マーケターの“月曜日”が変わる? AIエージェント登場で、何が起きるか

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2025年09月23日 05:20  ITmedia ビジネスオンライン

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左からセールスフォース・ジャパン製品統括本部 Director Head of Marketing Cloud 島田崇史氏、HUMAN MADE 経営企画部の木原昌俊氏、LINEヤフー ITプラットフォーム本部の小林菜採氏(MarketingCloud利用推進プロジェクト担当)

 市場調査、顧客や開発チームとの関係構築、プロモーション活動など、マーケターの毎日は忙しない。そんな彼らの注目を集めるのが、マーケティング活動を支援するAIエージェントだ。


【画像】3分野で新しさを得られる(イベント資料より、以下同)


 7月24日、セールスフォース・ジャパンはイベント「Agentforce Innovation Day Marketing & Commerce 本気のAI改革の幕開け −デジタルの未来が、ここから動き出す−」を開催した。6月11日から12日(現地時間)に米シカゴで開催された「Connections 2025」で話された最新情報を基にした、日本国内のマーケター向けの説明会である。


 AIエージェントを活用すれば「マーケターの月曜日が変わる」とセールスフォース・ジャパンの担当者は意気込む。何が変わり、どのような業務効率化が見込めるのだろうか。イベントでは、実際にマーケティング業務でAIエージェントを活用するLINEヤフーとHUMAN MADEの担当者が登壇。AIエージェントを活用することでマーケターの業務や役割がどれほど変わるのか、議論した。


この記事はセールスフォース・ジャパンが7月24日に開催したイベント「Agentforce Innovation Day Marketing & Commerce」内のセッション「本気のAI改革の幕開けーデジタルの未来が、ここから動き出すー」を基に紹介する。


●AIエージェント活用で、忙しい“マーケターの月曜日”が激変?


 米Salesforceの「Agentforce」は、顧客体験と従業員体験、システム基盤の全てを進化させることで、従来のマーケティングの枠組みを変化させるAIエージェントだ。


 セールスフォース・ジャパン製品統括本部 Director Head of Marketing Cloud 島田崇史氏は、AIエージェントの活用で「新しい体験、コミュニケーション、システム基盤」の3点が進化するという。


 その1つが顧客だけではなく、従業員も得られる新しい体験だ。Agentforceをメンバーに組み込み、育てていくことで、マーケターは土日も働く仲間を得られる。休日も情報収集や簡単な分析をAgentforceにしておいてもらえば、月曜日の朝の出社後には、AIエージェントから受け取ったインサイトの分析を自然言語で行えるようになる。まさに「マーケターの月曜日が変わる」体験だろう。


 顧客体験も変化する。企業のWebサイトを訪れたニーズのある顧客は、AIエージェントと会話することで、探し物を見つけられずに離脱するという体験をしなくて済むようになる。1to1パーソナライズの対応を、AIエージェントが行うからだ。


 コミュニケーションでは、これまで一方的だったものが双方向型に変わる。AIエージェントを紙のDMやメール、LINE、SMSなどのチャネルに加えることで、人間の担当者に引き継ぐようなオーケストレーション(複数システムの連携)を可能にする。


 システム基盤はどのように変わるだろうか。MA(マーケティングオートメーション)やCDP(カスタマーデータプラットフォーム)だけでなく、SlackやTeamsなど従業員向けチャネルにもエージェントのレイヤーを加えた「エージェントプラットフォーム」へと進化すると予測する。


 イベントでは、実際にAIエージェントをマーケティング業務で活用しているLINEヤフー ITプラットフォーム本部の小林菜採氏(MarketingCloud利用推進プロジェクト担当)と、HUMAN MADE 経営企画部の木原昌俊氏が対談。AIエージェントへの期待を語った。


●LINEヤフー「AIエージェントでマーケターに求められるスキルが変わる」


 小林氏は、「これまでのAIは、業務効率化を進める意味合いが強かったが、Agentforceでは従業員の意思決定、それによる価値創出に直接貢献する存在になると感じた」と語る。


 「職種や経験レベルといった属人的なものに関係なく、最適な形でサポートしてくれるので、対話によりもっと良いものを生み出すのに貢献してくれる。働くこと自体をポジティブな豊かな経験にするものになったのではないか」(小林氏)


 顧客体験については、B2Bビジネス特有の難しさを挙げ、AIエージェントの影響を以下のように語る。


 「B2Bマーケティングの難しさは、“法人”と“担当者”の2つの人格を相手にしなければならず、アプローチの前に考えておくべきことが複雑なことだ。適切なタイミングで『何が相手に刺さるのか』を判断できるようになるには、経験や勘といった属人的なノウハウに依存してしまっていた」


 しかし、AIエージェントを活用することで「データを基に顧客別の理解を咀嚼(そしゃく)して提案をしてもらえるので、働き方が変わるだろうと期待している」と述べた。


 「AIエージェントの支援により、顧客情報をより深く理解しながら信頼関係を築き、顧客に必要な情報を適切に届けるマーケティングの構築が私たちに求められるようになった。AIエージェントが発展することで生まれた時間の使い方、どのように協業していくのか、どのようにAIエージェントと対話するのかといったことを見極める力が、これからのマーケターに求められるスキルなのではないだろうか。将来的に、どのような職種であろうとも全従業員がフラットに、知りたい情報に対話形式で手にできるような世界観を作れれば良いと考えている」(小林氏)


●「従業員の時間に余裕を」 HUMAN MADEの考え方


 HUMAN MADEでは、毎週土曜日午前11時に新商品をECと店舗で同時に販売開始するというマーケティング戦略を取っている。中には開始5分で売り切れる商品もあるという。


 熱心なファンもいて好調ではあるが、その反面、従業員たちの中には疲弊している人もいるのではないかと木原氏は心配している。


 「毎週全く違うものを販売するし、土曜日に売り始めるので土日にアクセスが集中する。そして月曜日の午前中には販売した商品についてや販売データの振り返りや分析もあり、従業員たちが土日に休めていないかもしれない」(木原氏)


 「マーケターの月曜日が変わるという話をお聞きしたとき、当社にフィットすると思った」と木原氏。「HUMAN MADEというだけあって、分析をExcelでガリガリと行っていた時代もあったが、今はだいぶ自動化できている。それでもまだ作業に追われている従業員がいるので、Agentforceで需要予測までできるようになれば、従業員は企画立案に時間を割けるようになるのではないかと考えている」と期待を寄せる。


 別の期待もある。「フラッシュセールでは、その時にしか手に入らない商品が販売される。それを転売ヤ―に買い占められることがある」と木原氏は直面している課題について語る。「その対策を人の目で行っているが、AIエージェントがその役割を担ってくれれば、ありがたい」と語った。


 「機械化できるところはそちらに任せ、従業員たちの時間に余裕をもたせることで、顧客により価値のあるものを提供する。そのような世界を作っていきたい」(木原氏)



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