伊藤隆敏さん 【ニューヨーク時事】マクロ経済や国際金融研究の第一人者で米コロンビア大教授の伊藤隆敏(いとう・たかとし)さんが20日、死去した。74歳だった。伊藤さんの研究室が23日発表した。死因は明らかになっていないが、病気で療養中だったという。
一橋大経済学部を卒業後、同大大学院で経済学修士号、米ハーバード大で経済学博士号を取得。国際通貨基金(IMF)調査局の上級審議役や大蔵省(現財務省)の副財務官を歴任したほか、東大などで教壇に立ち、2015年からコロンビア大国際関係・公共政策大学院の教授を務めていた。
中央銀行は物価上昇率の目標値をあらかじめ設定して政策運営を行う「インフレ目標」を導入すべきだとの持論を早くから展開。かつて目標値の導入に消極的だった日銀の金融政策に批判的な立場を取っていた。
06〜08年には政府の経済財政諮問会議の民間議員も務め、構造改革と緩和的な金融政策の下で経済成長率を高める「成長重視」の理論を提唱。08年には福田康夫首相(当時)が伊藤氏を日銀副総裁にする人事案を提示したが、正副総裁人事が政争の具になったため、国会で同意が得られず実現しなかった。ただ、その後も日銀総裁を務めた白川方明氏や黒田東彦氏の後任候補の一人として名前が挙がった。