ゴディバも加わった「ドバイチョコ」旋風、人気の秘密は?

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2025年09月23日 08:11  ITmedia ビジネスオンライン

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SNSで話題のドバイチョコ

 ドバイで誕生した「ドバイチョコレート」が、世界的なトレンドとなっている。


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 板チョコの中に、ピスタチオクリームとカダイフ(またはカダユフ、小麦粉やトウモロコシ粉でできた極細麺)をフィリングしたチョコレートで、断面の鮮やかな緑色や、カダイフによるザクザクとした食感が特徴だ。


 2023年末頃からTikTokやInstagramなどのSNSをきっかけに世界中に広まり、関連動画の再生回数は数億回を超えている。


 このトレンドを受け、日本でもドバイチョコや関連商品を発売する企業が増えている。トルコのスイーツブランド「divan(ディヴァン)」は、2025年1月から日本展開を開始。松屋銀座で常設店を構えるほか、オンラインでもドバイチョコ商品を販売している。スイスのチョコレートブランド・リンツやゴディバも同トレンドに注目し、独自にアレンジしたドバイチョコ商品を展開している。


 リンツ&シュプルングリージャパン、及びゴディバ ジャパンに、ドバイチョコが人気を得た背景と各社の販売戦略を聞いた。


●ザクザクの「咀嚼音」や「見栄え」で人気に


 ドバイチョコのルーツは、ドバイの小さなチョコレートブランド「FIX Dessert Chocolatier(フィックス デザート ショコラティエ)」が開発した「Can't Get Knafeh of It」(訳:クナーファの虜になって抜け出せない)という名前のチョコレートバーだ。


 同商品は、カダイフにチーズやクリームなどを包んで焼き、上からシロップをかけた中東の伝統的なデザート「クナーファ」に、インスピレーションを得て開発。板チョコの中に、ピスタチオクリームとタヒニ(ゴマペースト)、カダイフをフィリングし、表面にカラフルなデザインを施している。2022年にアラブ首長国連邦で売り出したところ、SNSを通じて人気が急上昇した。


 トレンドの火付け役は、ドバイのインフルエンサーによる2023年12月のTikTok投稿だ。チョコを割ったときの鮮やかな緑色の断面や噛(か)んだ時のザクザクとした咀嚼(そしゃく)音が、大きく注目された要因とされる。同投稿は、現時点で730万の「いいね」が付いている。


 「ドバイチョコレートには、味覚だけでなく、視覚・聴覚・感性に訴える“体験型スイーツ”としての魅力があります。ピスタチオのリッチな味わいやカダイフによる独特の食感、音に加えて、高級感のある商品ビジュアルがSNS映えし、現代の共有文化と非常に相性が良いのだと思います」(リンツ&シュプルングリージャパン 広報担当者)


 SNSの人気カテゴリーの一つに、聴覚や視覚の刺激による心地よさやゾクゾクした快感を誘発する「ASMR」があり、ドバイチョコはまさに同カテゴリーにハマった。関連投稿は、断面の映像や咀嚼音を強調する動画が目立つ。それらが、「食べてみたい」という消費者の欲求につながったようだ。


●ゴディバは「進化系ドバイチョコ」で好調


 2024年には、ドバイチョコの人気が世界的に広がった。例えば、トレンドに敏感な韓国では、ドバイチョコをモチーフにしたクッキーやクロワッサン、餅菓子など幅広く展開している。


 日本でも2024年夏頃から徐々に認知度が高まったようだが、リンツでは「国内での本格的なトレンドの波は、2025年になってからだと認識している」とのことだった。


 ゴディバでは、2025年6月にドバイチョコレート風スイーツとして、「ドバイチョコレート ショコリキサー」(レギュラー:810円、ラージ:920円、テークアウト価格)、「ドバイチョコレート パフェ」(1890円)、「季節のコロネ(ドバイチョコレート)」(507円)を期間限定で発売した(いずれも終売)。


 ドバイチョコの特徴であるピスタチオや、カダイフをイメージした揚げ麺を活用し、「進化系ドバイチョコ」として、独自のアレンジを加えた。


 「ドバイチョコは、ASMR動画などで注目された後、メディアでも露出が増え、当社でも注目していました。話題性のあるチョコレートをシーズナル商品として展開することで、さらに話題を広げたいと考え、開発にチャレンジしました」(ゴディバ ジャパン 広報担当者)


 ドバイチョコのトレンドが後押しとなり、発売後の反響は予想以上だったという。トレンドに敏感な20〜30代を中心に好調で、ショコリキサーは普段の客層とは異なる男性客からも支持を集めた。発売初日から人気が高く、完売する店舗もあったそうだ。10月にはショコリキサーを再販予定で、近々ドバイチョコの新商品も予定しているという。


●リンツは限定2万枚が3日で完売に


 国内で103店舗(9月18日時点)を展開するリンツも、2025年から複数のドバイチョコ商品を展開している。


 まず、3月に限定2万枚で「ドバイスタイルチョコレート タブレット」(2900円)を発売したところ、3日で完売するほど好調だった。4月には同シリーズに「バー」(1300円)、「プラリネ」(3500円)のラインアップを追加。現在も3商品を販売しており、これまでに約63万個(8月17日時点)を売り上げている。


 さらに、9月5日からは全国30店舗、合計6000杯限定で「ドバイスタイルチョコレートドリンク」(1480円)を発売した。


 「ドバイチョコの世界的なトレンドや顧客のニーズ調査からヒントを得て、当社のチョコレートのコクや味わいを生かせるレシピとして、ドバイスタイルチョコレートを開発しました。SNS映えを求める若年層に限らず、従来のリンツファン、映えを超えた本物志向の層をターゲットに据えており、幅広く支持されています」(リンツ&シュプルングリージャパン 広報担当者)


 品質面では、フィリングにはピスタチオペーストを45%使用し、カダイフの食感に甘味と塩味の絶妙なバランスが後を引く味わいに仕上げた。ドリンクにはイタリア産のピスタチオを使用したほか、自社商品のタブレットをトッピングし、金粉をあしらって価格以上の特別感を演出した。そのぶん、通常の季節限定のドリンクが898円のところ、同商品は1480円と高価に設定したそうだ。


 「発売当初は、トレンドに敏感な層のお客さまから好評でしたが、現在は『本物志向の特別な味わい』を求める層にも支持が広がってきました。ドリンクは、発売3日間で用意数(6000杯)の20%を超える売れ行きで大きな反響をいただいています」(リンツ&シュプルングリージャパン 広報担当者)


●高価でも「特別感」が購買意欲に


 高品質なピスタチオは原価が高いこともあり、ドバイチョコは比較的高価な商品が多い。高級チョコレートメーカー各社も、品質にこだわったぜいたくさを打ち出し、やや高価格で販売している。物価高が続くなか、高価格帯でも人気を得ている背景に、どのような要因があるのか。


 「メディアでの露出や新しいものに対する興味の高いお客さまが多かったことなどが、反響につながったと考えています。例えば、当社のベーカリー『ゴディパン』で販売されたコロネは、『話題になっているドバイチョコレートだから食べてみたい』と店頭で商品を見て、購入される方が多く見られました」(ゴディバ ジャパン 広報担当者)


 「ドバイチョコレートがトレンドになった背景として、独特の食感や味を試してみたいという欲求をかき立てるほか、『ピスタチオ』というフレーバーの根強い人気の高さも実感しています。また、当社商品の反響の大きさから、比較的高価でも相応の特別感が得られるのであれば、試してみたいと思っていただけるお客さまが多いのだと感じています」(リンツ&シュプルングリージャパン 広報担当者)


 話題性をきっかけに手に取る人が多い一方で、リンツでは味わいの評価も高いという。


 ドバイチョコのトレンドは続くのか。2025年4月のBBCの報道によれば、ドバイチョコのルーツとなるチョコレートバーは依然人気が高く、アラブ首長国連邦のみで販売、しかもフードデリバリーアプリを使ってのみ注文でき、1日2時間の間しか買えない。そのため、数分以内に売り切れることも少なくないという。


 国内では、ドバイチョコのクッキーやワッフル、大福など「進化系」と呼ばれる商品も続々と登場。さらに市場が広がっているようだ。


(小林香織、フリーランスライター)



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  • 先日、リンツの店頭で見ましたが…(買うかどうしようか随分迷っていたので…)味見は断りました…。買うぞ!って時は頂きますが…ね…。
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