新卒が辞めない職場の“共通点” チームワーク企業ランキングで分かったこと

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2025年08月12日 08:20  ITmedia ビジネスオンライン

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新卒社員が求めるチームワークのあり方は?

 新卒社員が4月に入社して、もうすぐ半年。本配属からしばらくたち、職場に慣れてきた人もいる一方で、入社前と現実とのギャップに悩む人が増える時期でもあります。


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 新卒社員の離職は、各社が頭を悩ませる問題です。実際、2021年卒の就職後3年以内の離職率は34.9%(※1)と、過去10年間で最高となりました。会社を辞める理由はさまざまですが、2023年に転職した約540万人を対象に行った厚生労働省の調査によると、離職理由のトップは男女ともに「職場の人間関係」となっており(※2)、社員の定着を左右する重要な要素であると考えられます。


 本記事では、転職・就職のための情報プラットフォーム「OpenWork」に寄せられた新卒社員の回答を分析。職場のチームワークを表す「社員の相互尊重」スコア(5点満点)が高い企業の特徴を探るとともに、新卒社員が求めるチームワークのあり方や、職場ができる対策について考えます。


(※1)厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」


(※2)厚生労働省「令和5年雇用動向調査」


●新卒社員がチームワークを評価する企業ランキング


 2022年以降に入社した新卒社員を対象とし、OpenWorkの8つの評価項目のうち「社員の相互尊重」スコアが高い企業をランキングにしたところ、上位30社は以下のような結果となりました。


 1位は半導体などの電子部品を扱う専門商社のマクニカ。2位に電通、3位に家計簿アプリや法人向け会計クラウドなどを展開するIT企業のマネーフォワードがランクインしました。上位30社のうち、日系の企業・組織は28社。業界別に見ると、IT業界や飲食業界、官公庁など、多岐にわたります。


 ランクインした企業に寄せられたクチコミの傾向を分析した結果、2つの特徴が見られました。


(1)フラットで相談しやすい環境


 上位30社の各スコアを見ると、「社員の相互尊重」だけでなく、「風通しの良さ」のスコアも平均3.95点と高水準でした。ランキング上位の企業のクチコミを見ると、上司や先輩を役職名ではなく「さん」付けで呼び合う文化や、社員同士があいさつをする習慣が根付いている様子がうかがえました。


 例えば、7位にランクインしたアビームコンサルティングでは、社員一人ひとりに対して、所属部署の管理職をカウンセラーとして配置する「カウンセリング制度」があり、この施策を評価する声が見られました。コンサルティング企業ではプロジェクトごとに上司が変わることが多い中、継続的に相談できるカウンセラーがいることで、キャリアの相談や信頼関係の構築がしやすくなり、その点が評価されたと考えられます。


 新卒社員にとって、日々の小さな疑問や困りごとを「安心して相談できる」人間関係は非常に重要です。日常的なコミュニケーションが活発な職場では、チーム内の信頼関係が育まれ、結果として良好なチームワークを築くことができているのでしょう。


 クチコミでは、以下のようなコメントが見られました。


 「仕事で何か心配事があればすぐに相談できるカウンセラーがおり、相談してから上が動いてくれるまでのスピードが速い」(コンサルタント、アビームコンサルティング)


 「社内の風通しがとても良い。あいさつを大事にしており、同じ部署の人たちだけでなく、他部署の人ともよくあいさつをする。社内でも、あいさつの強化期間を設けて社員の意識統一を図っており、新卒や中途の社員にもその文化を浸透させるよう努力している」(営業、マクニカ)


 「年次や役職に関係なく『さん』付けで呼び合う企業文化。役員に対しても同じで、慣れるまでは少し戸惑った」(営業、東京エレクトロン)


 「社員同士をあだ名で呼び合うほど関係性もフランクで、活発なコミュニケーションが取りやすい雰囲気」(ディレクター、ギミック)


(2)ミッションや企業理念に基づいた、チームで成果を出す文化


 また、チームで協力し合う文化が根付いていることを示すクチコミも目立ちました。社員にミッションや企業理念が浸透していることで、意思決定やコミュニケーションの場面での行き違いを防ぐことができ、円滑な連携がチームワークの強さにつながっていると考えられます。


 例えば、3位にランクインしたマネーフォワードは、日常の中で繰り返しMVVC(ミッション、ビジョン、バリュー、カルチャー)を発信して浸透を図っています。そのため、新卒社員だけでなく、中途社員からも「経営陣も文化醸成に主体的に取り組んでいる」といったクチコミが寄せられています。


 マネーフォワード以外にも、風通しの良さやチームの雰囲気づくりに言及したクチコミが、多数寄せられています。


 「MVVCへの共感を何よりも重視しており、社内のコミュニケーションでストレスを感じることが非常に少ない」(ビジネス職、マネーフォワード)


 「従業員一人ひとりが高い倫理観と使命感を持ち、社会に貢献することを重視している。組織全体が目標に向かって一丸となって努力する姿勢が感じられ、そのためのサポート体制も整っている。上司や同僚とのコミュニケーションが活発であり、問題が発生した際には、チーム全体で解決に取り組む姿勢が強い」(事務、三菱商事)


 「『オープンでフランク』『役職機能論』など、風通しの良い文化が根付いている。1年目から責任のある仕事を任せてもらえる環境。そんな環境だからこそ成長でき、プライベートも含めて本当に仲良くなれるような会社。上司もフランクな人が多く、いろいろな人と話す機会をつくれる」(営業、クイック)


●まとめ


 「新入社員がチームワークを評価する企業ランキング」で、上位30社にランクインした企業のクチコミからは、「相談しやすい環境や文化づくり」や「ミッションや理念の浸透」のために、各社が地道な努力を重ねている様子がうかがえました。


 本記事で紹介した施策は、決して目新しいものばかりではありません。しかし、こうした工夫を丁寧に、根気強く続ける姿勢こそが、良好なチームワークを育み、新卒社員の職場への帰属意識を高め、社員エンゲージメントの強化や企業文化の定着につながります。地道な取り組みの積み重ねが、新卒社員が安心して働ける環境をつくり、組織全体の持続的な成長を支える土台となるのではないでしょうか。


(オープンワーク)



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