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英プリマス大学やオーストラリアのクイーンズランド工科大学に所属する研究者らが2015年に発表した論文「Playing Tetris decreases drug and other cravings in real world settings」は、テトリスをわずか3分間プレイすることで、アルコール、ニコチン、カフェインの摂取や、飲食などへの渇望を効果的に抑制できることを実証した研究報告だ。
研究では31人(18〜27歳)を対象に、1週間にわたって実験を行った。参加者はiPod touchを携帯し、1日7回送信されるSMSメッセージに応答して渇望の対象と強度を0から100のスケールで報告。介入群に割り当てられた15人は報告後3分間テトリスをプレイし、その後再度渇望の強度を報告した。対照群の16人は渇望の報告のみを行った。
結果、テトリスをプレイすることで、渇望の強度は平均13ポイント減少し和らいだ。しかも、その効果は1週間を通じて一貫して維持できた。この効果は特定の物質や活動に限定されず、依存性物質(ニコチン、カフェイン、アルコール)、食べ物や飲み物、その他の渇望(例:性行為、ゲーム、運動、社会的交流)の強度を減少させた。
またお酒を飲んでいる状態でも、テトリスの効果は変わらなかった。ただし、お酒が入っていると実際に欲求に負けて行動してしまう確率は高くなる。
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なぜテトリスにこのような効果があるのか。研究者によると、何かを強く欲しているとき、私たちの頭の中にはその対象の鮮明なイメージが浮かんでいる。タバコの味や香り、チョコレートの甘さなど、五感に訴えるイメージが欲求を強めているのだ。
テトリスのような視覚的な作業を行うと、脳がそちらに集中するため、欲求の対象をイメージする余裕がなくなり、結果として欲求が弱まるという仕組みがあると考えられている。
Source and Image Credits: Skorka-Brown J, Andrade J, Whalley B, May J. Playing Tetris decreases drug and other cravings in real world settings. Addict Behav. 2015 Dec;51:165-70. doi: 10.1016/j.addbeh.2015.07.020. Epub 2015 Jul 26. PMID: 26275843.
※ちょっと昔のInnovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。通常は新規性の高い科学論文を解説しているが、ここでは番外編として“ちょっと昔”に発表された個性的な科学論文を取り上げる。X: @shiropen2
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