インテルとミランが本拠地として使用する『サン・シーロ』 [写真]=Getty Images インテルとミランがホームスタジアムとして使用する『スタディオ・ジュゼッペ・メアッツァ』(※ミランのホームスタジアムとしての使用時は旧称の『サン・シーロ』が用いられるケースが多い/本文では『サン・シーロ』の表記で統一)の両クラブに対する売却が、ミラノ市議会で可決されたという。『ガゼッタ・デロ・スポルト』や『スカイ・イタリア』など、複数の現地メディアが30日に報じた。
前提として、現在の『サン・シーロ』はミラノ市が所有する公共スタジアムで、これまでインテルとミランは、市に対して賃料を支払う形で同スタジアムを使用してきた。しかし、同スタジアムが開場したのは1926年と、およそ100年前まで遡り、老朽化も深刻な問題として浮き彫りとなっている。
このような状況を受けて、インテルとミランは2019年、現在の『サン・シーロ』の隣接地に新スタジアムを建設する計画を共同で立案。現在は駐車場となっている土地に、約7万人もの観客が収容可能なスタジアム、加えて敷地内にはショッピングモールやホテル等を併設する複合施設を建設する計画を練り出し、“新サン・シーロ構想”がスタートしていた。
しかしながら、行政面での手続きや一部市民による反対運動等もあって、同計画はなかなか具体的な動きを見せることはできていなかった。一時はインテルとミランそれぞれが独自の新スタジアムを作る構想や、『サン・シーロ』の大改修計画等も報じられていたが、今年3月、さまざまな障壁を乗り越えた末、インテルとミランがミラノ市に対して正式なスタジアム買収の提案書を提出。これを受けて、今回のミラノ市議会における議論が発生していた。
今回の報道によると、ミラノ市議会における議論は約12時間以上におよび、現地時間の30日の早朝、インテルとミランによるスタジアム買収案が可決されたという。賛成は24票、反対は20票、そして棄権は0票だったが、2名の市議会議員は投票に参加しなかったようだ。
この決議により、ミラノ市議会は現在の『サン・シーロ』および周辺の土地を1億9,700万ユーロ(約342億円)で売却することになる。現在の計画では、売却が正式に完了した後、新スタジアムの具体的なデザイン案等が決定し、関係する各機関での承認を経て、2027年前半の着工開始を予定している。当面の間は、インテル、ミラン双方ともに現在の『サン・シーロ』をホームスタジアムとして使用する。新スタジアムは2031年までの完成を目標としており、新スタジアム完成後、地域のモニュメントとして残される一部を除いて、現在の『サン・シーロ』は取り壊される。
一方で、11月10日までに売却のために必要なすべての手続きが完了しなかった場合は、同日は文化財保護監督局の公共建築物に対する第2段階の規制が発動される日のため、11月10日以降も『サン・シーロ』が公共建築物となると、実質的に取り壊しが不可能となるようだ。同様に、現在の『サン・シーロ』を維持したい“新スタジアム反対派”は当然のごとく控訴する予定だとも伝えられており、裁判所での判決を待たなければならないケースも考えられるという。
現時点でクリアにすべき課題は数多く残されていそうだが、今回の売却案可決により、“新サン・シーロ構想”が一歩進んだことは事実。1926年のスタジアム開場以降、100年弱にわたり“カルチョ”の歴史の一部として君臨してきたスタジアムは、新しい時代を迎えることとなるだろうか。
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