいた。

 スタート直後から野中が積極的に前方でレースを進め、青木は後方に位置取った。序盤から集団はふたつに分かれたが、ふたりとも速いほうの集団に食らいついた。

 レースは3000mを8分20秒前後で通過し、27分台を狙えるペースで進んだ。しかし、3000mすぎに野中が遅れをとってしまった。

 青木は、先輩の平林とともに外国人勢のハイペースに食い下がった。

「平林さんが絶好調だったので、ここで勝てば箱根の2区でも(平林を)超えられるんじゃないかな。昨年のチームを超えるためには、僕が平林さんに勝つことがひとつ大事なところなのかなと思っていました」

 だが、やはり先輩は強かった。平林が27分45秒ペースで進める一方で、青木は5000mを前に離されてしまった。青木の5000mの通過は13分59秒とギリギリ27分台が狙える位置にいたものの、単独走になり、記録を狙うには少し厳しい状況になった。

「監督からは『5000m以降、しっかりと粘るのが一番大事だぞ』と言われていて、本当にきつくて、気持ちが折れそうになった時には"自分が2区を走るんだ"っていう気持ちを大事にしました」

 エース区間を走りたいという一心で、単独走になってからも淡々とペースを刻み、青木は28分48秒55の8着でフィニッシュ。日本人では近藤幸太郎(SGH)と平林に次いで3番目だった。

「記録は、最低限のタイムも出せなかったんですけど、本当にやっちゃダメなのが、同じ学生に負けること」

 27分台は出せずとも、せめてもの意地だったのだろう。岡田開成(中央大2年)や山崎丞(日本体育大4年)には勝利し、日本人学生トップの座は守った。

 なお、野中は29分14秒21で16着。一度離れてからも大崩れせず29分前半にまとめたが、自己記録(28分17秒98)によりも1分近く遅く、悔しい結果に終わった。

つづく

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定