
9月21日、福岡県北九州市小倉北区の旦過市場そばにある菅原神社では、参加25匹中14匹が黒猫という「黒猫だらけの譲渡会マルシェ」(猫雑貨とギャラリーの店「ハイツくろねこ」主催)が開催され、多くの来場者で賑わった。そんななか、譲渡会場の隣、猫雑貨など16の物販ブースが並ぶ部屋に、ひときわ目を引く大きなハチワレの巨大看板猫を発見。これは一体なに?
【写真】マルシェ会場に出現した180センチの“看板猫”アート その存在感、圧倒的です
ハチワレの「巨大看板猫」は縦1.8メートル×横1メートルで、身長180センチの人と同じ高さ。会場を訪れた人たちは「かわいい!」などといいながら記念写真を撮り、笑顔で会場をあとにしていた。
この巨大看板猫を制作したのは、北九州市在住の猫作家「ネコかぶってますが」さんだ。巨大看板猫は今年(2025年)8月、同県行橋市で開催された猫作家20人の作品展示会で「デビュー」。会場に置くと来場者から好評だったため、そのときは同じサイズの巨大茶白猫だったが「より高いクオリティを目指し」展示3度目の今回、ハチワレ柄に作り替えて出展した。
「お店に看板猫が『いる』とは言いますが、看板猫が『ある』とは言わないなあと。それで猫の看板を、存在が目立つよう大きく作って置いてみたら面白いんじゃないかと」と、ネコかぶってますがさんはほほえむ。
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この巨大看板猫、今後は北九州市内限定で貸し出しをする。題して「街をアートに〜猫の手もかりたいプロジェクト」。貸し出し期間は3日から最長2週間。レンタル費用は無料。
「これを商店街の店先とかに置いておけば、何これ?と、一緒に写真を撮るフォトスポットになったり、お客さんとの会話が始まるきっかけになったりするかもしれません。街を盛り上げる一つのアイテムとして、役立ててくれたら嬉しい」とネコかぶってますがさんは話す。
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ネコかぶってますがさんは、全国でも数少ない、猫のかぶりものを制作している作家だ。5年ほど前、猫柄のデザインが入ったネクタイブランドを立ち上げた。宣伝のためには何かキャラクターが必要。だが、自身の顔出しはあまりしたくない。そこで考えたのが猫のかぶりものだった。
「元々、手先は器用なので、自宅で飼っていた愛猫をモデルに作ってみたのが最初です。私が作ったかぶりものを長女がかぶって街を練り歩き、注目を浴びたこともありました。そのうち『作ってほしい』という声が届くようになったので、オーダーメイドを受けるようになったんです」(ネコかぶってますがさん、以下同)
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猫のかぶりものを作り始めたばかりのころ、忘れられない出来事があった。「福岡県内に住む60代の女性から『長年一緒に暮らし、今は亡くなってしまったキジトラの愛猫を作ってほしい』とのオーダーがあったんですよ。完成したかぶりものを女性に見せたら、見るやいなや泣きぐずれてしまって…。そのとき思ったんです。自分が作ったものでこんなに人を感動させることができるんだって」
以来、ネコかぶってますがさんは猫のかぶりもの作家として活躍している。作品は京都で有名な猫アートミュージアム「猫猫寺」をはじめ、全国各地の猫かぶりものファンの間で重宝されている。
こだわりは「あまりリアルすぎないこと」。制作は1週間ほどかかるそうだ。費用は頭が7万円。頭、手、足、尻尾4点セットが10万円(いずれも税込)という。
「注文してくださる方は『猫になりたい』『変身したい』という方が多いですね。かぶってみるとわかりますが、人がたくさん寄ってきます。写真も撮られまくります(笑)。人気者になった気分になり、ハマる人は少なくないです。そんなかぶりものの魅力をぜひ一度、味わってほしいです」
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今年2月、10年来、自宅で一緒に暮らしてきたハチワレの「福ピー」が天国へと旅立った。街なかで保護され引き取った子。糖尿病を患っていたが、元気だったのに、ある日突然、ぐたっとして食欲もなくなり、すぐに病院へ連れていったが、はっきりした原因もわからず帰らぬ猫となった。
「まだ若いのに突然逝ってしまったこともあり、喪失感は今もあります。表情やしぐさを観察するなどして、創作をそばで見守ってくれていました。まだ新しい子を迎えるという気にはなかなかなれませんが、今はありがとうとの思いでいっぱいです」
かぶりもの制作で日々忙しいネコかぶってますがさんだが、他にもやってみたいことがたくさんあるという。
「猫作家さんたちを盛り立てる企画や、地域でお店をやっている人たちの情熱が伝わるようなウェブサイトの立ち上げをやってみたいです。街おこしは、一過性のイベントをやって終わりではなく、行きたい人が行きたい時に行きたい場所で楽しめることが大事なんじゃないかと。たとえばですが、商店街に出かけたら、各店の人たちがみんなその日は猫のかぶりもの姿だったりとか(笑)。かぶりものや巨大看板猫アートを通じて、街の人たちが笑顔になってくれたらいいですよね」と話した。
「ネコかぶってますが」さんのインスタは @wearing_a_cat (注文はDMにて受付)
(まいどなニュース特約・西松 宏)
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