「ローファー」世界的トレンドに、小売店では完売状態続き

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2025年07月28日 18:20  Fashionsnap.com

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 通学靴からラグジュアリーブランドが提案するトレンドアイテムまで、世界中で長年親しまれてきた定番シューズ「ローファー」。そんなローファーの人気が今、再燃している。注目すべきは、オーセンティックなモデルからスニーカーソールをドッキングしたハイブリッドモデルまで、幅広いデザインが支持を集めていることだ。  1980年代からローファーを展開してきた「ドクターマーチン(Dr.Martens)」では、定番ローファー「エイドリアン(ADRIAN)」の売上が前年対比2桁増で推移。スニーカーショップ「アトモス(atmos)」でも、近年各ブランドから続々と登場しているローファー型スニーカーカテゴリーの売上やシェアが拡大傾向にあるという。

2020年代に入りじわじわ人気が上昇、加速のきっかけはパリコレ
 古くは1950年代アメリカの「アイビールック」として人気を博し、1960年代のイギリスでは、ジャマイカからの移民によって広まったサブカルチャー「ルードボーイ」のファッションスタイルとして愛用されるなど、ファッション・ストリートカルチャー文脈から通学用まで、各時代の人々に多様な形で愛されてきたローファー。歴史の中で何度かトレンドの波はありつつも、近年は特に目立たない存在だったが、ここ数年で人気が上昇。現在は、クラシックタイプから、ラバーやスニーカーソールのボリュームタイプ、ローファー見えするサボまで、ローファー型シューズ全般がトレンドになっている。
 昨今のローファー人気再燃のきっかけは諸説あるが、ドクターマーチンの担当者は、「アメリカではインフルエンサーのエマ・チェンバレン(Emma Chamberlain)の影響で、2021年に一度ローファーの大きなトレンドが生まれた。直近では、ストリートやファッションカルチャーからの影響で、ヨーロッパと日本を中心にローファー人気が高まり、アメリカでも再び人気が再燃している」と話す。

 2020年代に入り、「プラダ(PRADA)」の厚底ローファー「モノリス(Monolith)」や、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」の「ラグ ローファー(Lug Loafer)をはじめ、さまざまなラグジュアリーブランドが新型ローファーを発表。日本国内でも、2021年7月に「アキコアオキ(AKIKOAOKI)」がスニーカーソールを搭載したローファーを発売し支持を集めるなど、複数の要因が世界的な人気を後押ししたと考えられる。
 なかでもローファー人気の急上昇に最も貢献したのは、ローファー型スニーカーの登場だろう。ローファー型スニーカーとは、ローファーデザインのレザー製のアッパーにスニーカーソールを合わせた、革靴のような見た目とスニーカーのような履き心地を兼ね備えたシューズを指す。
 アトモス シニアディレクターの小島奉文氏は、「2024年1月のパリファッションウィークで『ジュンヤ ワタナベ マン(JUNYA WATANABE MAN)』が発表した『JUNYA WATANABE MAN × New Balance 1906L』が大きな話題になり拡散されたことが、ローファー型スニーカー人気が世界的に加速したきっかけの一つではないか」と言及。「ありそうでなかったプロダクトとして、マーケット的に目新しさもあったのではないか」と分析する。
ローファー人気の鍵は「ブランドの独自性」
 世界的なローファー人気の高まりを受け、ファッションやシューズ、スポーツブランド各社は、近年相次いでローファー型の新作を発表。売れ行きはいずれも好調なようだ。
 2023年秋冬頃から日本国内でのローファートレンドの到来を実感しているというドクターマーチンでは、2024年対比の売上が非常に好調に推移。なかでも、定番モデルの「エイドリアン タッセルローファー(ADRIAN TASSEL LOAFER)」が好調で、アイコンカラー「アルカディア チェリーレッド(ARCADIA CHERRY RED)」や、イギリス独特の2トーン仕上げの新色(イエロー、ネイビー、シルバー)の人気が特に高いという。「ストリートカルチャー系の若者を中心に、男女問わず支持されている」(ドクターマーチン担当者)。

 需要の高まりを受け、今年6月には「エイドリアン(ADRIAN)」の日本限定コレクションを発売。「東京のリミックス感」をテーマに、赤色のステッチをソールに施したタッセルローファーや、シルバーのハードウェアにウェルトステッチを隠したデザインのスナッフルローファーなど全4型を展開し、非常に良い反応を得ているそうだ。

 スニーカー型ローファーを豊富に取り扱うアトモスでは、同カテゴリーの売上やシェアが2024年対比で拡大。「既存のスニーカーファンに加えて、ファッション好きな若年層の男女やビジネスカジュアル層まで、非常に幅広くニーズがある」と小島氏が語るように、その支持層の広さがうかがえる。
 直近1〜2年間で、「プーマ(PUMA)」や「ホカ(HOKA)」など各社がローファー型スニーカーを展開。特に人気が高いのは、トレイルランニングやランニングシューズといったブランドの象徴的ソールを組み合わせた、独自性のあるデザインだという。
 アトモスでは、現在ほぼ全てのスニーカー型ローファーモデルが完売状態だが、なかでも特に売れ行きが好調だったのは、2000年代のランニングシューズ「1906」のデザインを搭載したニューバランスの「1906L」シリーズと、「エア マックス サンダー(AIR MAX SNDR)」のエアクッションソールを採用した「ナイキ(NIKE)」の「ナイキ W エア マックス フェノメナ SWDC(NIKE W AIR MAX PHENOMENA SWDC)」だ。
 「ナイキのエア マックス フェノメナは、おそらく世界で一番最初にアトモスが紹介したと思われるが、世界中でニュースになり、これまでになく大きな話題になった。SNS上では好き嫌いの賛否両論があったが、その反響の大きさもあり、ファーストカラーのブラックは即日完売した」(小島氏)。

 フットウェアブランド「ビルケンシュトック(BIRKENSTOCK)」でも、2023年にコインローファーのデザインにクロッグを掛け合わせたハイブリットモデル「ネープルズ(NAPLES)」を発売した。発表直後からスタイリストやファッション媒体編集者などから注目を集め、店頭でも好調に稼働。今季はさらに大きく売上を伸ばしており、海外でもヒットモデルの一つになっているという。
 ネープルズは、同ブランドのアイコンクロッグ「ボストン(BOSTON)」と比較して、ストリートスタイルでもきれいめスタイルでも合わせやすいデザインであることから、ファッション感度の高い20〜30代の男女を中心に支持を獲得。トレンドのローファーを、ビルケンシュトックらしいエフォートレスなクロッグスタイルで提案している点も評価を得ているといい、やはり「ブランドの独自性」が人気を押し上げる要因の一つになっているようだ。
 今年6月にはデザインをアップデートし、従来のメンズに加えてウィメンズでも展開をスタート。剥き出しになっていたコルクのフットベッドがアッパーと一体になって覆われたことで、よりローファーらしいデザインに進化し、さらに売上の伸長に繋がっているという。

 また8月1日には、「ジョーダン ブランド(JORDAN BRAND)」が厚底のローファー型ミュール「エア ジョーダン ミュール(AIR JORDAN MULE)」の発売を予定しているほか、今秋には「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」からも、「ヌプシ シューズ コレクション(NUPTSE SHOES COLLECTION)」の新作としてローファーが初登場する。
 「2026年度以降も、引き続き各社からローファー型スニーカーの新型や新色がリリース予定となっており、ファッション層も取り込んだ新たな定番カテゴリーとなりそう」(アトモス 小島氏)、「秋冬シーズンには、ネープルズとは趣の異なるローファー風シューズも登場予定」(ビルケンシュトック)、「今後も定番はもちろん、シーズンごとにブランドらしいアップデートを施した新商品を展開する」(ドクターマーチン)と、ローファートレンドの盛り上がりはしばらく継続が見込まれる。

 さらに、アトモス 小島氏によれば「ローファー型に限らず、レザーシューズのアッパーに各社の象徴的なソールをマッシュアップしたハイブリッドモデルも人気」だという。今後はローファーのみならず、ハイブリッド型レザーシューズ全般にさらなる注目と人気が集まりそうだ。

■アトモス:公式オンラインストア ■ドクターマーチン:公式オンラインストア ■ビルケンシュトック:公式オンラインストア

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