
「シリーズ現場から、」です。4年前、大分市で起きた時速194キロの車による死亡事故は、きょう午後、控訴審が始まります。一審が認めた危険運転を高裁がどう判断するか?また、遺族の思いも伝えます。
長文恵さん
「わいわい食事する楽しそうな姿とか、今でも思い出すとたまらない気持ちになる」
こう語る長文恵さんは「ある事故で」大切な弟を亡くしました。
2021年2月、大分市で当時19歳の男が運転する時速194キロの乗用車が右折してきた車に衝突。車を運転していた長さんの弟・小柳憲さん(当時50)が死亡しました。
一審の最大の争点は「危険運転が成立するか」。
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長文恵さん
「この運転さえなければ、私の日常が壊されることもなかった。194キロのこの事故がうっかり過失なわけないんです」
一方、弁護側は「車線を逸脱することなく直進走行できていた」と反論。「制御困難な高速度」だったとは言えず、危険運転にはあたらないと主張したのです。
しかし、一審の裁判所が下したのは、「制御困難な高速度」に該当するとして危険運転を認める懲役8年の実刑判決。大分地裁は「直線道路でも、194キロでの走行はわずかなミスで事故を発生させる実質的危険性が認められる」と判断しました。
一審判決について、刑法の専門家は「危険運転が認められる一つの道筋を示した」と指摘します。
松山大学法学部法学科 明照博章 教授
「直進だけでは、裁判所としては制御困難型の危険運転は認められないので、(付加的事情を)かなり積み上げていって、ギリギリ高裁に上がっても維持してもらえるかもしれないと念頭に置いて変えたのかなと思う」
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検察側・弁護側双方が控訴し、きょうから控訴審が始まります。
松山大学法学部法学科 明照博章 教授
「福岡高裁が下した判断は、今後の福岡高裁管轄内の地裁へ影響力も大きくなってくる」
危険運転致死傷罪をめぐっては、法制審議会でどれくらいの速度違反を危険運転とするのか、数値基準を設けるかどうか検討されています。
控訴審を前に長さんの胸にあるのは…
長文恵さん
「今後の抑止になるような判決を求めている気持ちのほうが今は大きい」
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危険運転の判断基準として重要な判例となる控訴審の初公判は、きょう午後2時半に開廷します。