東京地裁=東京都千代田区(EPA時事) 東京電力福島第1原発事故で被ばくしたのは国や東電の事故対応が原因などとして、井戸川克隆・元福島県双葉町長(79)が国と東電に計約7億5500万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、東京地裁であった。阿部雅彦裁判長は、不動産への損害や避難生活に対する慰謝料などとして東電に約1億円の支払いを命じる一方、国への請求は棄却した。
井戸川氏側は被ばくの影響で甲状腺の萎縮など健康被害を受けたと主張していたが、阿部裁判長は、井戸川氏が国が定めた年間許容量を超えて被ばくしたとは認められず、因果関係を裏付ける客観的な証拠もないとして退けた。
その上で、「国が津波対策を東電に義務付けていたとしても、同様の事故が発生した可能性は相当にあった」と判断。事故後に国が放射線量や避難に必要な情報を共有しなかったとする主張についても、避難状況に顕著な変化が生じたとは認められず、国の事故対応と井戸川氏の損害に因果関係はないとして国の賠償責任を認めなかった。