【阪神】坂本誠志郎の「走塁妨害」問題 ケガ防止のため「接触なければ」の柔軟対応はできないか

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2025年09月29日 16:31  日刊スポーツ

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DeNA対阪神 11回裏DeNA無死一塁、投前にバントした山本(後方右)は捕手坂本(後方左)から走塁妨害を受けたとの判定でセーフとなる(撮影・清水貴仁)

<猛虎リポート>



阪神坂本誠志郎(31)がとられた「走塁妨害」が、どうも釈然としない。ルールとしては正解らしい。でも…。なんとかベストに近い運用方法を探れないものかと思った。【柏原誠】


   ◇   ◇   ◇


23日のDeNA戦(横浜)。同点の延長11回無死一塁で、DeNA山本祐大捕手(27)がバントした打球はバッテリー間に転がった。坂本は素早く前に出たが、処理を岩崎優投手(34)に譲るため足を止めた。その瞬間、山本に後方から接触された。打球は岩崎がさばいて一塁アウト。球審の深谷は坂本の走塁妨害をとり、オールセーフの無死一、二塁でプレー再開。藤川球児監督(45)が球審のもとへ確認に向かったが、判定は変わらなかった。


阪神の現場からは「接触がなくても一塁は余裕でアウトだったのに…」との声が多く聞かれた。


不満につながる出来事がその前にあった。8月1日のヤクルト戦(神宮)で坂本が適時打。送球間に二塁を狙おうとしたが、一塁を過ぎた先に立っていたホセ・オスナ内野手(32)とぶつかり、進塁をあきらめた。審判は「走塁妨害を認めるが、接触がなくても二塁には進めなかったと判断して、走者一塁で再開します」と場内にアナウンスした。


確かに矛盾しているように思えるが、実は「走塁妨害」には2種類ある。直接的にボールに関わっている場面と、そうでない場面。前者は自動的に安全進塁させる決まりで、後者は「接触がなければどうだったか」を審判が判断する。オスナの件は後者にあたる。


NPB審判員に確認してみた。球審の対応は規則通りだったという。審判はプレーに際して「守備者」が誰かを決める。この場合は打球をさばいた岩崎になる。仮に坂本が立ち止まらず、打球を追いかけ続けたとしても、あくまで守備者は岩崎。守備優先の原則が消滅した坂本が走路に入ったことで接触が起きた。よって打者は安全進塁−。これが現行のルールだ。


坂本は答えを出せていない。では、どうすべきだったんだと。「弱い打球なら二塁で刺すためにすぐ前に出ます。次にまた同じ状況があっても同じです。あそこのプレーは選手同士が一番近いので、ある程度の接触は仕方ない。何とかならないのかな、とは思います」。立ち止まったのは危険回避のためだが、間に合わずぶつかってしまった。その後のバント処理ではどう動くべきか迷ったという。


右打者のバントではひんぱんに起こるケースだ。意地悪く言えば(山本は違ったが)スタートを遅らせて意図的に走塁妨害を取りにくる選手がいないとも限らない。少なくとも選手たちのジレンマは取り除かなければならない。


先の審判員は「阪神さんの気持ちは分かります。僕たちも余裕でアウトなのにな、と思うこともあります」と厳格にルールを守らねばならない苦しさも明かした。ルールの本質とは一体何かと考えさせられる。


どちらも故意ではないことを大前提に「接触がなければどうなっていたか」の運用範囲をもっと広げてみてはどうか。今はリプレー検証もできる時代だ。当事者の心情から乖離(かいり)したルールは、競技の魅力を損なうことにもつながる。誰もが納得できるような柔軟な対応を考えてほしいと思った。【柏原誠】

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