6回1失点でも評価戻らず…菅野智之「市場価値急落」で“崖っぷち”に立たされた理由

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2025年07月29日 16:21  日刊SPA!

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「Baltimore Orioles」公式Xアカウントより引用
 メジャーリーグのトレード期限が数日後に迫っている。
 この時期はシーズン終盤のラストスパートとポストシーズンに向けて最後のピースを埋めようと“買い手”に回る上位チームと、来季以降を見据えて“売り手”に回る下位チームとの間でトレードが活発化する。

 買い手は即戦力を、売り手は将来有望な若手を求め、チームの将来を左右する大型トレードに発展することも珍しくない。ただし、難しい判断を強いられるのが、勝率5割前後をさまようチームだ。状況を見誤ってしまうと、ポストシーズン進出と有望な若手選手の両方を一気に失うこともある。

◆菅野智之の「トレードの可能性」は

 現在、売り手に回っているチームの一つが、開幕から低迷するオリオールズ。投打で多くの主力選手が精彩を欠く中、シーズン序盤に孤軍奮闘の働きを見せたのが、35歳のオールドルーキー、菅野智之である。

 オープン戦で快刀乱麻の投球を見せた菅野は、4月に3勝を挙げる鮮烈なスタートを決めると、5月に1勝、6月にも最初の登板で勝利を飾り、早くもシーズン5勝目を手にした。その時点の防御率は3.04と、チームで最も信頼できる投手として君臨。安定した投球ができる先発投手を求めるチームにとっては、格好の選手として名前が挙がっていた。

 ところがその後、放出候補の一人として注目を集めた菅野は突如、不調に陥る。6月以降は、5回を持たずノックアウトされる試合がほとんどで、2点台目前だった防御率は、6月末までに4点台に突入。現在は4.38まで悪化している。

 いまだ放出候補の一人として名前は挙がっている菅野だが、その市場価値は大幅に下落。オリオールズの将来を担うような若手有望株とのトレードが実現する可能性は極めて低くなった印象だ。

◆トレード期限前に6回1失点の快投も…

 それでも菅野は失った信頼を少しでも取り戻そうと、前進を続けている。現地27日(日本時間28日)のロッキーズ戦で、後半戦2度目の先発マウンドに登ると、6回1失点の快投を見せたのだ。

 初回からエンジン全開のパワフルな投球で、ロッキーズ打線を4安打、2四球に抑え込み、自己最多タイとなる8個の三振を奪う力投。自身の市場価値を回復させたようにも見えるが、冷静に考えれば、相手は今季50個以上の借金を抱える最弱チームである。

 トレード期限を前にした最後の登板で、下落基調だった評価に歯止めをかけるのが精いっぱい……といったところだろう。

◆来季は「巨人復帰」の可能性も?

 このままでは、積極的に菅野の獲得に動くチームは考えづらく、ア・リーグ東地区では唯一ポストシーズン圏外にいるオリオールズに残留する可能性が高い。もちろん、まだ買い手チームへの移籍の可能性は残されているが、現時点で先発ローテーションを確約するような上位チームへの移籍はほぼゼロだろう。

 昨年オフに結んだのは単年契約だったこともあり、もし菅野がこのまま残り2か月間をオリオールズでプレーすることになれば、来季もメジャーでプレーするかは微妙なところだ。

 年齢的にも、1年で見切りをつけて帰国、古巣の巨人復帰というシナリオが十分考えられる。

 今季の巨人は、新エースの戸郷翔征が開幕から大乱調。防御率は5点台と散々な投球続きで、先発ローテーションすら守れず、1か月以上も一軍のマウンドから遠ざかっている。

 チームも阪神に独走を許しており、巨人愛の強い菅野なら1年で古巣に戻るという選択肢を視野に入れていてもおかしくないだろう。

◆リリーフ転向はあり得るのか

 一方で、仮に来季もメジャーでのプレーにこだわるなら、リリーフ転向が一つの案として浮上する。菅野の元同僚でもある上原浩治氏が、メジャー屈指の守護神として大活躍を収めた例もあるからだ。

 菅野と上原氏は、どちらも30代半ばで巨人からオリオールズに移籍。ともに針の穴を通すような高い制球力を持つなど共通点が多い。38歳にしてワールドシリーズの胴上げ投手にまで上り詰めた大先輩の足跡をたどる選択肢を思い描いていても不思議ではない。

◆“第二の上原浩治”となる可能性も

 ただ菅野と上原氏を大きく隔てる事実もある。それが、巨人時代のリリーフ経験の有無だ。

 巨人時代の2007年に先発からリリーフに転向し、2009年にメジャー挑戦を果たした上原氏。守護神として防御率1.74、32セーブの活躍を見せ、巨人を5年ぶりとなるリーグ優勝に導いた。

 一方で、巨人時代の菅野は先発一筋。不調だった時期にリリーフ転向の噂もあったが、結局、実現には至らなかった。

 菅野は球速と球威では、同時期の上原氏を上回っている。それだけに、メジャー公式球に対応を見せ、さらなる制球力アップを叶えれば、“第二の上原浩治”となる資質はあるだろう。

 果たして、菅野は来季もメジャーで先発にこだわるのか、それともリリーフ転向も視野に入れるのか、はたまた古巣復帰のシナリオを描いているのか……。

 いずれにしても、まずは今月末のトレード期限を待ちつつ、残り2か月間でシーズン序盤に勝ち取った信頼を回復させたいところだ。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。

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