ポケモンカード「巧妙化する詐欺手口」の闇。“返品すり替え”で10万円の人気カードを騙し取る例も

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2025年09月21日 09:20  日刊SPA!

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スニダンで出品されているポケモンカード
トレーディングカード(トレカ)市場の中でも、空前のブームを巻き起こしているのがポケモンカードだ。2024年10月には、オンラインでもポケモンカードバトルが楽しめるアプリ「ポケポケ」がリリースされ、実物のカード需要がさらに高まったことから、品薄状態が続くほどの人気ぶりとなっている。しかし市場の拡大に伴い、詐欺被害も増加・巧妙化している。
今回は、国内最大級のスニーカー&トレカフリマアプリ「SNKRDUNK(スニダン)」を運営する株式会社SODA 執行役員CBOの神 義詞さんに、ポケモンカード市場の動向や、横行する詐欺の実態について話を聞いた。

◆コレクター・プレイヤー・投機勢が共存するポケモンカード市場の絶妙さ

スニダンは、2021年にスニーカーフリマアプリ「モノカブ」を買収した際に、トレーディングカード(以下、トレカ)の鑑定・検品ができる人材が在籍していたことから、トレカのカテゴリーも取り扱うことになる。

トレカ自体は昔から人気があり、「遊戯王」や「マジック:ザ・ギャザリング」「ワンピースカード」「ポケモンカード」など、それぞれ熱狂的なファンがいる。特にポケモンカードは2023年6月頃に大きな盛り上がりを見せた。

その経緯について、神さんはこう説明する。

「コロナ禍によってトレカ市場全体が活性化したのに加えて、ポケモンは1980年代から続く歴史あるIPであり、世界的に広く知られているため、海外でも人気が高まりました。そして、ポケモンカードのデザインには、著名イラストレーターであるさいとうなおきさんが関わったことも大きな話題を呼びました。

海外ではPSA(世界最大のトレーディングカード真贋鑑定)というサービスがあり、カードの保存状態を評価して価値を保証する仕組みが確立されています。こうした環境も相まって、コレクターやプレイヤーはもちろん、投資的な視点で購入する人々が参入し、結果的にポケモンカードは急激な盛り上がりを見せたわけです」(神さん)

ポケモンカード市場の面白いところは、いろんな目的で参加してくるユーザーの多様性にある。とにかく希少性の高いカードだけを集めるコレクターもいれば、大会に出ながら手元にレアカードをコレクションする人、あるいはシンプルにゲームを楽しむことを目的にしている人など、さまざまな層が共存しながら市場が成り立っているのは、まさに絶妙のバランスだと言えるだろう。

◆「ポケポケ」のリリースでカード人気が急激に上昇

さらに、2024年10月にポケモンカードのオンライン対戦アプリ「ポケポケ」がリリースされると、瞬く間に世界で1億ダウンロードを突破し、月間アクティブユーザー数も約5000万人に達するなど大きな話題を呼んだ。その影響で、いっとき沈静化したポケモンカード人気を再燃させることになったのだ。

「ポケポケの人気をきっかけに実物の紙のカードにも関心が高まり、需要が急増した結果、カードパックは品薄状態が続いており、玩具店やコンビニで『1人2パックまで』と購入制限が設けられています。それだけ供給が需要に追いついていないということであり、海外のユーザーからも人気が高く、第2次ブームとして価格が右肩上がりに上昇しています」

面白いのは、ポケモンカードが日本発のIPであるにもかかわらず、日本で流通している日本語版と海外で流通している英語版は仕様が微妙に異なる点である。コレクターの中には、それぞれの仕様の違いを楽しみながら収集している人もいるなど、世界中の人が欲しがる“希少性の高さ”から、ポケモンカードは今でも非常に盛り上がっている状況と言えるだろう。

◆希少性の高いポケモンカードは「7億円」で取引されたことも

希少性の高いポケモンカードでは、人気キャラクターのレアカードが特に高額で取引されると神さんは話す。スニダンでの取引においても、過去のポケモンカードで700万円の高値で売買されたとか。

「分かりやすい事例としては、初期に発売されたピカチュウやリザードンといった、根強い人気を誇るポケモンのカードは値段が高騰しています。リザードンのカードでいえば、PSAによって最高評価の10と認定されたものがあり、それを有名YouTuberが約5000万円で購入したことで大きな話題となりました。

そのほか、かつて開催されたイラストレーターコンテストで上位入賞者のみに配布されたカードは、世界に数枚しか存在しない超希少品です。数年前には海外で約7億円で購入された実績があり、その価値の高さがうかがえます」

基本的にポケモンカードは1つのパックに5枚入っており、誰でも入手しやすいカードは揃えやすく、購入すれば自然に集まっていく。一方で、ごく一部に存在する高レアリティカードが人気を集め、価格が高騰する傾向があるという。そうしたカードは、おおよそ30パックに1枚程度の割合で封入されているとのこと。

◆ポケモンカード取引に潜む“闇”。巧妙化する詐欺の手口とは

その一方で、ポケモンカードに関する詐欺が横行していると神さんは言う。

「オンライン取引の際は、間に鑑定や検品を挟まないとトラブルが“水掛け論”になってしまうケースが非常に多いんです。例えば、10万円のポケモンカードを買ったとして、届いたものがまったく別物だった場合、出品者は『正しいものを送った』と主張し、対して購入者は 『違うものが届いた』と訴える。こうなると、どちらの言い分が正しいのか証明が難しくなります。

従来多かったのは『購入者がお金を払ったのに、出品者が違うカードを発送する』というトラブルでした。出品者側の対応次第で、状態が『美品』と書いてあっても、実際には傷がある状態でカードが届くなど、購入者は受け身にならざるを得ない状況だったんです」

ところが、直近では詐欺の手口がより巧妙化していると神さんは続ける。

「近年新しく問題になっているのが『返品すり替え』のトラブルです。どういうものかというと、出品者が本物を発送しても、購入者が『説明にない傷がある』とクレームを入れて返品を希望し、出品者が返品を受け入れて返送してもらうと、戻ってくるのは全く別の安価なカードという手口です。

つまり詐欺を行う購入者は10万円のカードを手に入れながら、支払いはせずに済んでしまうわけです。このような悪質な手口が昨年から増えています」

スニダンの場合は、カードを取引する際に運営側が真贋鑑定・検品をし、「本物であること」を確認したうえで購入者へ発送する仕組みを導入している。こうすることで、購入者側は「偽物が届く」のを回避でき、「返品すり替え」のような不正行為を防げるようになっているそうだ。

「ポケモンカードのように偽造品が急増している市場では、『安心して取引できる環境』を提供することが何より大切だと考えています。だからこそ、当社は常に『安全・安心なマーケットプレイスである』という軸をぶらさず、進化する偽造手口にも対応し続けていくことを最も重要視しています」

偽造品を防ぐためには、「いたちごっこ」に近い部分もあるだろう。スニダンは市場にどのような偽物が出回っているのかを常に把握し、鑑定や検品の精度を高めるために日々アップデートを重ねているという。

いまや、普通に入手することも困難を極めるポケモンカード。

その裏では、次々に現れる新手の偽造手口が生まれていることも頭に入れておくべきなのではないだろうか。

<取材・文・写真(人物)/古田島大介>

【古田島大介】
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

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