【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】角田選手はベルギーで入賞こそ逃がしたが、ポジティブな週末だった

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2025年08月01日 07:10  週プレNEWS

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「角田選手はぶっつけ本番で未知数のマシンにしっかりと対応した。その意味ではとてもポジティブだった。前半戦を締めくくるハンガリーGPに期待したい」と語る光一

連載【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】RACE32

夏休み前の2連戦の緒戦となった第13戦ベルギーGPは大雨の影響でスタートが1時間以上も遅れるという波乱の幕開けとなった。

【写真】角田と新代表に就任したメキーズ

そんな中でもマクラーレンのふたりがスタートから圧倒的な速さでレースをリードし、オスカー・ピアストリが今季6勝目を挙げた。2位にはランド・ノリスが入り、マクラーレンが3戦連続でワンツー・フィニッシュを決めた。

日本期待の角田裕毅(つのだ・ゆうき)は予選でQ3に進出し、7番手からレースに臨んだ。入賞への期待が高まるが、タイヤ交換のタイミングを逸し、13位に終わった。しかしマシンのアップグレードが投入され、角田選手は本来の速さを取り戻しつつあるように見える。

次戦はシーズン前半戦を締めくくるハンガリーGP(決勝8月3日)。角田選手はいい形で夏休みに入ることができるのか。

* * *

■レッドブルの対応はトップチームらしくない!?

F1屈指の高速コース、スパ・フランコルシャンで開催された第13戦のベルギーGP。土曜日に15周のスプリント、日曜日には44周の決勝がそれぞれ実施されましたが、金曜日のスプリント予選から見応えがありました。

マクラーレンのオスカー・ピアストリ選手とランド・ノリス選手に加え、レッドブルのマックス・フェルスタッペン選手がコースレコードを更新しながらポールポジションを競い合うという、ものすごい展開となりました。最終的にはポイントリーダーのピアストリ選手が一歩抜け出し、ポールポジションを獲得します。

レッドブルの角田裕毅選手は新型フロアのアップデートが入るということで楽しみにしていたのですが、スプリント予選は前戦のイギリスGP同様にフェルスタッペン選手より2段階も旧仕様のパッケージで走行することになりました。

現代のF1マシンは"グラウンドエフェクトカー"と呼ばれ、車体下面と地面の間を流れる空気の流れを利用してダウンフォース(マシンを路面に押さえる力)を得ています。マシン底部を覆うフロアはもっとも重要な空力パーツで、最新のものと旧型では性能が大きく異なります。

前回イギリスGPからベルギーGPまでは3週間のインターバルがあったにもかかわらず、レッドブルは角田選手のマシンに最新のフロアを搭載してこなかった。その一方でフェルスタッペン選手のマシンにはボディやフロントサスペンションなどに、さらなる大型のアップデートが施されていました。

チーム内にはいろいろな事情があるのかもしれませんが、ここまで来ると、同じレッドブルのカラーリングが施されているとはいえ、別チームのマシンと言ってもいいぐらいです。

フェルスタッペン選手を優先するのは理解できますが、毎レース、最新仕様のマシンを2台準備できないというのは、トップチームの対応としてはどうなんだろうなあと感じます。

■角田選手がレッドブル移籍後のベストグリッド獲得

土曜日の午前中に行なわれたスプリントはドライコンディションとなりました。スプリント予選で圧倒的な速さを披露していたピアストリ選手が有利と予想されていましたが、ダウンフォースを減らし、ストレート重視のセッティングが見事にハマったフェルスタッペン選手が優勝を飾ります。

2番手スタートのフェルスタッペン選手は優れたストレートスピードを生かして、オープニングラップでピアスリ選手を抜き去ると、そのまま逃げ切りました。12番グリッドからスタートした角田選手はひとつ順位をあげたもののポイントには届かず、11位となりました。

スプリントが終わると、午後には予選が行なわれます。今回のベルギーGPの決勝は雨の予報が出ていたので、各チームは雨とドライのどちらにふったセッティングをするのか注目していましたが、予選前にレッドブルが角田選手のマシンに新型フロアを急きょ投入するという情報が飛び込んできました!

新型フロアを投入するのはファンとしてもうれしかったですが、だったらなぜ走り始めからやってくれないんだ......という疑問が生じます。ファンとしては何か事情があったのではないかと勘ぐってしまいますが、ぶっつけ本番で新しいフロアを装着したマシンで予選に臨むことになった角田選手は簡単ではなかったはず。

同様にレッドブルのメカニックたちもスプリントから予選までの短い間にマシンを準備するのは大変な作業だったと思います。

でも彼らの頑張りに角田選手は応え、マシンのポテンシャルをしっかりと引き出し、予選7番手という、レッドブル加入後のベストグリッドを獲得します。

チームの士気は上がったでしょうし、ファンとしても久しぶりに角田選手の元気な走りを見ることができてうれしかった。日曜日の天候がどうなるのかは気がかりでしたが、ワクワクした気持ちで決勝を迎えました。

■ピアストリ選手はどんどん強さを増している

決勝の天候はやはり雨、セーフティカー(SC)先導でレースはスタートしましたが、レース続行は危険と判断され、1周目に赤旗中断となりました。その後、雨が弱まり路面が乾くのを1時間以上待ち、SC先導によるローリングスタートでレースが再開します。

レースの舞台となったスパ・フランコルシャンはポールポジションが必ずしも有利ではありません。スタート直後に長い全開区間があるために2番手のドライバーがポールポジションからスタートしたドライバーのトゥ(スリップストリーム)をうまく利用して追い抜くというケースがよく見られます。

スプリントではポールポジションを獲得したピアストリ選手が2番手スタートのフェルスタッペン選手にトゥを使われてトップの座を奪われましたが、まったく同じことを決勝の再スタートではピアストリ選手が再現する形になりました。

レース再開直後、2番手からスタートしたピアストリ選手は1コーナーでポールポジションを獲得したノリス選手の背後にぴったりとつけるとストレート区間でトゥを使って見事にオーバテイク。トップを奪い取ると、安定した走りでそのまま逃げ切って今季6勝目を飾りました。

今シーズン、ノリス選手はポールポジションを獲得した開幕戦のオーストラリア、第5戦モナコ、第11戦のオーストリアはすべて優勝していましたが、そのジンクスは途絶えてしまいましたね。

最近、ピアストリ選手はどんどん強さを増してきているように思います。彼の走りは堅実で、淡々としていて、一見すると面白味がありませんが、速さと安定感を兼ね備えており、本当にいいドライバーだと改めて感じました。

■角田選手のマシンは間違いなく良くなった!

レッドブル勢はフェルスタッペン選手と角田選手がともに雨想定のセッティングをマシンに施しており、結果的に赤旗中断によって割を食う形になりました。再スタートを待つ間に雨はやみ、路面はどんどん乾いていきました。

レースは全車雨用タイヤを履いてスタートしますが、11周目からドライタイヤに交換するドライバーが出てきます。7番手からレースに臨んだ角田選手はしっかりとポジションを守って走行していましたが、ドライタイヤへの交換するタイミングが1周遅くなったために結果的に入賞圏外(13位)に沈みました。

スパ・フランコルシャンは1周が約7キロあります。現在のF1が開催されるサーキットの中でもっとも長いサーキットなので、ピットインのタイミングを外すと大きな代償を払うことになります。

レース後にメキーズ新代表は「ユウキにピットインの指示を出すのが遅すぎた」とコメントしていましたが、レッドブルの判断は明らかに間違っていたと思います。フェルスタッペン選手と同じタイミング(12周目)にピットインしていたら、結果は大きく変わっていたはず。

結果、角田選手は入賞を逃がしましたが、フロアのアップデートによってマシンは間違いなく良くなっていますし、ぶっつけ本番で未知数のマシンにしっかりと対応してきたのはとてもポジティブだったと思います。

ただ角田選手のマシンはアップデートがされたとはいえ、それでもまだフェルスタッペン選手のマシンと同じ仕様ではないようです。レッドブルになんとか対応して、ほかのトップチームのように2台でしっかりと戦える体制に早く持っていってほしい。

今週末は前半戦を締めくくるハンガリーGP(決勝8月3日)。角田選手はもちろん、レッドブル・ホンダとして良い週末になることを願っています!

☆取材こぼれ話☆

ベルギーGPはマクラーレンがワンツー・フィニッシュを決め、表彰台の最後の一角はフェラーリのシャルル・ルクレールが獲得する。

「ルクレール選手はレース序盤からルはフェルスタッペン選手と3位の座を争う展開となり、見事にポジションを守り切りました。でもルイス・ハミルトン選手もいい走りをしていましたね。

金曜日のスプリント予選と土曜日の本予選でともにQ1落ちを喫し、散々な結果に終わりましたが、日曜日の決勝では見事なリカバリーを見せてくれました。

18番手からのスタートでしたが、コンディションの変更を的確に読み、絶妙のタイミングで雨用のタイヤから晴れ用のタイヤに交換し大きくポジションを上げ、最終的には7位でフィニッシュ。さすがは7度の世界チャンピオンです」

スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/AKM ヘア&メイク/大平真輝

構成/川原田 剛 撮影/樋口 涼(堂本氏) 写真/桜井淳雄

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