10年のクイーンSを制したアプリコットフィズ(写真は同年2月クイーンC、撮影:下野雄規) 歴代最多のJRA重賞366勝を誇る武豊騎手だが、その中で最も斤量が軽かったのは? この問いに即答できる人は相当なユタカ通だろう。答えは4レースあって、94年朝日チャレンジCのツルマルガール、10年クイーンSのアプリコットフィズ、12年セントウルSのエピセアローム、22年愛知杯のルビーカサブランカの52kg。今回はその中から10年クイーンSを振り返りたい。
この年のクイーンSは単勝オッズ10倍未満が5頭もいたように、かなりの混戦模様だった。1番人気は同年のヴィクトリアマイル2着のヒカルアマランサス。僅差で同年のクイーンC覇者のアプリコットフィズ、前々年の秋華賞3着馬のプロヴィナージュが続く。さらに少し離れて芝ダート二刀流のブラボーデイジー、同年のチューリップ賞を制したショウリュウムーン。単勝オッズ10倍以上にも実力馬が並び、どの馬が勝っても不思議ないムードだった。
レースは淡々と流れた。伏兵マルティンスタークが逃げて、前半1000mは60秒6。重賞でこれだけペースが緩むと、当然ながら前有利になる。番手追走のアプリコットフィズが3角過ぎに先頭へ。これを目標にロスなく運んだプロヴィナージュ、ショウリュウムーンが追い上げを図るが、なかなか差が詰まらない。そして1番人気のヒカルアマランサスは伸びを欠いている。対照的にアプリコットフィズの脚色は最後まで衰えず、最後は2着のプロヴィナージュに1馬身差をつけてゴール。テン乗りだった武豊騎手の好騎乗も味方に、クイーンCに続く2つ目のタイトル獲得を果たしたのだった。
武豊騎手は昨年のクイーンSにボンドガールで参戦。斤量が51kgだったため、記録更新の期待がかかったものの、惜しくも2着だった。今年は56kgのシングザットソングで参戦。残念ながら!? 記録には関係ないが、その手綱捌きに注目したい。