
大同生命保険(大阪市)は全国の中小企業経営者を対象に、景況感に加えさまざまなテーマを設定したアンケート調査「大同生命サーベイ」を2015年10月から毎月実施している。2025年6月度のテーマは「事業承継」。全国の6240社の中小企業経営者を対象に、6月2日から27日にかけて訪問、またはZoom面談で調査を行った。
まず、6月度の景況感について全体に聞いた。「現在の業況」(業況DI)は▲12.9pt(前月差▲0.1pt)と悪化したものの、「将来の見通し」(将来DI)は▲0.4pt(前月差+0.2pt)と改善した。
しかし、「事業承継したい」と回答した企業は47%で、前回同項目の調査(2024年5月)から8%減少。コロナ禍明けの2021年の同項目調査(64%)から見ても、大きく減少した。さらに、「廃業予定」と回答した企業は前回の10%から14%へ増加した。「従業員5人以下」の企業では、「廃業予定」が14%(「廃業予定」6%と「事業承継したいが廃業予定」8%の合計)で、それ以上の従業員数の企業と比較して高かった。
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次に、「事業承継したい」「未検討」と回答した企業に、「事業承継の課題」について聞いた。「後継者が決定している企業」(1917社)では「後継者の育成」が54%で最多だったが、「後継者未定」(540社)や「未検討」(2128社)の企業では、「後継者の選定・確保」が最多だった(後継者未定70%、未検討48%)。また、「M&A(企業の合併や買収)を検討している企業」(184社)では「従業員の理解」(26%)という回答が他と比較して高かった。
「事業承継について、どのように考えるか」(複数回答)については、「従業員や取引先など関係者のために必要」と回答した企業が44%で最多。以下、「取り組んできた事業を次の世代へつなぐために必要」(33%)、「会社のさらなる発展のために必要」(29%)と続いた。一方、「従業員5人以下」の企業では「時間や手間がかかる」と回答した企業が18%で、他と比べて多かった。
さらに、「事業承継したい」と回答した企業に事業承継の対策と取り組みたい対策を聞いた。実施した対策は、「後継者の育成」(36%)、次いで「自社株式対策」(24%)。今後取り組みたい対策は、「後継者の育成」(38%)、次いで「自社株式対策」(24%)だった。事業承継の相談相手については、「公認会計士、税理士」が64%で最多。以下、「銀行(メガバンク・地銀)」(21%)、「自社で検討」(18%)だった。
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続けて自社株式の評価額算定について聞いたところ、「定期的に算定している(税理士)」が43%で最多。「定期的に算定している(金融機関)」4%、「定期的に算定している(コンサルタント)」2%だった。一方、34%の企業が「算定したことはない」(「算定したいと考えているが算定していない」12%と「必要性を感じないため算定しない」22%の合計)と答えた。
株式譲渡に伴う課題(複数回答)は、「相続税・贈与税の納税資金の確保」が37%と最多で、「株式買取資金の確保(親族外への承継)」が12%だった。一方、「課題に感じていることはない」と回答した企業も40%に上った。
事業承継に関して経営者たちからは、「後継者が親族の場合、従業員からの信頼や理解を得るためさまざま点で配慮が必要」(製造業/北海道)、「事業承継を見据えた人事・資金計画などのプランを早期に準備・策定することが必要だと思う」(卸売業/福井県)、「事業承継に対する知識がなく何から始めれば良いのかもわからない。その点からの支援が必要」(運輸業/群馬県)、「税制優遇など、資金面で承継しやすい制度を構築してほしい」(サービス業/東京都)などの課題が寄せられた。「事業承継したいが、自社の経営環境を鑑みると希望する者はいないのではと感じている」(卸売業/神奈川県)との悲観もあった。
今回の調査では「事業承継せず、廃業を予定する企業」が増加。特に小規模の企業で割合が高くなっており、中小企業の将来が危ぶまれる兆候が現れた。その大きな障壁は「後継者の選定・育成」であることも浮かび上がった。調査を監修した神戸大学経済経営研究所の柴本昌彦教授は、「『事業承継したいが廃業予定』、『事業承継を未検討』の企業が約4割以上ありますが、これらの企業が事業承継に取り組む意向を持つためにも、後継者問題を解決できるような支援が必要と考えます。事業承継には計画的・長期的に取り組むことが求められます。信頼できる相談先・サポートに役立つサービスを活用することも重要です」と指摘している。
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