
開票日が迫る自民党総裁選。各陣営の担当記者が候補を深掘りし、選挙戦略を解剖します。きょうは茂木敏充候補です。
■最年長候補 ベテランが目指す「世代交代」
高柳光希キャスター:
10月4日に迫る自民党総裁選。候補者の一人である茂木敏充 前幹事長は、栃木5区で当選11回、初当選は1993年のベテランです。
政府の要職や党4役などを数多く歴任してきました。
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【主な役職】
<政府>
外務大臣
経済産業大臣
経済財政政策担当大臣
経済再生担当大臣
金融・行政改革担当大臣 など
<自民党>
幹事長
政調会長
選挙対策委員長 など
茂木前幹事長が掲げている主張は、▼安定政権の確立、▼新たな地方交付金の創設、▼平均年収を3年で50万円増やすといった大きく分けて3つです。
TBS報道局 政治部 長田ゆり記者:
茂木氏は、ほかの候補よりも「安定政権の確立のために、野党との連立の枠組みを広げることが大事」だということを旗幟鮮明に主張しています。
連立の相手は、「基本政策が一致する野党」としていて、候補者の中では唯一具体名を上げて、「国民民主党や日本維新の会と話をしたい」としています。
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この理由として、茂木氏は今回「2年で結果を出して、若い世代に橋渡しをする」と主張していることがポイントになります。
今回の候補者の中で最年長である茂木氏は、世代交代を図るという意味で自分なりのメッセージにしています。
2年という短期間で結果を出すためには、「何よりも安定政権の確立、連立の拡大が必要だ」ということが茂木氏の主張です。
■「厳しすぎる仕事ぶり」が裏目に?国会議員票が伸び悩むワケ
高柳光希キャスター:
茂木氏の“強みと弱み”を、番記者である長田記者が分析しました。
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【茂木氏の“強みと弱み”】
党内基盤:△
野党連携:◎
経験:◎
世代交代:△
最年長ということで「世代交代」には△、「経験」と「野党連携」には◎がつけられています。
ただ、党の中でも要職を歴任している状況で、「党内基盤」に△、弱みとされているのはなぜでしょうか。
長田記者:
26日にJNNが独自調査した国会議員票(295人)の動向によると、茂木氏は、小泉氏・林氏・高市氏の3人を追う展開となっており、なかなか党内の支持が広がっていません。
【国会議員票(295人)の動向】
※JNN独自調査 9月26日時点
▼小泉氏…約80人
▼林氏…約50人
▼高市氏…約50人
▼小林氏…30人前後
▼茂木氏…30人前後
幹事長時代に、人事やお金、選挙区での応援などで党内の議員に恩を売る機会はたくさんありましたが、今回の総裁選には生かされていないのが現状です。
その理由について、陣営の幹部は、「茂木氏は政治家になる前に外資系のコンサルに勤めていたため、その名残があるのではないか」としています。
例えば仕事に関して茂木氏は、自分にも仲間にも厳しい面があり、結果を出すために正しいことを言ってはいるものの、その厳しさ・やり方に対する反発もあったのではないかということです。
茂木氏をよく知る周辺の人々からも、「負けず嫌いで、納得するまで、勝つまでやる性格なので、こういった性格が永田町の議員の間ではなかなか馴染まなかったのではないか」という分析する声がありました。
■総裁選でも見られた“完璧主義” 子どもたちの前でけん玉に14回挑戦
高柳キャスター:
茂木氏を一言で表すと、どんな人物ですか。
長田記者:
「完璧主義」で、とことん結果を追求する人だと思います。結果を出すためには妥協しません。実際に今回の総裁選の中でも、“完璧主義”な部分がみられました。
候補者討論会の際、ほかの候補者が雑談したり準備したりする様子が見られる中、茂木氏だけは下を向き、最後まで用意した原稿をチェック。青ペンで修正していました。準備万端にするというのが茂木氏のスタイルです。
他の会見でも、自分が伝えたい主張と少しでも英訳が違った場合は、その場ですぐに指摘をしていました。
また、完璧主義な一面は子どもたちの前でも見られました。
茂木氏は、21日に都内の子ども食堂を視察し、子どもたちへ「けん玉」をプレゼントしました。お手本としてけん玉を披露したのですが、なかなかうまくいかず、何度も失敗してしまいます。
私の感覚からすると、数回やったら諦めて子どもたちにけん玉を渡すと思うのですが、茂木氏は、14回目で成功するまでやり続けました。一般の感覚では「そこまでこだわらなくても」と思う人もいるかもしれません。
このような完璧主義な性格が、周りの人からすると、厳しすぎる、息苦しいと思う瞬間があるのかもしれないと思います。
井上貴博キャスター:
完璧主義は諸刃の剣でもあると思うので、周りがついていけないこともあるのでしょう。
また、子ども食堂を巡っては、カレーやケーキのおもてなしを受け、「何をやっているのか」と批判もありました。
茂木氏が掲げる「新たな地方交付金を創設」という政策については、どう見ていますか。
慶應義塾大学 満倉靖恵 教授:
何をやるにしても財源が重要なので、どう考えているのか気になります。
「2年で結果を出す」ということですが、どう結果を出すのか、財源の確保ができているのか知りたいところです。
長田記者:
茂木氏の主張としては「経済あっての財政」という考え方がもとになっています。
そのため、経済成長で税収アップさせて、そこから財源を取ってくる。つまり増税などは考えずに、あくまでも経済成長を目指していく中で、財源を確保していくというのが、茂木氏の考え方です。
満倉靖恵 教授:
経済成長ありきの政策となると、経済成長がなかった時に大変なのではないでしょうか。
個人的には、ある程度の増税は必要になってくるのではないかと思います。
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<プロフィール>
長田ゆり
TBS報道局政治部 自民党の政策を取材
茂木前幹事長の番記者 柔道は黒帯
満倉靖恵さん
慶應義塾大学教授
工学と医学の博士を持つ
脳波から人の気持ちを読み取る「感性アナライザ」開発