サラトガ夏開催もクライマックス G1ホイットニーSで4歳の強豪2頭が激突

【合田直弘(海外競馬評論家)=コラム『世界の競馬』】

◆秋の重賞戦線を占う上で見逃せない一戦に

　米国では、ニューヨーク州北部に位置するサラトガ競馬場を舞台とした夏開催が佳境に入っている。8月4日と5日には、100年以上の歴史を誇る米国における老舗市場「ファシグティプトン・サラトガ・イヤリングセール」の開催も控えており、東海岸有数のリゾート地は、世界中から集まるホースマンたちで賑わうことになる。

　そんな中で行われる2日(土曜日)のサラトガ開催は、4つのG1を含めて5つの重賞が組まれた超豪華なカードとなっている。

　中でも注目が高いのが、4歳以上によるダート9FのG1ホイットニーSだ。過去10年の勝ち馬のうち、17年のガンランナー、21年のニックスゴー、23年のホワイトアバリオは、秋のG1BCクラシック(d10F)を制覇。このうちガンランナーとニックスゴーは、その年の全米年度代表馬に選ばれている。

　今年のホイットニーSは、週初めの段階で10頭が出走に名乗りをあげている。

　人気を分け合うことが予想されているのが、フィアースネス(牡4、父シティオブライト)と、シエラレオーネ(牡4、父ガンランナー)という、4歳世代の2頭だ。

　T.プレッチャー調教師が管理し、2歳時から戦線の最前線を走ってきたのがフィアースネスだ。2歳11月にG1BCジュベナイル(d8.5F)を制し、全米最優秀2歳牡馬のタイトルを獲得。3歳2戦目となったG1フロリダダービー(d9F)を13.1/2馬身差で圧勝した際には、G1ケンタッキーダービー(d10F)の最有力候補に浮上したが、そのケンタッキーダービーは1番人気を裏切り15着に大敗。この段階で3歳春のローテーションを終了すると、夏にはサラトガ競馬場ででG2ジムダンディS(d9F)、G1トラヴァーズS(d10F)を連勝。しかし1番人気に推されたG1BCクラシック(d10F)は、シエラレオーネに1.1/2馬身差をつけられる2着に終わった。

　今季のローテーションは、5月2日にチャーチルダウンズ競馬場で行われたG2アリシーバS(d8.5F)からスタートし、ここを快勝。前走6月7日にサラトガ競馬場で行われたG1メトロポリタンハンデキャップ(d8F)は、レイジングトレントの2着だった。サラトガ競馬場は4戦し3勝。2着1回と、フィアースネスにとって相性のよいトラックである。

　一方のシエラレオーネは、C.ブラウン調教師の管理馬。2歳11月にデビューし、2戦1勝、G2レムゼンS(d9F)2着の成績を残して2歳シーズンを終えている。

　今季初戦となったG2リズンスターS(d9F)を制し重賞初制覇を果たすと、続くG1ブルーグラスS(d9F)も勝ってG1初制覇。しかし、2番人気に推されたG1ケンタッキーダービーがハナ差の2着に終わると、続くG1ベルモントS(d10F)が3着、G2ジムダンディSが2着、G1トラヴァーズSが3着と惜敗が続いた。その雪辱を一気に晴らすことになったのがG1BCクラシックで、ここを1.1/2馬身差で快勝すると、シエラレオーネはエクリプス賞最優秀3歳牡馬のタイトルを獲得した。

　今季の同馬はここまで2戦。初戦のG2ニューオーリンズクラシック(d9F)が3着、前走G1スティーブンフォスターS(d9F)が2着と、「惜敗病」が再発しているが、能力的にはフィアースネスと遜色のないものを持つ。

　これに続く第3の勢力が、4歳世代のマインドフレーム(牡4、父コンスティチューション)だ。3歳時は4戦2勝、G1ベルモントS2着、G1ハスケルS(d9F)2着と、世代のトップグループに属しながらもワンパンチ足りない印象があったが、4歳を迎えて本格化。初戦のG2ガルフストリームパークマイル(d8F)を制し重賞初制覇を果たすと、続くG1チャーチルダウンズS(d7F)も制しG1初制覇。さらに前走G1スティーブンフォスターSもシエラレオーネを2着に退けて制し、3連勝を飾っている。

　この他、前走G2ハリウッドゴールドC(d10F)を制し9度目の重賞制覇を果たしての参戦となるスキッピーロングストッキング(牡6、父エグザジャレイター)、昨年秋のG1ジョッキークラブゴールドC(d10F)勝ち馬ハイランドフォールズ(牡5、父カーリン)、23年のこのレースを含むG1・4勝馬ホワイトアバリオ(牡6、父レースデイ)らが出走を予定するホイットニーS。秋のこの路線を占う上でも、見逃せない一戦と言えそうだ。

(文=合田直弘)