「あした死のうと思って」「じゃあ最後の飯行こう」人生に絶望した青年と約束を交わす友人【漫画】

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2025年08月10日 07:10  まいどなニュース

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青年の独白から物語が始まる(吉本ユータヌキさん提供)

普段、何気ない日常を共に過ごせる友人の存在がどれほど大切か実感することはあまり多くはないかもしれません。吉本ユータヌキさん作の漫画『あした死のうと思ってたのに』は日々の大切さを教えてくれると多くの人の心に届き、投稿されたX(旧Twitter)で7.6万以上のいいねを獲得しています。

【漫画】『あした死のうと思ってたのに』(全編を読む)

ある日、青年は夜の公園で友人に「あした死のうと思って」と打ち明けます。シリアスな内容にもかかわらず、友人は素直に受け入れて「どうやって?」と、やり方を尋ねるフランクさです。

「このあと、ホムセンで探す」という青年に、「じゃあ最後の飯行こうぜ」と友人は笑顔で青年を誘うのでした。2人で食事をしながら「ここ、うめーでしょ」「つけ麺もうめーから来週食べにこねぇ?」さらりと言う友人に青年は驚いたように友人の顔を見つめます。

その後「ホムセンは来週にする」と話す青年には、友人の言葉がとても大きいことが分かります。多くを語らない2人の間に流れる静かで温かい空気が伝わってくるようです。

後日、約束通りつけ麺を一緒に食べた2人はホームセンターに向かいます。そこで友人は商品のグローブを持ちながら「そういや、今度友達とやるんだけどカッコ悪いとこ見せたくないから教えてくれない?来週、河川敷!な!」と一方的に野球の練習をする約束を取り付けます。

「そういやなに買うんだっけ?」と友人が聞くも「今日はいいや」と応える青年には友人の優しさが伝わっているのでしょう。

翌週、河川敷でキャッチボールをしながら友人は「最近、どう?」とフランクに話しかけます。青年はそれには答えず、「ひとつ聞いていい?左利きなの覚えててくれたの?」と尋ねると「覚えてるよ、友達なんだから」と当たり前のように友人は返します。

それを聞いた青年は「また来週もしようね」と初めて自分から来週の約束をするのでした。その後も2人は一緒に音楽を聴いたり、お気に入りのCDショップに行ったりと何気ない日常を共に過ごします。

舞台は変わり、メンタルクリニックの担当医から「今日もよく来てくれたね」と言われ、受診しているのは青年ではなく、友人です。ここで、これまで一緒に過ごした日常に救われていたのは実は友人も同じだったことが分かります。実は友人は大切な姉を亡くしており、精神的に苦しんでいました。友人が音楽をよく聞いていたのも姉の影響だったのです。

その頃、青年は借りていた友人の大切な音楽プレイヤーを父親の暴力によって壊されてしまいます。青年の持ち物は父親の暴力によって、これまでも何度も壊されていました。それによって青年は高校の他の友達から借りたものが壊されることも多く、友達たちは「お前といると全部壊されてしんどいわ」「友達辞めよ」と言い去っていったのです。

音楽プレイヤーが壊されてしまったことを説明したら友人も去ってしまうかもと思った青年は、友人と遊ぶことができなくなり、2人の関係はギクシャクし始めます。そんな2人の仲を再び良好にさせてくれたのも音楽でした。

ある日、お気に入りのミュージシャンのライブへ行くことにした友人は、青年との関係を回復できないでいたことから、ライブが終わったら自殺してしまおうかと考えていたのです。しかしライブの最後、青年と一緒に聞いた大好きな曲が演奏され、友人は青年と再び仲直りしたいと考えてお揃いのキーホルダーを買います。

そしてライブハウスから出ると、同様にお揃いのキーホルダーを買った青年と出会います。この出来事をきっかけに青年と友人は仲直りをして、2人はまた一緒に遊ぶ約束をするのでした。

同作について吉本ユータヌキさんに話を聞きました。

目の前の約束を叶えるために生きていくだけでもいいんじゃないかな

ーどのような経緯で同作を描かれたのでしょうか。

17歳のときに、家庭環境や学校での人間関係がうまくいかず、当時住んでいた住宅11階のベランダから飛び降りようと思ったことがありました。ずっとこの記憶を、自分のイヤな過去として引きずって生きてきたんですが、いつか作品として世の中に出したいと思っていたのですが、暗い気持ちは出してはいけないものだと思い込んでいて、ずっと描けずにいました。

けどメンタルの不調もあり、漫画家を辞めようと思い、もうどうにでもなれって気持ちで漫画を描き始めたら、自然と「あした死のうと思ってたのに」というフレーズが出てきたんです。「あした死のうと思ってたのに、20年近く経った今も生きてるよ」って当時の自分に言いたかったんだと思っています。

ー同作の世界観はどのように構想されたのでしょうか。

学生時代から人間関係や交流が下手で、友達が少ないってことをコンプレックスに生きてきたんです。なので、こんな友達がいたらよかったなという願望であり、妄想です。心のうちを曝け出して、約束を叶えるために生きる友人が欲しかったんです。どこに行って、どんな話をしたいかって想像したものをそのまま描いてできました。

ー同作にどのようなテーマやメッセージを込めたのでしょうか。

大きな希望や目標も大事ですけど、目の前の約束を叶えるために生きていくだけでもいいんじゃないかなってことを伝えたいと思いました。僕自身、生きる意味とかすごく考えて、落ち込んでしまうことが多いので。あとは、本『あした死のうと思ってたのに』に、この2人のその後の描き下ろし漫画があるので、そちらを読んでもらえるとうれしいです。

(海川 まこと/漫画収集家)

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