理論性能はPS5超えのポータブルゲーミングPC「Lenovo Legion Go 2」でゲームをプレイしてみて分かったこと

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2025年09月29日 12:10  ITmedia PC USER

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10月から順次発売される「Lenovo Legion Go 2」

 Lenovoが9月4日(ヨーロッパ中央時間)にドイツ・ベルリンで開催した自社イベント「Lenovo Innovation World 2025」では、イベントに合わせて発表された新製品やコンセプトモデルが展示された。


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 本稿では、イベント展示で注目度の高かったポータブルゲーミングPC「Lenovo Legion Go 2」の試遊インプレッションと、Lenovoの重役や開発メンバーに対して自由な質問が行えたラウンドテーブルセッションの模様をお届けする。


●ポータブルゲーミングPCに注力するLenovo


 これまでも、一般的なノートPCより小さいフォームファクターとして「UMPC(Ultra Mobile PC)」というジャンルは存在したが、2020年代に突入して急激に人気を集めるようになってきたのは、ゲーミングに特化したUMPCであるポータブルゲーミングPCだ。この製品ジャンルの人気が一層加速するきっかけとなったのは、2022年に発売されたValveの「Steam Deck」であることは間違いない。


 このSteam Deckは、価格と性能のバランスをちょうど良い“落とし所”でまとめていたこともあり、こうしたニッチなジャンルの製品としてはかなり売れた。


 その後、価格をさらに重視した感じの類似製品や、逆に価格を度外視して性能を極めた類似製品などが、世界中の多様なメーカーから誕生した。プロトタイプを公開しただけで発売できなかった製品も多かったが、Steam Deckの発売から3年が経過しそうな現在では、このジャンルに継続的に製品をリリースするメーカーの顔ぶれが固定化してきた感もある。


 かくいうLenovoも、この製品ジャンルに力を入れているメーカーの1つだ。2023年に初代「Legion Go」を投入し、2025年1月には「Legion Go S」を発売した(日本未発売)。


 ややこしいのだが、Legion Go Sには大きく2つのモデルがある。1つは「Legion Go S Powered by SteamOS」で、名前の通りSteamOSをプリインストールしている。こちらはLegion Goと同じ「Ryzen Z1 Extreme」を搭載する上位モデルという位置付けだ。


 もう1つが「Legion Go S」だ。こちらはLenovoがカスタムしたSoC「Ryzen Z2 Go」が搭載されているCPUコアはZen 3アーキテクチャの4コア8スレッドで、GPUコアはRDNA 2世代となっており、ベースアーキテクチャはやや古めで、性能も初代Legion Goに及ばない。スペック的には「エントリークラスの廉価機」という位置付けで、OSはWindows 11かSteam OSから選べる。


 今回のイベントでは、1月の「CES 2025」で投入が予告された新しいハイエンドモデルであるLegion Go 2の“実機”がいよいよ試せたのだ。


●Legion Go 2の強化ポイントは大きく2つ


 Legion Go 2のSoCは「Ryzen Z2」または「Ryzen Z2 Extreme」となる。Ryzen Z2 Extremeは、初代Legion GoやLegion Go S Powered by SteamOSが搭載していたRyzen Z1 Extremeの後継という位置付けで、同じ「Ryzen Z2」シリーズでもLegion Go Sが搭載するRyzen Z2 Goとは素性が全く異なる。


 CPUコアは最新のZen 5アーキテクチャを採用しており、8コア16スレッド構成となっている。8コアの内訳は、通常仕様の「Zen 5コア」が3基6スレッド、キャッシュ容量を削減した「Zen 5cコア」が5基10スレッドとなっている。ノートPC向けAPU(GPU統合型CPU)でいうと、「Ryzen AI 7 PRO 360」に近い。


 GPUコアはレイトレーシング対応のRDNA 3.5アーキテクチャで、CU(コンピュートユニット)は16基構成となる。理論性能は約11TFLOPSで、PlayStation 5のGPUコア(約10TFLOPS)を少し上回る。ただし、メモリ帯域は毎秒128GB止まりで、PlayStation 5の毎秒448GBよりだいぶ低い。そのため、メモリへのアクセススピードがカギとなるレイトレーシング処理の活用や、4K(3840×2160ピクセル)といった高解像度ゲーミングではPlayStation 5にはかなわないだろう。


 単体のGPUでいうと、演算性能的には「Radeon RX 6600 XT」(32CU構成で11TFLOPS)に近いが、メモリ帯域的には「Radeon RX 6400」(毎秒128GB)相当といったところ。


 端的にいうと、演算性能は高い反面、メモリ帯域は弱いのがRyzen Z2 Extremeを備えるLegion Go 2の性能特性となる。


 イベントに合わせて実施されたラウンドテーブルにおいて、Lenovoのクリストファー・ピッツァ氏(Lenovo Gaming担当グローバルマーケティングリード)は「Legion Go 2のスペックは、初代Legion Goユーザーから寄せられた要望を精査した上で決めた」と語った。


 強化ポイントの1つ目はディスプレイだ。初代ユーザーから寄せられた「有機ELディスプレイにしてほしい」という要望に応えて、1920×1200ピクセル(アスペクト比16:10)の8.8型有機ELディスプレイを採用した。このディスプレイは最大リフレッシュレートは144Hz、DCI-P3の色空間カバー率97%、標準最大輝度500ニトという仕様だ。HDR表示については「VESA Display HDR True Black 1000」認証を取得しており、HDR表示時に限ってピーク輝度を1000ニトに引き上げることもできる。


 強化ポイントの2つ目は、メモリの容量を最大32GBとしたことだ。初代Legion Goのメモリ容量は16GBだったが、多くのユーザーから「もっとほしい!」というリクエストが寄せられたのだという。


 ちなみに、Legion Go 2はLPDDR5X-8000メモリを128bitバスで接続しているので、メモリ帯域は以下の通りとなる。


(128bit÷8)×8000MHz=毎秒128GB


 一方で、初代Legion Goでは16GBのLPDDR5-7500メモリを128bit接続していたので、帯域は以下の通りとなる。


(128bit÷8)×7500MHz=毎秒120GB


 メモリの最大容量だけでなく、アクセス速度も少し強化されたことになる。


 筆者はピッツァ氏に「これは素晴らしい性能向上だが、メモリ帯域が毎秒128GBだとレイトレーシング技術を活用するゲームにはまだ足りないと感じる。PlayStaion 5は毎秒448GBの帯域を持っているし、レイトレーシング技術を積極活用するには少なくとも毎秒400GB以上の帯域が必要だと考えている。Legion Go 2ではこの機能をあまり積極活用するつもりはないのか?」という質問をした。


 それに対してピッツァ氏は「Legion Go 2でレイトレーシングが全く使えないとは思わない。とはいっても、Legion 2 Goはラスタライズ描画のグラフィックス主体を想定したハードウェアだ」との返答が得られた。


●着脱可能なコントローラーは健在 SSDは「Type2242」を採用


 Legion Go 2は、初代で好評だった着脱可能なゲームコントローラー(パッド)を引き続き採用している。初代向けコントローラーを持っている人は、後方互換性によって本機に装着して使うことも可能だ。


 ストレージはPCI Express 4.0接続のM.2 SSDで、サイズは全長の少し短い「Type2242」を採用している。選べる容量は国/地域によって異なるが、最大で2TBを選べる。ワイヤレス通信はWi-Fi 6E(6GHz帯対応のIEEE 802.11ax)とBluetooth 5.3に対応する。Wi-Fi用のアンテナは2x2(2T2R)構成だ。


 米国における想定販売価格は、Ryzen Z2/16GBモデルが1100ドル(約16万4000円)前後、Ryzen Z2 Extreme/32GBモデルが1500ドル(約22万4000円)前後となっている。発売時期は国/地域ごとに異なり、10月から順次発売され、多くの地域では2025年内に入手可能となる見通しだ。


●Legion Go 2でゲームをプレイしてみた感想


 Legion Go 2の実機を目の前にして感じたのは、とにかく“大きい”ということだ。本機のコントローラー装着時の寸法は約295.6(幅)×136.7(高さ)×42.25(厚さ)mmで、Nintendo Switch 2の約272(幅)×116(高さ)×13.9(厚さ)mmと比較すると一回り大きい。重量も約920gで、Nintendo Switch 2の約534gと比べるとだいぶ重い。


 ただし、Legion Go 2はコントローラー部が分厚いので、両手で持ったときのグリップ感は良好だ。とはいえ、大人でも両手持ちで立ったままプレイし続けるのはつらい。


 ポータブルゲーミングPCとはいえ、テーブルに置いた状態でプレイするのが標準スタイルになる感じはする。


 デモ機は長時間稼働していたはずにもかかわらず、コントローラー部が熱いということはなかった。底面側(手に持ったときの裏面)に大きな吸気口があり、排気口は直上(手に持ったときの上辺)にある。そのため、プレイ中に顔に熱風が吹き付けるようなことはない。エアフローはよく考えられている。


 ただ、吸排気スロットの開口部(穴)は広く大きいので、雨降りや水回りに近いところでのプレイは厳禁なんだろうな、ということは素人目にも分かる。


 ボディーの質感は普通で、安っぽくはない。


 試しにMicrosoftの「Forza Horizon 5」をプレイしてみたが、まず画面が美しいことに気が付く。DisplayHDR True Black 1000認証は、だてではない。有機ELディスプレイらしく黒の沈み込みが強く、明暗差が大きいので非常にコントラスト感が強い。2D映像なのに立体的に見えるほどだ。


 それと有機ELパネルの恩恵か、残像感がほとんど気にならないのもポイントだ。映像パネルの品質に関しては、限りなく満点に近い満足度が得られた。


 Nintendo Switch 2の7.9型よりも一回り大きい、Legion Go 2の8.8型の画面サイズは、手に持ったときには、iPad miniに代表されるミニタブレット端末よりは大きく感じた。


 Legion Go 2の画面の大きさと本体の分厚さは、もしかすると、熱容量設計に配慮して、意図的に大きくしたのかもしれない。


 ゲームの操作感も良好で、少なくともForza Horizon 5をプレイしている限りでは、コントローラ上のボタンの手応えやトリガーボタンの反発力もちょうど良かった。プレイし慣れた家庭用ゲーム機用コントローラーに近い感触で、初めて触った本体とは思えないほど、手になじむ。


 Forza Horizon 5のグラフィックス設定は、ゲームの初回起動時に選択される自動設定のデフォルト状態だったが、描画の引っかかりはなく、操作遅延も感じない。Windows OSのバックグラウンドプロセスの影響に起因したカク付き感もない。


 ゲーミングPCというよりは、ゲーム機に近いキビキビとした動きに感動する。


●専用ドックは「収納」よりも「スタンド」的


 Legion Go 2の専用ドックは、別売りオプションとして設定される。価格は未定だ。


 Nintendo Switchシリーズのドックとは違い、スタンドのようなデザインとなっているが、これは本体側の吸気口をふさぎたくなかったという事情が読み取れる。


 また、このドックにLegion Go 2を挿しただけではスタンドになるだけで、充電は始まらない。充電したい場合は、ドックから伸びたケーブルを本体上部にあるUSB Type-C端子に差し込む必要がある。


 「ドックに挿したら充電が始まる」というような使い方を実現してほしかったところだが、あくまでこのドックはスタンド的な位置付けのため、初めからそうしたデザインは採用する気がなかったのかもしれない。というのも、先述の通りLegion Go 2は大きく重たいので、テーブルの上に置いてプレイする機会が多くなるはずだからだ。


 先述の通り、実際にはスタンド的なドックに置いた状態でプレイすることも多いと思われる。そうなると、本体を握る手に力が入って、スタンド部との接続ポイントを曲げたり折ってしまったりすることがあるかもしれない。このことも、差し込み型スタンドのデザインを避けた理由だと思われる。


●Legion Go 2にAI関連機能は非搭載


 Lenovoといえば、昨今は「AI PC」に注力しているメーカーなわけだが、Legion 2 GoにはAIアシスタント的な機能は搭載されるのだろうか?


 このことをピッツァ氏に尋ねたところ、「Legion Go 2に採用したRyzen Z2 ExtremeにはAIアクセラレーターの機能(NPU)はないため、AI関連アプリを提供する予定はない。将来のことは分からないが、Ryzen Z2シリーズには『Ryzen AI Z2 Extreme』というNPU搭載モデルがある。Legion GoシリーズにAIアシスタント的な機能を搭載するならば、そうしたプロセッサの選択が必要になってくるだろう」と述べた。


 Ryzen AI Z2 Extremeは、Ryzen Z2 ExtremeにXDNA 2アーキテクチャのNPUを統合したモデルだ。Ryzen Z2シリーズでありながら、素性としてはRyzen AIシリーズにも含まれるという面白い立ち位置を取っている。


 ちなみに、XDNA 2アーキテクチャは、AMDが2020年に買収したXilinxのコンフィギュラブルアクセラレータ「DPU(Deep Learning Processor Unit)」をほぼそのまま取り入れたものとなっている。ピーク時の理論性能値は50TOPS(毎秒50兆命令)で、相応に優秀だ。


 AIに関連した話題として、LenovoのAIの取り組みについてこんな質問をぶつけてみた。


 Lenovoは、Intel/AMD/NVIDIAなどさまざまなメーカーのプロセッサを搭載したPC製品や情報端末機器をリリースしていて、各モデルに独自のAI関連アプリを提供している。こうしたAI関連アプリを、仕様の異なる各プロセッサメーカーの推論アクセラレーター(NPU)で動作させるために、どのような体制で開発に取り組んでいるのか。


 すると、ジュン・オーヤン氏(インテリジェントデバイスグループ シニアバイスプレジデント兼コンシューマービジネスセグメント担当ジェネラルマネージャー)がこう答えてくれた。


 プロセッサメーカーごとの推論アクセラレーターの仕様差分は、Lenovo内部で「X(エックス)」という開発コードネームで呼んでいる内製ライブラリー/フレームワークで吸収している。私たちがリリースするPCや端末機器に搭載するAIアプリでは、プロセッサの違いによらず、同じAI体験を実現できる。


 Legion GoシリーズにAI関連機能が搭載されることがあれば、他のモデルと同様なAI関連アプリが提供されることだろう。



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