気候変動による都市の酷暑化が進む中、企業・行政・地域団体が連携して「原宿-3℃はじめました。」プロジェクトが立ち上がった。花王が主体となり、東急不動産、東急バス、小杉湯原宿を運営するゆあそび、WITH HARAJUKU、渋谷マークシティ、原宿竹下通り商店会、原宿表参道欅会、渋谷区(後援)などが協力している。
プロジェクトのイメージキャラクターには、アーティスト・きゃりーぱみゅぱみゅ氏が就任。街全体で原宿を3度涼しく感じさせることを目標に掲げ、7月17日から8月3日までの18日間の期間限定で、多彩な暑熱対策施策を展開するという。
「冷却シート・ミストのように、日常的に暑熱対策アイテムを取り入れるライフスタイルを、若年層から広げていきたいと思っています」
そう語るのは、プロジェクトの主催企業、花王 ヘルスビューティケア事業部門 商品事業開発センター センター長の高鍋英信氏だ。同社は2024年の東急プラザ原宿「ハラカド」で開催された「ヒヤカド」に続き、2025年は、東京・原宿の街全体での取り組みに昇華させ、若者をターゲットにした暑熱対策プロジェクトを企画した。その狙いを高鍋氏に聞いた。
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●都市型避暑地プロジェクト 花王の狙いは?
東京都心の夏は年々厳しさを増している。気象庁のデータでは、7月の最高気温はこの10年で約3度上昇。訪日外国人観光客も増加する中、「暑さによる敬遠」という新たな課題が顕在化しつつある。
地球温暖化を超え、「地球沸騰化」ともいわれる中、日本各地で35度を超える猛暑日が常態化。熱中症で救急搬送されるケースも後を絶たない。こうした中で花王が取り組むのが、日常生活の中で無理なく取り入れられる暑熱対策の開発と啓発だ。
●-3度の体感温度を追求──快適さと健康の両立とは
花王が提案するのは、単に冷やすのではなく、「体感温度を3度下げる」という快適性と安全性を両立したプロダクトだ。例えば、首にかける冷却シートは、冷蔵庫で冷やさなくても使えるため、外で仕事をする人も使いやすい。小分けに袋詰めされているのでシェアもできる。
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「冷やしすぎは、暑熱順化(身体が暑さに慣れること)を妨げてしまう恐れがあります。−3度は、身体に慣らしながら、快適に活動できる温度帯として設計しています」(高鍋氏)
これは避暑地や高原の涼しさに近い感覚で、無理なく日常に取り入れられる仕様だ。
●SNS世代の若者を起点に広げる涼の習慣化
若者に訴求するに当たって、感度の高い層が集まる原宿を発信拠点とした。
「若者は流行を取り入れるのも早いし、SNSなどを通じた拡散力も高いのです。彼らを起点に、暑熱対策をするのが当たり前という文化を育てていきたいという狙いがあります」
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数年前、日焼け止めは美容目的が主だった。今は紫外線による健康リスクから、男性や子ども、高齢者にも浸透している。花王は、暑熱対策も同様に健康ケアとして定着させたいと考えているという。
「単に涼しければいいということではありません。冷たい飲み物でお腹を壊したり、冷房で体調を崩したりする人もいます。日常生活の中でどう涼しく過ごすか。その正しいソリューションを提案することが重要なのです」
●一社ではできない社会課題解決 共創の広がり
今回のプロジェクトは、花王単独ではなく、東急不動産や地元団体との共創によって実現している。「異常な暑さ」という社会課題に向き合う姿勢が共感を呼び、賛同の輪が広がったのだ。
「これはもう一企業だけでは解決できない課題です。行政や街の人々とも連携しながら、取り組みを文化として根づかせていきたいと思っています」
「-3℃」というコンセプトは、単なる涼感グッズの販売ではなく、都市空間全体のデザインとホスピタリティの再設計に挑む試みだ。
原宿を起点に、都市の避暑地化は今後、観光・商業の文脈で広がりを見せる可能性がある。この夏、涼しさという無形の価値が、都市の魅力を再定義しようとしている。
(フリーライター篠原成己、アイティメディア今野大一)
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