10月3日より放送が開始されるTVアニメ『野原ひろし 昼メシの流儀』に注目が集まっている。本作は『クレヨンしんちゃん』の公式スピンオフ。野原しんのすけの父・ひろしが主人公となり、限られたお小遣いと短い昼休みの時間を駆使し、3つの基本流儀――「安く」「素早く」「旨く」を意識しながら店を選ぶ、こだわりの昼飯ストーリーとなっている。
ステーキを食べる話では、大口の契約に成功し自分への褒美にステーキを味わう。肉に夢中でライスが手付かずとなるも、咄嗟の機転でライスも美味しく味わう。ステーキ屋を出たら会議の時間が迫っている――など各話ごとにひろしが昼食を食べるまでの起承転結が1話完結で描かれている。もっとも、大きな物語や伏線はなく、シンプルなお食事漫画。このパターンといえば、『孤独のグルメ』を思い出す人が多いだろうがが、こちらの主人公・井之頭五郎が個人の輸入雑貨商かつ独身でしがらみが少なく、懐具合も余裕があり基本的に自由に食事を楽しんでいるのに対し、野原ひろしは上司と部下に挟まれ、時間にも追われるなど中年サラリーマンの哀愁漂う食事風景が独特の味を醸し出している。
アニメ放送に先駆けて『クレヨンしんちゃん』のタイアップCMも公開中。ひろしが妻・みさえの愛妻弁当とともに健康志向の「やかんの濃麦茶」を楽しむ様子にほっこりさせられる人も多いだろう。
一方で、その無表情やセリフのコマが、ネット上で思わぬ反響を呼んでいる。それが「殺し屋ひろし大喜利」だ。具体的には、食券販売機の前で「注文…伝わってるみたいだな」と呟くコマや、ナポリタンとピラフを眺めるだけのコマ、そそっかしい店長を思い出すセリフなどが、ネット上で「裏切り者のコードネームを読み上げる暗殺者」「過去のターゲットを振り返る殺し屋」のように解釈され、さまざまなシーンを切り取った「ひろし=殺し屋」ネタの投稿合戦となっている。
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この大喜利祭りが成立する理由は主に3つ。まずひろしの無表情で感情が読み取りにくい目が、冷徹な殺し屋を連想させること。次に、セリフを文脈から切り離すと、グルメ漫画とは思えない物騒な意味に聞こえること。そして最後に、Xやインターネット掲示板などで大喜利的に拡散され、読者の創造力で昼食漫画が暗殺者漫画に見える楽しみ方が定着したことだ。
塚原洋一による原作が連載された際には『クレヨンしんちゃん』の作者・臼井儀人と作風が違いすぎることが指摘されたものだったが、こうして原作の意図とは異なる「殺し屋ひろし」がネット上で盛り上がっているのも、国民に愛される『クレヨンしんちゃん』という作品の懐の深さゆえだろう。
アニメ化された際には、サラリーマンと殺し屋の両方を頭に浮かべて見れば、作品を10倍楽しむことができるかも!?
(文=蒼影コウ)
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