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※画像生成にAIを利用しています 近頃「Vシネ」という単語をめっきり聞かなくなった。そもそもVシネとはレンタルビデオ専用シネマという意味で、かつては成人向け作品をビデオショップで借り、夜中にこっそり楽しんだ男性も多いだろう。
年齢制限はあるものの、成人向けビデオとは分類が異なるのが最大の特徴。あくまで「露出はあれど、特定の行為だけにフォーカスしたものではない」のだ。
最近は成人向けVシネもレンタルだけではなく、一部VODで視聴可能なようだが、縮小傾向は否めない。売り上げが減少すれば撮影の仕方を工夫しなければならず、かといって尺を大幅に縮めるのも難しい。時代が進むにつれてVシネ撮影の裏側は、なかなか大変なものとなっている。
◆Vシネは予算が少ない
今はレンタルビデオショップも減り、成人向けだと配信可能なVODも限られてしまう。おまけに「ムフフを楽しみたいなら、別にビデオを観たらいいじゃない」といった声が増えたせいで、Vシネ界隈は長年苦戦を強いられている。
そもそも若者にとって、サブスクオリジナル作品や独占配信は身近なものだけれど「Vシネマ」に関してはあまり馴染みがないのだ。
本数が伸びなければ予算を捻出できないのは当然のこと。よって成人向けVシネは、スタッフ・出演者ともに少数で構成される。撮影を外撮り+1つのハウススタジオのみで済ませ、経費削減に忙しい。
撮影日数が延びるほどお金がかかることから、2〜3日でババっとまとめるタイトなスケジュールが基本である。たまに地方で撮影されている作品もあるが、ここで「なんだ、お金あるんじゃん」と思ってはならない。たとえ遠方ロケでも、温泉を舞台にした作品などは撮影所と宿泊場所が同じなので、予算は変わらず移動の大変さがプラスされる程度だという。
◆経費削減のため飲食代も最小限
一応セクシー業界は現場女優への配慮もあって、激安弁当を出すことはほとんどない(私は半額シールが貼られた弁当を出されたことがあるが、これは完全なる例外)。しかしVシネに関しては、食事が驚くほど質素。軽食などの“つなぎ”はなく、3食ずっと同じスーパーの弁当が出てくるなど、決して珍しくはないのだ。
一部のファンに支えられているからこそ制作は続いているものの、予算の増枠は非常に難しいのが現状と言えようか。制作陣は限られた中でどうするかを徹底的に考え抜くため、贅沢の二文字はまず頭にない。
◆女優がVシネに出演する理由
「予算がない=高額ギャラを用意できない」という理論は、私が説明せずともすぐにわかるだろう。それでもセクシー女優がVシネのオファーを受けるのはなぜか。
「もともと演技が好き」「挑戦したい仕事の一つだった」などの理由はあれど、やはり出演することが演者としてのステータスとなる。
正直なところ、ビデオ出演だけをしていても女優としての箔はつけられるだろう。しかし、その先を見据えているとか、活動の幅を広げたいのなら「本業」以外の出演歴が重要となってくるのだ。
たとえ演技上手とは言えなくても、何度もVシネに挑戦した経歴を聞けば企業側は「セリフを覚え、長時間の現場に対応できる根性マン」「ギャラだけでオファーの選別をしない人(=対応可能な仕事が多い)」といった印象を受けるだろう。
やはりどんな世界でも、柔軟な人は注目されやすいのだ。
◆ビデオ撮影の方が稼げるが…
なお、Vシネ撮影で3日間拘束されるなら、ビデオ撮影で1日稼働した方が絶対に稼げる。でもそのリスクを取ってまでも挑戦する姿勢というのが何よりも大切で、投資した時間や苦労が後になってから返ってくるものだ。
ただ、あくまでこれは何度も頑張った人のみ。残念ながら1回2回程度の出演かつ、どちらも相当なチョイ役なら箔がつく以前の問題だと強く主張しておきたい。
Vシネの文化そのものは縮小傾向にあっても、演者にとっては大事な仕事の一つであり、熱狂的なファンにはなくなってほしくない「文化」である。
どんなに規模が小さくとも、時代を支えた文化が衰退するのは少しばかり寂しく思う。成人向け映画同様、撮影そのものは大変でもどこかで盛り返してほしい……と、勝手に願う自分がいる。
文/たかなし亜妖
―[元セクシー女優のよもやま話]―
【たかなし亜妖】
元セクシー女優のフリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ソーシャルゲームのシナリオライターを経て、フリーランスへと独立。WEBコラムから作品レビュー、同人作品やセクシービデオの脚本などあらゆる方面で活躍中。