NECPCの「VersaPro UltraLite タイプVY」が、約995gの軽さと最長40.2時間のバッテリー持ちを両立できた秘密は?

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2025年07月31日 17:31  ITmedia PC USER

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VersaPro Ultra Lite タイプVY

 既報の通り、NECパーソナルコンピュータ(NECPC)は7月30日、13.3型モバイルノートPC「VersaPro Ultra Lite タイプVY」を発表した。


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 VersaPro Ultra Lite VYは、NECPCによる法人向けPCの新製品第1弾で、74Whの大容量バッテリーを搭載しながら、約995gという1kgを切る軽量設計であることが特徴だ。しかも、JEITAバッテリ動作時間測定法(Ver.3.0)(以下「JEITA測定法3.0」)に基づくバッテリー駆動時間が動画再生時で最長約20.1時間、アイドル時で最長約40.2時間と、長時間駆動を実現している。NECPCの自社調べとなるが、これは重量1kg未満の法人向けWindows 11ノートPCとしては世界最長だという。


 この記事では、東京都内で7月30日に開催されたVersaPro Ultra Lite VYの発表会の模様をお伝えする。


●NECからの「法人PC事業」移管で“一気通貫”に


 NECPCは、NEC(日本電気)とLenovo Group(Lenovoグループの持株会社)がオランダで共同設立した合弁会社「Lenovo NEC Holdings」傘下のPCメーカーだ。余談だが、レノボ・ジャパンもLenovo NEC Holdingsの傘下にある。


 NECは2011年、一般消費者(個人)向けのPC事業をNECPCに完全移管した。一方で、法人向けPCの企画/販売機能は自社に残した。つまり、商品企画/販売面においてNECPCはLAVIEブランドで個人向けPC、NECはVersaProブランドで法人向けPCという“すみ分け”を行ってきたということだ。


 しかし2024年10月17日、NECが法人向けPCの企画/販売機能をNECPCに移管することを発表した。この決定により、4月1日から法人向けPCもNECPCが商品企画から販売までを担う体制に変更された。


 もっとも、体制変更の前から法人向けPCの開発/製造はNECPCの担当で、個人向け/法人向けで本体の機構設計やデザインをある程度共有していた。今回の体制変更によって、同じ会社の中で商品企画から製造/販売までを“一気通貫”で行えるようになる。


 NECPCとレノボ・ジャパンの社長を兼務する檜山太郎氏は、「4月からNECの法人向けPC事業をNECPCが受け継ぎ、NECPCで一体的に(個人向けと法人向け)両方のPC事業を運営していくことになった。これにより、一気通貫した事業体制となり、PC専業メーカーとしての強みを生かせる体制が整った」と語る。NECが管轄していた法人向けPCをNECPCが直接扱える体制となることで、企業としてのNECPCの強みをより出しやすくなることを強調した格好だ。


 NECPCの強みは、開発拠点兼組み立て工場である「米沢事業所」(山形県米沢市)と、NEC時代から高いサポート力で知られてきたサポート拠点「群馬事業所」(群馬県太田市)といった実績のある国内拠点と、NEC時代から培ってきた日本市場に特化した製品を企画/設計する開発力にあると、NECPCの飯田陽一郎氏(執行役員 コマーシャル営業推進本部)は説明する。


 そこに、グローバルでトップシェアを誇るLenovoの傘下となったことで得た部材の調達力(※1)が組み合わさることで、「日本のユーザーに特化した企画力/設計力/サポート力」と、「グローバルPCメーカーのコスト競争力」を手に入れた。これらを生かして、他のPCメーカーとは一線を画すPCを提供していく――これがNECPCの基本戦略ということになる。


(※1)PC業界では、シェアが高いほど主要コンポーネント(CPU/メモリ/ストレージなど)の部材コストが下がっていく


●「止まらないPC」を目指したVersaPro Ultra Lite VY


 NECの法人向けPC事業が移管されてから、初めての法人向け新製品が、今回発表されたVersaPro Ultra Lite VYとなる。


 飯田氏は「法人のお客さまにお話を伺うと、バッテリーが持たないために外出先に充電できる場所を探したり、バッテリーがなくならないか注意しながら使ったりするのがストレスだということと、充電器やモバイルバッテリーなどを持ち歩くと重くてかさばるという2点が悩みであることが分かった」という。


 その上で「そこでビジネスを止めてはならないユーザーのために『止まらないあなたに、止まらないPCを』をテーマに据えて、1kg未満の法人向けノートPCとして世界最長のバッテリー駆動時間を実現するVersaPro Ultra Lite VYを開発した」と語った。


 NECPCの森部浩至氏(商品企画本部 本部長)は「これまでのNECブランドのPCは、一般消費者向けなら『攻めの商品』が多く、法人向けなら『守りの商品作り』という印象をお持ちだったと思う」とした上で、「2つの事業が合流したこれからは、(法人向けPCを含めて)攻めの商品作りに転換していきたい」と語り、今後は法人向けPCにおいても“とがった”製品を投入していく意気込みを示した。


 ただし、この宣言は今までの流れをくむ法人向けPCをなくすという意味ではなく、従来モデルのバージョンアップをもしっかりと継続しつつ、「高性能」「長時間バッテリー駆動」といった先進的な製品も投入していくという意味だ。


 VersaPro Ultra Lite VYについて、森氏は「JEITA測定法3.0のアイドルテストで約40.2時間と、他社の1kg切り製品(ノートPC)を上回る長時間バッテリー駆動を実現した」と紹介する。先述の通り、NECPCの自社調べとはなるが、本製品は重量1kg未満の法人向けWindows 11搭載ノートPCで世界最長のバッテリー駆動時間を実現している。


 本製品では、内蔵バッテリーをユーザー自身交換が可能な部品「CRU(Customer Replaceable Unit)」と位置付け、ユーザーが簡単に交換できるようにしている。ただし、バッテリーそのものは本体の内部に格納する構造とすることで「交換しやすさ」と「本体のスリムさ」を両立している。


 バッテリーは裏ぶたに付いている2本のネジと(ふたから外れない構造)、バッテリーパックを本体に止めている2本のネジを緩めると着脱できる(裏ぶたのネジはふたから離脱しない構造となっている)。バッテリーはオプション品としても購入可能で、本体と同じ流通経路で、型番を指定して注文可能だ。


●「大容量バッテリーを搭載しているのに軽量」な秘密は?


 VersaPro Ultra Lite VYが長時間のバッテリー駆動を実現した秘密はシンプルで、74Whという大容量バッテリーを搭載したことが大きい。NECPCによると、同クラスのモバイルノートPCの標準的なバッテリー容量の3割増しだという。


 ただし、本製品では74Wh容量のバッテリーパック(L)を標準とする一方で、カスタマイズオプションとして32Wh容量の「バッテリーパック(S)」も用意している。容量が半分以下となっているのは、単純に「LはSの半分」としなかったためだ。


 一般的に、1kg前後の重量の13〜14型クラスのノートPCでは52〜57Wh程度のバッテリーを搭載している。その場合、JEITA測定法3.0で駆動時間を計測するとアイドル時で30時間程度になることが多いので、本製品における駆動時間のプラスは、おおむねバッテリー容量が増えた効果ともいえる。


 しかし、大容量バッテリーを搭載すると重量はどうしても増えてしまう。「1kg以下」という軽量設計を目指す上での阻害要因となるのは言うまでもない。本製品は、一体どうやって課題を克服したのだろうか。


 答えはシンプルで、他の部材を軽量設計としている。本製品には大きく「通常モデル」と「軽量モデル」の2種類が用意されており、今回の発表会で強くアピールされたのは軽量モデルのバッテリーパック(L)構成だ。


 軽量モデルの軽量化ポイントは「液晶パネル」と「ボディー素材」の大きく2点となる。


 軽量モデルでは、低消費電力かつタッチ操作対応の液晶パネルを採用している。タッチセンサーを搭載するため軽量化には不利だと思いきや、通常モデルのタッチ操作非対応液晶パネルよりも軽いという。


 また、軽量モデルはAカバー(天板)こそ通常モデルと同じカーボンだが、Dカバー(裏ぶた)に強化プラスチックに代えてマグネシウム合金を採用している。重量当たりの強度はマグネシウム合金の方が強いため、より軽量かつ薄くできるのだという(本体の厚さは、軽量モデルが約17.9mm、通常モデルが約18.2mm)。


 本製品はバッテリーをCRUにするため、裏ぶたの一部(バッテリーの格納部分)を着脱できる設計としている。それゆえに裏ぶたの重量差もそれなりに大きくなっているといい、液晶パネルと裏ぶたで合計約36gの軽量化を果たしたそうだ。


 VersaPro Ultra Lite VYは既に受注を開始しており、9月中旬から順次出荷される予定となっている。


 「軽いノートPCは欲しいけど、バッテリー容量を削って駆動時間が短くなるのはイヤだ」と思っていたユーザーにとっては、74Whと大容量のバッテリーを搭載して1kgを切る重量を実現した本製品に注目したい。



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