サートリストラムの血を持つユーバーレーベン(撮影:下野雄規)【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】
◆知っておきたい! 血統表でよく見る名馬
【サートリストラム】
アイルランドで誕生し、競走馬としては大きな実績を残せませんでしたが、ニュージーランドへ渡って種牡馬入りすると大成功。同国で1回、オーストラリアで6回リーディングサイアーとなりました。生涯に送り出したステークスウィナーは140頭以上に及びます。
その父サーアイヴァーは、手綱をとった名騎手レスター・ピゴットが、英三冠馬ニジンスキーを差しおいて「私が乗った最高の馬」と評したほどハイレベルな能力を備えていました。しかし、サイアーラインを形成する能力はもうひとつで、北半球ではこれといった後継種牡馬を残せませんでした。しかし、同じ1971年に誕生したサートリストラムとインペリアルプリンスが、それぞれニュージーランドとオーストラリアに繋養されて成功を収め、とくに前者はザビール、グローヴナー、マローディングといった後継種牡馬も成功し、一大勢力を築きました。
基本的にはスタミナタイプですが、あらゆるカテゴリーで活躍馬を量産したので、万能型といってもいいでしょう。
最も優れた後継種牡馬であるザビールは、スタミナを武器にニュージーランドとオーストラリアの双方でリーディングサイアーとなりました。その直系の子孫であるサヴァビールはニュージーランドで10回、ロンロはオーストラリアで1回リーディングサイアーとなっています。
サートリストラムの血を持つわが国の重賞ウィナーは、ユーバーレーベン、ビービーガルダン、プリモシーン、ベルカント、コスモキュランダ、マイネルエンペラー、マイネルファンロンなど14頭います。
◆血統に関する疑問にズバリ回答!
「デビュー時に人気薄だった名馬は?」
大レースを勝つような馬は、デビューする前から期待され、新馬戦で人気に推されるケースがほとんどです。しかし、なかには人気薄で出走した馬もいます。
たとえば、年度代表馬のタイトルを取った馬のなかでデビュー戦の人気が最も低かったのはトウメイ(1966年生)。札幌の新馬戦に出走した際、8頭立ての6番人気でした。同馬は翌春、桜花賞2着、オークス3着と好走し、5歳時に本格化。1971年の天皇賞(秋)、有馬記念を連勝し、牝馬ながら年度代表馬に選出されました。繁殖牝馬としても、天皇賞(秋)を勝ったテンメイや道営競馬で活躍したホクメイを産んでいます。
顕彰馬では戦前に活躍したセントライト(1938年生)が挙げられます。わが国初の三冠馬です。3歳春のデビュー戦は12頭中7番人気でした。このレースをセントライトは5馬身差圧勝します。兄弟にトサミドリ、クリヒカリ、タイホウ(大鵬)がいる超良血で、セリでは当時の日本ダービー1着賞金の3倍以上という高額で落札された高馬でしたが、デビュー前、ハイレベルな能力が外部に広まらないよう、厩舎が情報を外に出さず、それが原因で人気にならなかったようです。
ちなみに、セントライトの血を引く馬はいまも存在しています。最近の重賞勝ち馬では、2024年のチューリップ賞を勝ったスウィープフィートがこれに当たります。