
新連載 水沼貴史×平畠啓史
国内外のサッカー中継の解説者として活躍する水沼貴史さんと、日本屈指のサッカーマニアで知られる平畠啓史さんが、サッカー界のホットな話題をしゃべり倒す連載がスタート。第1回は、現在川崎フロンターレで衝撃的な活躍を見せている、伊藤達哉について語った。
【動画】水沼貴史&平畠啓史の新番組がスタート! 伊藤達哉が衝撃的活躍! なぜプレーに余裕があるのか? ↓↓↓
【6戦連発7ゴール】
水沼 伊藤達哉は、今ヤバイですよ。
平畠 現在、リーグ戦では4戦連発。公式戦は6戦連発7ゴールです。
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水沼 すべて綺麗なゴールですよね。思いきり打つとか、偶然打つとかじゃなくて、ちゃんと狙いを持って打っている。ドリブルをしていろんなことを考えながらシュート。相手を見ながら切り返して打つとか。ありとあらゆる場面で判断に技術が伴って、最適解を見つけ出すみたいな感じですね。
平畠 イチがバチかで打つ感じではないですよね。
水沼 彼は「逆輸入」と言われて。つまり海外で最初にプロになって、今年になって川崎フロンターレに来た。それで右ウイングには絶対的な人がいるじゃないですか。
平畠 体の強い41番の人(家長昭博)でしょう?
水沼 あの人からポジションを取ったわけですよ。それがすごいなと。
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平畠 確かに。
水沼 今年、川崎は長谷部茂利監督に代わって、サッカーも守備のところをすごく言ってますよね。プレスに行って、プレスバックもやる。それをやるかやらないかで、前線の選手たちは多分試合に出れるか出れないかが変わってくるんですけど、そこを具現化しているのが伊藤。最初に見た時に「すごい。こういうことをできるんだ」と思った。
【予測が速く、プレーに余裕がある】
平畠 でも、守備もそうですけど、攻撃でここ最近は本当に止められない感じになってますよね。
僕はやっぱり、そのシュートをちゃんと枠に持っていけるところ。打ったら、決まるか、GKのセーブかじゃないですか。枠を外れてちょっと遠くに行ってしまうようなシュートがまず少ない。
あと、ステップですね。ステップの細かさというか。人間って走る時、今は世界陸上とかもやってますけど、速く行こうとすればするほど太モモとかヒザが上がるじゃないですか。でもなんかペタペタと走ってますよね。あれが、いわゆる速いっていうのじゃなくて、サッカー的なスピードがある選手なのかなと思ってます。
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水沼 ステップが読みづらいとか、対峙した瞬間にどっち来るかわからないとか。
平畠 (第26節の)アルビレックス新潟戦のゴールとかも、かわしてすぐに打っている。あれ僕はスタジアムで見ていたんですけど、ボールを止めた時は「まだ打たないだろうな」って見てるほうは思ってるんですよ。そうしたら「あっ、決まった」みたいな感じで。かわして打つ速さがすごいなと。
水沼 今、かわしてすぐ打つのって、久保建英や堂安律もそうですけど、日本人って速いなってすごく思いますね。
それでかわして打つというのがひとつあると、相手としては次は外した瞬間に足を出そう、ブロックを間に合わせようとする。そうすると股が空くので、今度はそこから違うコースを狙える。
あと僕が衝撃的だったのは、(第29節の)横浜F・マリノス戦の試合になりますけど、先制点のシーンですね。ファンウェルメスケルケン際が出した縦パスを追いかけて、相手が来るのを見て切り返して、左足でシュート。何が一番すごいか。切り返した場面じゃないです。
この場面で伊藤は最初、相手ボールにプレスに行って外されるわけです。そこで「ああ、外された〜」みたいな感じじゃなくて、ちゃんと戻る。それで相手がパスミスになる瞬間にもうステップを踏んでまた逆を向いているんですよ。普通は戻りながら「あー、カットしそうだな」と思ってそこを見るんだけど、その前から相手ゴール方向へスタートを切ってるんですね。
その時の映像をみなさん見返してほしいんですけど、周りの選手たちはみんなこっちを向いて、ほぼ準備できてない。
平畠 フロンターレのゴールのほうに向いてるってことですよね。
水沼 なのに、ひとりもうターンしてるんです。予測が速い。だから、その後のプレーに余裕があるんですよ。自分が出ていくスペースもあるし、相手が戻ってくるのも見えると。
平畠 僕は試合を見る時ノートをつけるんですけど、伊藤選手のところに「右メッシ」って書きましたからね。あのステップとか、ドリブルの運びとか、シュートまで持っていく形が、「あっ、この人メッシなんかな」って。メッシの流れの選手なんだろうなという気がしましたね。
水沼 速さもそうだし、判断もそうだし、それを最適に生かす技術があるし、なんか衝撃的な最近の活躍じゃないですかね。
【笑わないが表情を出す。ミステリアス!?】
平畠 僕はもう何よりも大好きなのは、顔。全然笑わないでしょう?
水沼 嬉しくないのかな。
平畠 僕が思うのは、「こんなもんじゃない」みたいな感じなのかなと。「もっといけるよ」ぐらいの感じに思ってるのかなと。
水沼 それはあるかもしれない。
平畠 「これぐらいで俺納得してないから」みたいな感じに見えるあの顔が好きで。でも無表情じゃない。ちょっと舌出したりとか、(第27節の)名古屋グランパス戦では雄叫びをあげたりとか。この前のマリノス戦の時は、鈴木冬一選手とちょっとバチバチやりましたよね。 バチバチやって熱くなって、その後握手した時にちょっとウインクしてるんですよ。
笑わないんですけど無表情じゃなくて、いろんな表情を出すのがちょっと見てても面白いなと。
水沼 中継でアップが多くなるかもしれません。
平畠 アップにしてほしいです。で、ああいう選手が、たまにはにかんだような感じで笑うと、見てるほうはすごく嬉しい! なんかちょっとミステリアスな部分も残っているのが、また魅力ですね。
水沼 だけど、技術もそうだし、判断もそうだし、なんかすぐにヨーロッパに行ったというのは、理由がわかる気がする。
平畠 今シーズン、ちょっと試合は少なくなってきましたけど、これからまだまだいけそうですし、今後も楽しみですね。