写真2021年に取材した東京都北区の学童野球チーム『BLOSSOM BASEBALL CLUB』(以下、ブロッサム)。存続が危ぶまれた2チームが合併したことで誕生したチームは、それまでの活動方針を大きく転換したことなどにより短期間で34人の子ども達を擁するチームになったことを紹介しました。あれから4年が経過し、発足間もなかったチームはその後どうなったのでしょうか? 現在の高学年チームを指導する伊場竜太コーチにお話を聞きました。
<何だかんだ言っても「気合いと根性」はいつの時代も大事>
——ブロッサムのコーチになってどれくらいでしょうか?
2年くらいですね。息子が入部したことをきっかけにコーチになりました。
——お父さんコーチがたくさんいるそうですね。
現在25人です。社会人まで野球をやっていた人もいれば、経験のない人もいますし、ソフトボール経験者のお母さんコーチもいます。
チームではコーディネーショントレーニングやリズムトレーニング、パルクールなどを取り入れているのですが、コーチが講習会などに参加して学んできて指導をしてくれたり、とても助かっています。
——ブロッサムの指導方針で2021年の結成当初から変わったところはありますか?
基本的に変わっていないですね。ただ「ちょっと勝ちも目指していきたいよね」ということはチーム内でも話しています。去年の北区の3・4年生の大会でチーム結成以来、初めて優勝することができて、区内の別の大会でも準優勝が二度ありました。低学年チームから少しずつ結果も出始めています。
——「勝ちも追い求めたい」ことで、何かやり方を変えたり新しく始めたことなどはありますか?
これまでは北区を主として試合も練習もしていたのですが、低学年チームは昨年から『スーパーリーグ』、高学年チームは今年から『オールジャパン』という都内強豪チームも集まるリーグ戦に参加しました。そこで経験したことのないような速いボールを投げるピッチャーとの対戦もあって、そのときは対応できなかったのですが、「この次はそのボールが速いと感じなくなるようにしよう」と、私がめちゃくちゃ速いボールを投げてバッティング練習をしたこともありました。それをきっかけに速いピッチャー相手でも結構打つようになりましたね。色々なチームとの対戦をきっかけに子ども達の視野が広がったというか、高いレベルを知れたことで目線が少し上がったような気がしています。
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——令和の時代に子どもを指導する難しさをどんなところに感じていますか?
良くも悪くも淡泊な子が多い印象です。負けても、ミスをしても、終わった瞬間に忘れている。良く言えば切り替えが早いということなのかもしれませんが(笑)。野球も社会も、何だかんだ言っても「気合いと根性」っていつの時代も大事だと思うんです。「よっしゃ! やったるで!」と思う気持ちや、何か言われても「なんだよ!」と反発する気持ち。そういったガッツというか、気合いと根性を持った子が少ないのかなと思いますね。
——初めての学童野球指導で戸惑ったことはありますか?
私はリトルリーグ出身で、ブロッサムのコーチになって初めて学童軟式野球に触れたのですが、まず盗塁に衝撃を受けましたね。低学年チームの試合だったのですが、フォアボールで出たランナーが簡単に盗塁して三塁まで進んで、キャチャーがピッチャーに返球する間にホームスチールをして1点。それを対戦相手のベンチが「ナイス走塁!」みたいな感じで喜んで、保護者も盛り上がっている。「いや、これ何のスポーツですか?」という違和感を覚えました。私は社会人野球までキャッチャーをやっていましたけど、個人的には低学年の試合では盗塁はなくて良いと思っています。フリーパス状態の盗塁をいくらしたところで、次のステージでは通用しないですしね。
——少年野球人口の減少についてはどのように思いますか?
指導者の怒声罵声、練習時間の長さ、親の負担の大きさなどが挙げられると思います。ブロッサムに多くの子どもが集まっているのは、そういったことを排除していることが大きいのかなと思います。指導者の怒声・罵声はチーム方針として明確に禁止していますし、お茶当番もないですし、練習時間も短い。そんなに強くないのに、実際多くの子達が入ってきてくれています。
——これからのチームの課題はどんなところにありますか?
熱心な子、そうじゃない子、色んな子がいます。ブロッサムは熱心じゃない子達にも寄り添うチームですが、どうやったら彼等に野球を好きになって貰えるか、熱心に取り組んで貰えるようになるか。そこが課題なのかなと思います。
——野球を通じて子ども達には将来どうなってもらいたいですか?
自分で考えて行動できる人間になって欲しいですね。野球って監督、コーチに指示をされて動くことが多く、いつの間にか「指示待ち人間」になってしまうことが多いと思うんです。そうではなくて自分が主体的に考えて動けるようになってもらいたいですね。ですので、子ども達には日頃から「なんで?」「なんで?」と質問するようにして、自分で考えることを促すようにしています。子どもたちには難しいことを要求しているかもしれないですけどね。(取材・写真:永松欣也)