
花田十輝さんのシナリオと高い音楽性でヒットした東映アニメーションのテレビシリーズ『ガールズバンドクライ』(以下「ガルクラ」)。2024年に放送された本作は、中島美嘉さんやAimerさんのプロデュースを手がけ、近年は『鬼滅の刃』遊郭編のオープニングテーマ「残響散歌」をヒットさせた音楽プロデューサー・玉井健二さんが関わっていることでも話題になりました。
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◆アニメで終わらずリアルでもバンド活動
オーディションで集められた5名のキャストはそれぞれ高い音楽性が求められ、なおかつ声優としても活動できるマルチな才能も必要ということで、彼女たちの発掘およびプロデュースを担当した玉井さんでさえ当初は企画に対して若干の尻込みをしたそうです。
それでも運命に引き寄せられるように集った彼女たち「トゲナシトゲアリ」(以下、トゲトゲ)メンバーは、テレビアニメシリーズをやりきっただけでなく、2025年9月23日には日本武道館での単独ライブを成功させるまでに成長しました。そんな本作が、全13話のテレビシリーズを前後編で総集編映画化。前編を2025年10月3日、後編を11月14日に公開します。
さらに日本武道館のライブでは、新作ゲーム「ガールズバンドクライ First Riff」の続報、来年2月よりスタートするZeppツアー、そして完全新規の続編映画まで発表されて大きな反響を呼びました。
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そこで本稿では、今後さらに注目が集まる『ガルクラ』を筆者が完全初見で一気見。『ガルクラ』に対して感じたこと、劇場版総集編に期待することを紹介したいと思います。そのキーワードは「ドラム担当の視線」です。
◆物販やチェキまで再現してる!の驚き
本作は、高校を中退して熊本から上京してきた井芹仁菜(いせり にな)が、元プロのストリートミュージシャン・河原木桃香(かわらぎ ももか)と出逢ったことでバンド「トゲナシトゲアリ」を結成。自身の現在地に迷いながら音楽に希望を見出していくという青春物語です。
メンバーは、ボーカル担当の井芹仁菜(声:理名)、ギター担当の河原木桃香(声:夕莉)、ドラム担当の安和すばる(あわ すばる/声:美怜)、キーボード担当の海老塚 智(えびづか とも/声:凪都)、ベース担当のルパ(声:朱李)の計5名。
上京したばかりの仁菜が、音楽経験もないはずなのにストリートで歌うことになる第1話の流れを見て、その圧倒的な歌唱力にハッとさせられた人も多いはず。筆者もあのシーンで思わず「この歌声好き!」となりました。
ストーリーは比較的リアルな路線となっており、活動費を気にしながらのライブ、少し重めの各々の事情、人間模様を中心に置きつつ、やがてメジャーの世界を目標にする5人の姿が紡がれます。おもしろかったのはそれら青春模様を彩る細部のディテールでした。
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たとえばライブハウスの描写や雰囲気は、筆者が参加するようなライブそのままの光景。物販の様子だったり、演者とツーショットが撮れるチェキで列ができていたりするところなどはまさにライブの「あるある」です。また「どの出演者を見に来ましたか?」というライブハウス定番のアンケートを運営が参考にしているあたりも思わずニヤリとしました。

もっとも注目していたのはドラムの目線。個人的にドラムの人は最後列で各メンバーの様子を見守っていてほしい!と思っているので、ドラム担当のすばるが演奏シーンでどのような動きをするのか気になっていました。
ドラムは演奏全体を制御するポジションであり、ユニットのリーダーとはまた異なる部分での“まとめ役”を担うことが多いと、以前とある音楽番組で知って「なるほど」と思ったことがありました。
個人的に好きで現場にもよく行くのが、2000年代に「ハナマル☆センセイション」をヒットさせ、2025年10月26日にデビュー20周年ライブを控えた“アキバ系アニソンバンド”の「Little Non.」。ドラム担当のDynama伊藤さんが後ろからメンバーを見守り、楽しそうにドラムを打ち鳴らしている姿が印象的です。「Little Non.」はアドリブで脱線し、なかなか曲に入らないなどのネタやお遊びがあるのですが、演奏面だけでなく、そういった盛り上げ要素のリード役も担っているのでしょう。
『ガルクラ』ではそのドラムを女優の卵であるすばるが担当。すばるは仁菜と同じくバンド初心者ではあるのですが、作中で「ドラムが合っている」と発言していた通り、普段も見守り役として仁菜と桃香の緩衝材になったり、さりげない気遣いをしたりして、表で見せる表情とは異なる素顔を持っているようなキャラクターに感じました。
衝突寸前の仁菜と桃香を居酒屋に連れて行った際も、わざわざ2人の間に陣取り、おそらく過剰にヒートアップしないよう配慮しただろうシーンも好印象です。コメディリリーフ的な役回りもあったかと思われますが、自然に周囲のフォローに動ける勘のよさと行動力は彼女ならでは。おそらく彼女がいなければ仁菜と桃香は早々にケンカ別れしていたでしょうし、その後のエピソードでも文句を言いつつ、メンバーをいつでも温かく迎え入れる彼女の人のよさがとても強く印象に残りました。
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シリーズ序盤では自分の演奏に夢中だったすばるが、活動に慣れ、周囲を見渡せる心の余裕が生まれただろう後半でチラリと仲間たちを見たような気がするのは気のせいではないはず。本作『ガルクラ』は、山あり谷ありの物語はもちろんのこと、細部の描写や演出にも注目すると新たな発見ができてますます好きになる作品です。
◆映画にライブにゲーム…盛り上がりを見逃すな!

また劇場版総集編はただシリーズを分割しただけではなく、新規カットの追加、そして音にこだわった調整がされているとのこと。とくに音響は劇場というリッチな環境に合わせて細かな部分まで聞けるようになっていたり、ギターの音色など「生演奏感」が強かったBGMがさらにリアルに聞こえるようになっていると思うので、テレビシリーズとはまったく異なる視聴体験が得られるはず。
9月23日に開催された初の単独武道館ライブ「トゲナシトゲアリ LIVE in 日本武道館 "奏檄の叫"」だけでなく、9月27日・28日に一般日が開催される「東京ゲームショウ2025」にもブースを出展する『ガルクラ』。試遊可能なミニゲーム「桃香(を)ワッショイ」や、開発中の別のゲーム「ガールズバンドクライ First Riff」、今後のライブ活動などこれからまだまだ盛り上がる企画が数多く用意されている本作に、劇場版総集編から入ってみてはいかがでしょうか?
なお公式YouTubeチャンネルでは、各楽曲の試聴、ライブの様子、理名さん・夕莉さん・美怜さん・凪都さん・朱李さんの素顔が見られる動画が数多くアップされているので、そちらもぜひ。
「劇場版総集編 ガールズバンドクライ 【前編】 青春狂走曲」は10月3日公開です。


(C) 東映アニメーション
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