札幌家裁=札幌市中央区 出生時の性別と性自認が異なるトランスジェンダーの当事者が戸籍上の性別変更を求めた2件の家事審判で、性器の外観を変えるよう求める性同一性障害特例法の規定について、札幌家裁(佐野義孝裁判長)が「過剰な制約を課すもの」として「違憲、無効」と判断し、性別変更を認める決定をしたことが24日、分かった。
決定はいずれも19日付。広島高裁は昨年7月、差し戻し後の家事審判の決定で、外観要件について「違憲の疑いがある」としていたが、違憲とする司法判断が明らかになったのは初めて。
審判を申し立てたのは、いずれもトランスジェンダーの女性と札幌市の30代男性。性別適合手術を受けておらず、副作用の懸念からホルモン療法も行えないため、外観要件の違憲・無効を訴えていた。
決定は外観要件について、当事者の多くは混乱を避けるため公衆浴場などの利用を控えていると考えられ、必要性が低くなっていると指摘。特例法制定後に医学的知見が進展し、外性器の手術を必要としない場合もあるとして、「要件を課すことは合理的関連性を欠く」とした。
その上で、外観要件は「身体への侵襲を受けない自由」の過剰な制約で、個人の尊重などを定めた憲法13条に違反すると結論付けた。性別変更の家事審判は争う相手方がいないため、決定は確定する。