
離婚し実家に戻ってきた姉
「私は結婚して実家近くで暮らしています。共働きなので、実母には子どもたちが小さい頃、ずいぶん世話になりました。その頃、3歳違いの姉は結婚して遠方にいたんですが、2年前、離婚して実家に戻ってきたんです。姉は昔からわがままな人だったから、両親は最初、受け入れないと言っていたけど、さすがに孫が路頭に迷うのはかわいそうだと姉とその息子を実家で生活させることにしたようです」
ヒナコさん(40歳)は顔をしかめながらそう言った。姉の息子は現在、10歳。ヒナコさんの娘も10歳、下に7歳の息子がいる。ヒナコさん夫婦は共働きだが、夫が脱サラして自営業のため、早朝から働いて夕方には家にいて夕飯を作る。
だからヒナコさんは残業も出張も厭わず働ける。夫婦でそういうシフトを作ってきたのだ。
「姉は戻ってきた当初、仕事も探さず、ふらふらしてばかりいたそうです。父は70歳を超えてもまだ仕事をしている。母も70歳ですが今もパートで働いています。姉は『じゃあ、私が主婦する』と言ったものの、家事もしなかったそう。
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それは両親が、遠方で結婚生活を送っている姉に心配させまいとして言った言葉だったんだけど、姉はだったら私たちの面倒くらい見てくれてもいいじゃないかと受け取ったようです」
姉と母との壮絶バトル
ヒナコさんはため息をつき、「昔から自己チューだったんですよね、姉は」とつぶやいた。その後、姉は近所でパート仕事を始めるが、実家にお金を入れようともしなかった。両親は「せめて食費を」と2人分で3万円を徴収しているという。「家事もほぼ母親任せみたいですね。母は愚痴1つ言いませんが、気になって様子を見に行ったら、かなり壮絶な母と姉の皮肉合戦をやっていました」
母は、姉の帰宅が遅かったため「息子のことをもっと考えてあげなさい」と注意したらしい。すると姉は「私には自由がないのか」と言い出した。
「母になったら人生終わりか、お母さん、自分がそうだったからって私に強要しないでよね」と姉が言えば、「息子の気持ちを考えろって言ってるの。私があなたたちを放り出して遊びに行ったことなんてないわよ」と返す。
「そんなに私を思い通りにしたいの? いいかげんにしてよ、そういうのを老害っていうのよ」と激しい言葉をぶつける。
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建設的な話し合いができない
「母と姉は寄ると触るとそうやって互いを傷つけ合っている。父は2人が争い始めると、自室にこもってしまうみたいです。父に頼まれて、私が母と姉と3人で話し合おうと言ったこともあるんですが……」姉は被害妄想に陥っているようだった。離婚は姉の口うるささが原因だったようで、してもいない浮気を疑われた夫は心身ともに疲弊したという。
「私がこんなふうになったのはお父さんとお母さんのせいだからと姉は言うんです。いい年して親に責任転嫁するのはやめようよと言ったら、姉は『あんたは親にえこひいきされてたから』と。
私はまったくそんなことはなかったからムッとしましたね。私は、姉がした歯の矯正も海外留学もできなかった。両親は姉にけっこう資金をつぎ込んでいたんですよ。姉は親が出してくれて大学に行けたけど、私は奨学金でしたし。
そんなことをつぶやいていたら、母が『こんなことならあんたにお金をつぎ込めばよかった』って。いや、それも話がちょっと違うでしょと思いました」
子どもに罪はないから
結局、母も姉も考え方がおかしいとヒナコさんは感じたという。思い通りにならなかった娘に怒りをぶつける母も変だし、大人になっても親に依存してかまわないと思っている姉も尋常ではない。
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「時々夫がうちの子たちと姉の子を連れて、遊びに行ったり映画に連れて行ったりしています。子どもには罪がないから、親の争いに巻き込まれているのを見るに忍びないと夫は言うんです。それでも姉はきちんとお礼を言うわけでもない」
今もおそらく母と姉の騒動は続いているのだろうが、ヒナコさんはもうあまり介入しないと決めた。その代わりに、おいが真っすぐ育つよう少しでも彼に関わっていこうと夫と話し合っているそうだ。
亀山 早苗プロフィール
明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。(文:亀山 早苗(フリーライター))