
「手取りを増やす夏。」のキャッチフレーズで参議院選挙を戦い、議席を伸ばした国民民主党。玉木代表は「二大政党制はもう終わった」と断言し、多党制における政策実現の方向性を示しました。また、物価高対策として「年内に実現できる」具体策を提示。選挙で示された民意をどう政策に反映させるのか、その戦略と展望に迫ります。(聞き手:川戸恵子 収録:8月21日)
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「手取りを増やす夏。」が刺さった理由と有権者の変化――今回の参院選の勝因を分析していただきたいんですが、やっぱりこのキャッチコピー「手取りを増やす夏。」これが刺さったのでしょうか?
国民民主党 玉木雄一郎 代表:
これ実は去年の衆議院選挙で、手取りを増やすっていうことを掲げて、(今回)参議院なんで夏ってことにしたんですけど。今回選挙戦を戦って印象的なことが一つあって、埼玉県に行った時に怒られたんですよ。なぜ何を怒られたかっていうと、「手取りを増やすと言って去年やって、『103万を178万に引き上げる』、『ガソリンの暫定税率廃止する』、できてないじゃないか。」と言って怒られたんですね。これは申し訳ないと思うと同時に嬉しかったんです。
何でかというと、選挙で言ったことを有権者が覚えておいてくれていて、それがどこまでできているのか、できてないかもチェックして、「ここがまだできてないじゃないか」と言っていただいたのはね、実はこれ画期的だと思います。それだけご期待をいただいてるし、逆にできてないことを把握いただいてるし、だからそこを埋めていかなきゃいけないなということを思ったし、できてないことで腹を立てていただける政党であることが、私は逆に誇りだと思ったのでブレずに諦めずにやろうということで、夏を加えて同じキャッチフレーズなんですけど2回の大型選挙を通じて同じ政策を訴え続けたっていうことですね。
もちろんまだまだ議席も少ないので100%できてませんけれども、ただやっぱり言ったことをちゃんとやって、ガソリンの暫定税率の廃止についても、今年のうちにできるだけ早くやろうということで、これは与党も含めて合意ができたので、そういう意味では一歩一歩進んでいってるということです。
「日本人ファースト」というキャッチコピーでワーッと入った政党もいますけれども、そういう意味ではもっと政策の中身でのキャッチコピーなので、地味なんですよ結構。でも、所得税の控除額を上げましょうみたいなことをメインの政策に掲げてる我々の(選挙戦)最終日の演説会で新橋駅前に何千人も集まってくれたのね。あの時、携帯の位置情報の分析で見ると、その場にいた22%は20代なんですよ。現役世代とか若い人たちに直接訴える政策を出す制度が今までなかったということで頑張らないといけないなと思います。
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――参院選では各党が物価高対策について公約を掲げましたが
国民民主党 玉木雄一郎 代表:
国民民主党は実は元々、物価高騰対策で消費税減税を言ってないんです。我々はあくまで所得税・住民税の控除額を引き上げていこうということを言って、103万の壁を178万に引き上げようということを去年から言ってるわけです。なぜかというと、物価高騰は別に今年から急に始まったわけじゃなくて、もう2021年ぐらいから始まってるわけですから。各党が言ってることも全部一理あると思うんですけど、今、物価高騰で皆さん困っておられるので、とにかくまず年内に速やかにできることからやった方がいいと思うんです。その意味でいうと2万円の給付は年内間に合いません。
――どうしてですか?お金配ればいいってことじゃなくて?
国民民主党 玉木雄一郎 代表:
いや、これが、もうとてつもなく時間かかるんですよ。自民党の公約にも正直に書いてあって、いわゆるマイナンバーに紐づけした公金受け取り口座だったら、何とか年内に始められるかなと。裏から言うと、普通の現金で口座に振り込むやつはもう年内は間に合わないんですよ。だから、「今の瞬間困ってるのに来年の話なの?」となるし、消費税の減税は野田さんも認めているように、早くても来年度から。
私達はとにかく今困ってるから、早くやって差し上げることが大事なので。だから、去年の12月に自民党、公明党にも言って、まず二つやりませんかと。
一つは、ガソリンの暫定税率廃止。これは物流コストも下がるので、これをまず年内にやりましょうと。これは今度の参議院選挙の後ですね、与党も含めて年内早いうちにやろうということで合意して。
もう一つは、103万のですね178万円引き上げなんですけど、123万円まで上がったので、財源で1.2兆円分ぐらいの減税は確かにやってもらったんです、自公に。ただ、まだまだ不十分なので、ちょっとこれ深掘りして、その分を年末調整でお返しするというのが多分一番早い対策だと思います。ですから、私達も別に消費税の減税とかもね、議論していったらいいと思いますが、いずれにせよもう来年の話になっちゃうので、当面困ってる皆さんに年内に対応する。私達が考える唯二の方法は、ガソリンの暫定税率を今年中に廃止することと103万を178万まで目指して、さらに引き上げて年末調整でお返しすると。
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前から言ってるんですけど、アメリカもオーストラリアもやっぱりインフレに合わせて控除額を引き上げると。出費が増えてるから合わせて手元に残るお金を増やすことが物価高騰で出費が増えることに対応する、非常にわかりやすいですね。やっぱり特に、どうしても出さなきゃいけない義務的な支払い。食品にしても、電気代、ガス代にしてもそうじゃないですか。そうすると、やっぱり払うものが増えるんだったら、手元に残るお金もね。増やさないと。年金はですね、物価スライドとか賃金スライドが入ってるんですけど、これ働いてる人の控除額っていうのは、物価スライドも賃金スライドもないんですよ。今まではデフレだったから。1993年に103万って基準決めて30年何もせずに引っ張ってきてよかったんですけど、もうこんだけインフレになってますから。
やっぱり働いてる人の控除額も、物価や賃金に合わせてスライドさせていかないと生活が苦しくなるのは当然なんで、これはぜひ別に奇をてらったことじゃなくて、もう各国でもやってる当たり前の物価高騰対策。インフレに合わせて所得税IncomeTaxの控除額を引き上げていく。これはねもうぜひやったらいいと思うので、他の野党、また公明党さんはじめですねご理解をいただいて、特に年内にとにかく国民の皆さんを助けてあげましょうということでぜひ皆さんにご理解をいただけるように頑張っていきたいなと。
――選挙が終わりこの1か月。与党と野党がそばに行ったり、この人がくっついたりとか、全然違う方向の動きばっかりじゃないですか。
国民民主党 玉木雄一郎 代表:
各党の党内政局をやってもらいたいと思って一票入れた人はいないと思うんですよ。やっぱり物価高で苦しいから何とかしてくれって。今、現実的に一票入れて選挙終わったんだけど、なんか党内政局ばっかりやってると。一番大きな政権与党の自民党の総裁がそもそもそのまま続くのか続かないかわからないというね。世論調査するとなんか最近やめなくていいが増えてきてるんで、そういうことで自信を深めているんじゃないですかね。
――石破さんとは一緒にやれないんですよね、玉木さん。
国民民主党 玉木雄一郎 代表:
私は言ったんですよ。暫定税率の廃止と、103万を178万目指して引き上げ、これは3党で合意してるんですよ。文書もあるんですよ。アメリカとの間には文書はないんですけど、我々の間には文書があるわけですから。やっぱ文書あるものぐらいは守っていただかないと。やっぱり約束を守れない政権とはなかなか信頼感を持って付き合うことは難しいと当たり前の事を言ってるだけです。
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――今回の参院選で、参政党は全選挙区に候補者を立てましたよね。それがもっと立てればもっと勝てたんじゃないかと思うんですけど
国民民主党 玉木雄一郎 代表:
これはね総括を今やってますけども、そこできちんと分析をして今後の方向性を出していきたいなと思ってるんですね。ただ一つ今回の選挙で私は、もう確信したのはですね、やっぱりいわゆる連合も含めてですね、二大政党制的な政治体制を目指すということは、もうこれはね、ある意味終わったと思います。
私は実はもう2年前から、これからは多党制になると。その中で穏健な多党制で3つから5つぐらいの政党が協力をしながら政権運営していく政策を決めていくそういう時代に入るので、その中で中核的な影響力のある政治集団になろうというのが当時の私が掲げた中期ビジョンだったわけで、ある意味はその通りになってきてるわけですね。ですからもう二大政党を前提に何かをやっていこうということ自体がもう崩れたというふうに私は明確に認識する必要があって、もっとわかりやすく言うと、いわゆる旧民主系の人たちを集めて、そこに共産党をくっつけて、それさえ集めればそこで一本化すれば勝てるという体制ではもうなくなったってことです。
例えば、群馬県の選挙区では我々は出さずに立憲民主党さんだけにしたんですが、保守王国自民党に迫ったのは、その一本化した立憲民主党の候補者じゃなくて参政党さんだったんですね。逆にですね、奈良県の選挙区は、うちも出した立憲も出した、維新も出した参政党も出した。ある種野党がバラバラで勝てないって言われたんですけど、自民党にかなり一番迫ったのは、我々国民民主の候補者だったんです。
だから、単に野党をまとめればいい、特に民主系をまとめて共産党をくっつければ通るという、ある種のビジネスモデルは崩れたという前提の中で、どうやって働く者、生活者、納税者の立場に立った代表者を増やしていくのかということを考えていく時代に変わったんだろうということで、私達自身もちょっと古い発想から抜けていかないといけないなと思っています。