【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】バクーでは本来の力を解き放った角田選手の走りが見たい

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2025年09月19日 09:50  週プレNEWS

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連載【堂本光一 コンマ一秒の恍惚Web】RACE 35

シーズン後半戦の幕開けとなった第15戦オランダGPと第16戦イタリアGPの2連戦はドラマチックな結末となった。

オランダGPはチャンピオン争いをリードするマクラーレンのオスカー・ピアストリとランド・ノリスが一騎打ちを演じるが、ゴール目前でノリスのマシンが白煙とともに突然スローダウン。ピアストリが今季7勝目を挙げた。

【写真】「本来の力を発揮してほしい」。角田選手への期待を語る堂本光一

第16戦のイタリアGPはシーズン中盤以降、苦戦が続いていたレッドブルのマックス・フェルスタッペンが予選でポールポジションを獲得。決勝でもマクラーレンの2台を上回る速さを披露してトップでチェッカー。フェルスタッペンは5月に開催された第7戦のエミリア・ロマーニャGP以来となる優勝を飾った。

今週末には第17戦のアゼルバイジャンGP(決勝9月21日)が開催されるが、レッドブルは首都バクーの市街地コースでも再び優勝争いに加わることができるのか!?

* * *

■フェルスタッペンの凄さを見せつけられた

マックス・フェルスタッペン選手がモンツァ・サーキットで開催されたイタリアGPを制し、第7戦エミリア・ロマーニャ以来となる今季3勝目を挙げました。

ミラノ近郊にあるモンツァはF1屈指の超高速サーキットですが、昨年のレッドブルは空気抵抗をギリギリまで減らして最高速度を上げる超低ダウンフォース仕様のリアウイングを用意していなかったので、イタリアGPはかなり苦戦していました(フェルスタッペン選手は6位)。

でも今年はしっかりとモンツァに合わせたウイングを持ち込み、フェルスタッペン選手はフリー走行で試行錯誤しながらセッティングをまとめていました。

そして仕上がったマシンにドライビングを完璧に合わせて、予選、決勝でポテンシャルを最大限に引き出し、ポールトゥウィンを達成。ホントにすごい!という言葉しか出てきません。イタリアGPではフェルスタッペン選手の能力の高さをあらためて感じました。

チャンピオン争いをリードするマクラーレン勢はコーナーリング性能が優れており、モンツァのようなコースは得意じゃないはずですが、ノリス選手が2位、ピアストリ選手が3位に入ってダブル表彰台を獲得。マクラーレンのマシンの万能ぶりを見せつけられた思いです。

金曜日のフリー走行1回目はノリス選手が6位に留まり、今回のマクラーレンはちょっと厳しいかもしれないなあと思っていましたが、フリー走行2回目からはきっちりとタイムを上げてきました。

僕の想像に過ぎませんが、1回目は別のプログラムをやっていたのかなあって(笑)。マシンのレギュレーションが大きく変わる来年に向けてのテストしていたのかもしれません。それだけ余裕があるように見えました。

■物議をかもしたマクラーレンのチームオーダー

そのマクラーレンはイタリアGPのレース終盤、ノリス選手とピアストリ選手の順位を入れかえたことが物議をかもしています。

モンツァではノリス選手がずっとピアストリ選手の前を走っていたのですが、ノリス選手がタイヤ交換をする際にマクラーレンのクルーがタイヤ交換に手間取り大きくタイムロス。その結果、ノリス選手はピアストリ選手に逆転されることになりました。

チームはすぐさま無線でピアストリ選手に対してチームオーダーを出し、順位を入れかえるように指示を出します。ピットのミスはレースの一部なので順位を入れ替える必要がないとみるのか、それともフェアな戦いとみるのか......。

ノリス選手としては当然「そこはチームのミスなので譲ってくれよ」となりますが、ピアストリ選手からすれば「タイヤ交換で順位を落とすこともレースの一部だよね」となります。当然ですが、置かれた立場によって意見が異なると思います。

2位(18点)のポジションを譲ったことでピアストリ選手は3位(15点)でフィニッシュし、3ポイントを失うことになりました。ピアストリ選手はイタリアGP終了時点でノリス選手に31ポイントのリードを築いていますが、まだ残り8戦あります。

ピアストリ選手が最終的に数ポイント差でタイトルを失うことになったら大事です。そんな禍根を残すような事態にならなければいいなと思います。

でもマクラーレンのドライバーのマネージメントには感心させられます。コース上では自由に戦っていいけれど、公平性を保つことで、ドライバーふたりの間に余計な火種、摩擦が起きないようにしています。すごくフェアで正しい世界ですよね。

それでもピアストリ選手は順位の入れかえ指示が出された直後は少し不満の声を上げていましたが、最終的にはチームオーダーを受け入れていました。

マクラーレンの戦い方は、温厚な人柄のノリス選手と冷静沈着なピアストリ選手のふたりだからこそ成り立つんでしょうね。これがノリス選手とフェルスタッペン選手、ピアストリ選手とフェルスタッペン選手のコンビでは成立しないと思います。

ドライバーズチャンピオンシップも独走するノリス選手とピアスリ選手は、レースを主催する国際自動車連盟(FIA)にとっては、模範的なF1ドライバーなのかもしれません。近年のFIAはレース中にドライバーが不適切な言葉を使ったら罰金を科すなど、クリーンでフェアな世界にしたいという目論見があるように見えます。

勝ち負けがはっきりとつくスポーツの世界はきれいごとだけでは済まされないと僕自身は思っていますが、ノリス選手とピアストリ選手は現代のF1というスポーツを体現しているドライバーだというのは間違いないと思います。

■苦戦が続く角田選手。救いは予選の速さ

角田裕毅(つのだ・ゆうき)選手はイタリアGPの予選でQ3に進出し、10番手からのスタートでしたが、決勝はすごく苦しかった。ライブタイミングでずっとタイムを追いかけていましたが、レースペースが悪いんですよね。

スタート直後からペースがなく前のマシンに追いつくことができず、逆にじりじりと引き離されて、後ろの選手たちに突かれる展開になっていきました。そして後続車が早めにピットインしてポジションを上げようとする"アンダーカット"をしたことでさらに順位を失ってしまう......という後手後手の流れになってしまった。

あと角田選手がマシンを「リアリミテッド」と何度も言っていたのが気になりましたね。リアのダウンフォースが弱いということだと思いますが、角田選手はフェルスタッペン選手よりも大きいリアウイングを装着していました。にもかかわらず、グリップ力が感じられずに乗りづらそうでした。

でもフェルスタッペン選手は角田選手よりもリアのダウンフォースを削っても乗りこなして優勝してしまうんですよね......。マシンの理解が足りないことが影響しているのだと思いますが、とにかく苦しいレースでした。

そんな中でも救いは、予選の一発のタイムは徐々にフェルスタッペン選手に近づいてきていることです。ただ今のF1は本当に接戦です。イタリアでは予選で1秒以内に全20台が入っちゃうぐらいです。

だからこそ、ボタンひとつの掛け違えがあるだけで、マクラーレン以外のマシンはレッドブルやフェラーリ、メルセデスでさえもQ1落ちしてしまう。

でも角田選手はいまだにフェルスタッペン選手と同じ仕様のマシンを与えられず、コンマ1秒、2秒を失って、Q2やQ3に進めないという悪い流れになってしまっています。

■アゼルバイジャンのコースはレッドブルに合っている

レッドブルのドライバー選考を行なうモータースポーツアドバイザーのヘルムート・マルコ氏は、角田選手が来年もレッドブルに残留するためには10月末に開催される第20戦のメキシコGPぐらいまでに結果を出すように、と話しているようです。

これからアゼルバイジャンGP(決勝9月21日)、シンガポールGP(決勝10月5日)と市街地コースでのレースが続きますが、アゼルバイジャンのバクーはレッドブル向きのコースだと思います。超高速サーキットで、角田選手は2021年(7位)、23年(10位)も入賞して相性がいいですし、タイトなコーナーが続くセクションも得意にしています。

バクーではこれまでの苦しいレースを払拭するような走りが見たいですね。第15戦のオランダGPでは9位に入りましたが、速さでつかみとった入賞というわけではありませんでした。

角田選手がレッドブルに移籍して以降、ずっとラップタイムを追いかけながらレースを注目してきましたが、角田選手らしい限界ギリギリのアグレッシブな走りやスピードがまだ見ることができていません。本来の力を解き放ち、角田選手はやっぱり速い!というレースを見せてほしいです。

☆取材こぼれ話☆

2026年からキャデラック・ブランドでF1に参戦するアメリカのGM(ゼネラルモーターズ)がドライバーラインナップを発表。F1通算6勝のセルジオ・ペレスとF1通算10勝のバルテリ・ボッタスのベテランコンビでデビューシーズンを戦うことになった。

「新規参入チームとしてすごく堅実なことをやってくるなと思いました。ベテランふたりの豊富な経験を生かして、チームを牽引してもらおうということでしょうが、35歳(ペレス)と36歳(ボッタス)のコンビはなかなかない。

"アツい"なあと思いました。ペレス選手はレッドブル時代にマックス・フェルスタッペン選手と組み、ボッタス選手はメルセデスでルイス・ハミルトン選手と組み、ともに最強ナンバー2と呼ばれていました。キャデラックではどっちがナンバー1になるんですかね。それも楽しみですね」

スタイリング/渡邊奈央(Creative GUILD) 衣装協力/AKM ヘア&メイク/大平真輝

構成/川原田 剛 撮影/樋口 涼(堂本氏) 写真/桜井淳雄

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