フィリップスの「16B1P3320/11」は、15.6型のモバイルディスプレイだ。既存の「3300/11」をベースに、USB Type-Cポートを2基に増やすなど一部の仕様を変更したモデルとなる。メーカーから機材を借用したので、レビューをお届けする。
●一体型スタンドを採用 USB Type-Cポートは2基に増量
まずは基本的な仕様を押さえておこう。画面サイズは15.6型で解像度は1920×1080ピクセル(アスペクト比16:9)、IPS液晶を採用しており、HDR10に対応するのが売りだ。コントラスト比は1200:1、輝度は最大250ニト、視野角は水平/垂直共に178度、応答速度は4ms(GTG時)となっている。ノングレアゆえ画面への映り込みはほとんどないのも利点だ。ちなみにタッチ操作には対応しない。
スタンドはボディーと一体化しており、未使用時は背面に折りたためる。横から見るとL字になった構造なのだが、右端が斜めにカットされており、接続ポート類はここに配置されている。斜め方向にケーブルが伸びるので、接続先のPCなどに干渉しにくく、さらに縦置き時にもケーブルがやたらと出っ張らないのも利点だ。
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なお、ここまで見てきた仕様は、同社が販売中の従来モデルの3300/11とほぼ同一なのだが、本製品はUSB Type-Cポートが2基に増えているのが特徴だ。この2基のUSB Type-Cポートを使って何ができるかは後述する。
また、採用しているIPSパネルにおいて、コントラスト比などいくつかの項目は、従来モデルよりも少しずつスペックアップしている。
重量は実測で1009gと、15.6型としてはかなりのヘビー級だ。一般的に、こういったケースでは、大台に乗らないよう何とか重量を削って900g台に抑え込もうとする心理が設計段階で働くものだが、本製品はそれも見られない。
ただし、保護ポーチは100gちょっとの軽量仕様なので、外出先に持ち出すのは合わせて実測1161gで済む。
付属品はこの保護ポーチに加えて、両方の接続方式ごとのケーブルと、最大45Wの接続に対応した充電器がセットになっている。プラグが折り畳めないため持ち歩きにはあまり向かないが、これだけ出力の大きな充電器が付属するのはお買い得だ。
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ちなみに、従来モデルでは汎用(はんよう)性のないACアダプター仕様だったので、そういった意味でも進化している。
●パススルー充電の出力は低め OSDメニューの操作性は?
では実際に使ってみよう。接続用ポートは背面スタンド角の斜めにカットされた面に配置されている。USB Type-Cポートは2基あるが、仕様はどちらも同一なので、いずれのポートを使用しても構わない。
ちなみにUSB Type-Cポートを2基備えるのは、従来モデルとの違いの1つだ。従来モデルだと電源は専用ACアダプターで供給する仕組みで、そのポートは背後から挿す仕組みだったため、設置時に相当な奥行きを取らざるを得なかった。本製品はACアダプターが廃止され、給電はUSB Type-Cポートから行うよう変更されたおかげで、こういった問題はなくなった。
なお、このUSB Type-Cポート2基を使ってのパススルー充電にも対応している。ただし本製品に付属する最大45Wの充電器だが、筆者手持ちの65Wの充電器で試した限り、本製品経由で外部デバイスに供給できるのは最大15W止まりのようだ。
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これだと出力が低すぎて、スマートフォンやタブレットはともかく、ノートPCのバッテリーを回復させるのは難しい。ノートPCと組み合わせて使う機会が多い人は注意したい。
なお、本製品は本体を縦にしての設置も対応している。角度調節はできないが、オプション類なしで縦置きが可能なのは、メリットといっていいだろう。挿したケーブルは上に突き出す格好になるが、ケーブルを挿す面が斜めにカットされているため、垂直に突き出す他社製品と比べると違和感は少ない。
●OSDメニューは初期設定から変更の必要あり
OSDメニューについて見ていこう。OSDメニューはスタンド背面にある物理ボタンを使って操作する仕組みだが、タイムアウトでメニューが非表示になるのが非常に早く、項目を探し切れずに消灯してしまうケースが多い。デフォルト値を確認すると何と「3秒」だった。これまで数多くのモバイルディスプレイを見てきたが、ここまで早く消灯するOSDメニューはお目にかかったことがない。
これは設定を「10秒」以上に変更すれば済むのだが、実はこのOSDメニュー、「戻る」に相当するボタンおよびショートカットがなく、OSDメニューを短時間で消灯させることで、操作を間違ったら最初からやり直すようにし、実質的に「戻る」がないのをカバーしていると見られる。そのため、消灯までの時間を長くすると、かえって不便になる場合がある。どうにもふに落ちない仕様だ。
また、メニューを表示せずに項目の上下ボタンを押すと表示されるショートカットは、一般的なモバイルディスプレイでは「明るさ」「音量」に割り当てられているのがほとんどだが、本製品はそれほど利用頻度が高いとは思えない「入力切替」「モード切替」に割り当てられている。カスタマイズできればそれで構わないのだが、この割り当ては固定で変更できない。これも解せないところだ。
このあたり、何らかの確固たるポリシーがあっての設計かもしれないが、使っている限りはそうした狙いは伝わってこず、一般的なモバイルディスプレイの“作法”からはみ出しているように見える。単純に使いづらいのはもちろん、他社製品に慣れたユーザーが本製品を使った場合、操作体系の違いに戸惑うこともありそうだ。
●従来モデルのマイナーチェンジモデルだが5年保証は大きなメリット
以上ざっと使ってみたが、従来モデルの3300/11をベースに、給電を専用端子からUSB Type-Cへと置き換えたモデルで、その他は細部の変更のみというマイナーチェンジモデルの位置付けであることは間違いなさそうだ。
個人的にはOSDメニューの使い勝手がどうにも慣れないのだが、そこさえ我慢すれば縦置き対応、パススルー充電対応といった昨今のトレンドをしっかり押さえており、大きな欠点も見られない。スタンド一体型でありながらVESAマウントに対応していることに魅力を感じる人もいるかもしれない。
既に6月から販売が開始されており、実売価格は3万円前後だ。15.6型でタッチ操作も非対応であることを考えると、ややお値段は高めという印象だが、5年保証が付属することを考えると、十分にお買い得だろう。現時点では従来モデルも併売されており、そちらは2万円台半ばまで価格が下がっているので(ちなみにそちらも5年保証が付属している)、購入を検討するにあたっては従来モデルも比較対象に加えたいところだ。
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